スクラムマスターの資格を取った話
エビリーのプロダクト開発本部でエンジニアをしている渡辺と申します。
今回は、私が所属しているkamui trackerチームが採用している
「スクラム」という開発フレームワークについて触れてみます。
2022年7月から、これまでのチーム体制を見直す動きがあり、
私のチームではスクラム開発を取り入れる試みを実施しています。
同チームではスクラム導入の挑戦をこれまでも何度か行ってきたようですが、
色々な事情があって断念した経緯があったようです。
今のチームメンバーの大半はアジャイル開発の経験が
少ないです。
私自身はエビリーに入社する前の2年間、大手自動車メーカー企業のアジャイル開発チームに所属しており、
そこで今回取り組んでいる「スクラム」という開発フレームワークを本格的に経験いたしました。
その経験に加え、さらにスクラム導入の成功を近づけるために
スクラムマスターの資格を取得したので、その話を記事にします。
自己紹介
まず私のスペックについて紹介します。
私はエビリーに中途採用で入社し、ちょうど1年が経ちます。
新卒で数年は広告業界にいましたが、IT業界に転職し、
それから10年くらいはIT業界で働いております。
- 元々は広告系の仕事をしており、企画営業・プランナーなどをしていました。
- 転職後、Webシステムを開発する企業にて、PM・PdMなどの仕事をしていました。
- 30歳になる頃エンジニアとして転職、受託系の開発をメインで行う企業にてエンジニアのキャリアをスタートしました。
- エンジニア4年目にエビリーと出会い、ご縁あってディベロッパーとして勤務しています。
開発メンバーとして業務に携わっていますが、前職でスクラムの開発メンバーとしての
経験があったので、最近ではスクラムマスターとしてチームに関わらせてもらう機会もあります。
「アジャイル」とは
「アジャイル」という開発手法について、簡単に説明いたします。
アジャイル開発とはソフトウェア開発における1つの開発手法です。
旧来行われていたウォーターフォールという開発手法と対比して
下記サイトの「アジャイル開発宣言」に記載されたような新しい価値を基に考えられた開発手法です。
アジャイル開発はウォーターフォール開発に比べて、
仕様変更に強いことがメリットとされています。
変化の早い現代のビジネスに適した開発手法と考えられています。
ここでは詳細説明を割愛しますが、アジャイル開発に関連する記事や本は
たくさんありますので、興味がある方はご自身でご確認ください。
「スクラム」とは
「スクラム」は上記で記載したアジャイル開発を基にプロジェクト管理するフレームワークです。
特徴としてはメンバー間の役割分担と、1つの開発サイクル内で実施する「スクラムイベント」と
呼ばれる会議が設けられていることです。
メンバーの役割を「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「開発メンバー」に分け、
「スプリント」と呼ばれる開発サイクル内で成果物を実装していきます。
スクラムは、アジャイル同様に「スクラムガイド」と呼ばれるドキュメントに
詳細がまとめられています。
スクラムマスターの資格
スクラムマスターの資格はどれも民間資格となります。
スクラムマスター関連の資格で主要なものは下記の3つです。
- Certified Scrum Master / CSM
- Professional Scrum Master / PSM
- Registerd Scrum Master / RSM
CSM
Certified Scrum MasterはScrum Allianceが認定する
スクラムマスター資格で、知名度が高いです。
資格を取るには研修が必須となっており、試験に合格しないといけません。
費用は約30万円程度かかるとなっていて、個人で取得するにはかなりハードルが
高い資格と言えるでしょう。
資格は更新性となっていて、2年毎に更新となります。
PSM
Professional Scrum MasterはScrum.orgが認定する
スクラムマスター資格です。
資格取得のための研修は任意となっていて、試験の合格のみで取得が可能です。
費用も$150~$500なので、CSMなどと比べると比較的安いです。
研修が必須ではない分、試験自体の難易度が高めと言われていて、スクラム経験がない方は
勉強、試験対策をして望まないと取得が難しいです。
レベルがI~Ⅲの3段階あり、Ⅱからが実践向けのようです。
資格は更新性ではありません。
RSM
Registered Scrum MasterはScrum.Incが認定する
スクラムマスター資格です。
CSMと同じく研修が必須となっており、試験に合格する必要があります。
費用は約20万円程度となっていて、CSMに比べると安いです。
資格は更新性となっていて、1年毎に更新となります。
以前はLicensed Scrum Master(LSM)と呼ばれていたようですが、
名称が変わったようです。
Licensed Scrum Master (LSM)→ Registered Scrum Master(RSM)
私は上記の資格の中でPSMⅡというものを取得しました。
理由としては下記のようなものとなります。
- すぐに資格が取得できる。
- 受験費用が安い。(会社の都合上、受験費用は自分で持つ必要があるため)
- 研修受講が必須でない。
PSMの試験は英語のみでの配信となっていますが、
ブラウザやアプリなどの翻訳機能を使うことが認められているため、
それほど苦労せずに対策を立てることができました。
しかし、翻訳機能の精度によって、意味が伝わりにくいケースがありますので、
公式サイトに設けられているお試し試験は受けておくべきかと思います。
こういったことを考慮し、勉強・試験対策を行った結果、2週間〜1ヶ月程度の
勉強期間で見事合格できました。
ただ、私自身、2年間ほどのスクラム経験がベースにあったので、効率良く学べたんだと
考えています。
あくまで参考程度に捉えてください。
何故資格を取得したか
資格を取得した理由は2つあります。
kamui trackerチームのスクラム導入をより確実に成功させたい
冒頭でも書きましたが、今のチームメンバーの中でアジャイル開発の経験が豊富なメンバーは
ほとんどいません。
私自身、ウォーターフォール、アジャイルなど様々な開発手法を経験してきました。
それぞれの開発手法における価値観が異なるため、アジャイルの価値観をチーム、組織に
浸透させていくにはそれなりの覚悟が必要かと思っています。
私は、前職で2年ほどスクラムを経験しましたが、それまでは所謂「なんちゃってアジャイル」
みたいなものしか経験がありませんでした。
当時、アジャイル開発はただ単に細かくフェーズを分けて徐々に開発していく方法くらいにしか考えていませんでした。
おそらく今のメンバーの中にも当時の私と同じような考えの方がいると思います。
かくいう私も、2年の実践で漸くアジャイル開発していく感覚を掴めた気持ちでいましたが、
まだまだ理想的な形で実践するには経験や理解が足りておりません。
今のチームでその理想に近づくため、アジャイル開発の知識をより一層深めるべきと感じています。
私自身がアジャイル開発を好き
「自己紹介」の欄で経歴を書かせてもらいましたが、元々はビジネス・サービス側として
働いていた経歴もあり、プロダクトやサービスの価値だったり、顧客満足を考えたり
することが好きです。
アジャイル開発ではこの「価値」を軸にして、開発を進めていきます。
小さい機能だとしても、すぐにリリース・市場に投入し、フィードバックを得て、
検証・改善を細かく繰り返していくというプロセスを行います。
自分が実装した機能はどのように顧客に受け入れられるのか、
役に立っているのか、他に改善できそうなところはないか、等を
考えながら開発をしているとき、私はとても楽しく感じます。
そのような仕事の仕方で進めていける開発手法がアジャイル開発だと思っています。
スクラムマスターの資格をとって良かったこと
スクラムマスターの資格をとって良かったと思う点は
下記の3点です。
-
スクラム全体の理解
スクラムマスターという役割を通して、スクラム全体の
価値観や行動原理の理解が深まった気がします。
スクラムマスターはスクラムチームがしっかりとスクラムを
運営できるように働きかけます。
スクラムに慣れていないメンバーにコーチングすることも
仕事の1つです。
逆に言うと、スクラムについて人に教えることが出来ないくらいの
知識ではスクラムマスターの資格取得が難しいでしょう。 -
実務に活かせるイメージ
「スクラムガイド」やスクラムに関する本には、抽象的な表現や
思想についての話をしているものが多いです。
私が取得したProfessinal Scrum Master Ⅱという資格は
実務向けレベルの問題が多く出題されておりました。
具体的なシチュエーションが設問として扱われていたので、
問題を通して実務での振る舞いをイメージすることが出来ました。
自分の中でうまく理解できていなかったスクラムマスターの振る舞いが
よりクリアになった点は良かったです。 -
スクラムマスターとしての客観的な証明
スクラムマスターは資格がなくてもできる仕事です。
とはいえ、スクラムの成功を担う重要な役割です。
スクラムの成功にはチームや組織のスクラムに対する理解が不可欠でしょう。
チームや組織に対して、スクラムの理解を深めていくのもスクラムマスターの役目です。
資格があることで説得力がますため、より強いリーダーシップを発揮できると思います。
スクラムマスターとして動く難しさ
スクラムマスターの資格を取得して、改めてスクラムマスターという仕事の意義を
理解しましたが、実践するのはとても難しいと思いました。
-
「スクラムマスター」への理解
そもそも「スクラムマスター」って何をする仕事?って方が大半なので、
理解を求めるが大変です。
スクラムマスターの使命としては、チームのスクラム運営がスムーズに
行くようにすることなので、視点の向き先がチーム自体です。
プロジェクト自体には過干渉になってはいけないし、
無関心であってもいけない、というバランスが必要な役割だと感じました。 -
ある程度権限が必要
スクラムで開発するには開発チームだけでなく、組織からの理解が必要になる
場面があります。
スクラムチーム外からチーム運営を阻害する動きがあった場合、間に入って
調整する必要があったり、また逆に協力を仰ぐ必要があります。
企業という組織で動く以上、部署を跨いで動くにはそれなりの職位だったり、
組織の理解、権限などが必要だなと感じる場面がありました。
スクラムマスターの勉強をする中で、スクラムマスターがただの「便利屋さん」に
なってしまうという良くないパターンのエピソードを見ることがありました。
仕事への理解だったり、必要な権限だったり、を正しく得られるように
働きかけていくことが必要です。
終わりに
今回は私がスクラムマスターという仕事に興味を持ち、
資格まで取ったというエピソードをブログにしました。
テクニック的なことは特に取り上げませんでしたが、
この記事を通してkamui trackerチームの雰囲気や
取り組みを少しでも理解いただけると嬉しいです。
今後、チームがどのように変革していくのか、
その過程なども発信できればと思っています。
弊社に興味があったり、プロダクト開発チームのことをもっと知りたい
という方がいましたらお気軽にご連絡ください!
Discussion
資格取得おめでとうございます!
スクラムマスターの資格に興味があります。PSMの試験対策はどのようにされましたか?
ブログを読んでいただきありがとうございます!
PSM ii の試験対策、準備として下記のようなことを行いました!
基本的には模擬試験問題を多く問いて問題の傾向や、回答の解説から知識を得ていきました。
PSMはオンラインかつ英語表記での試験形式ですので、その対策もしていました。
Google翻訳など、ブラウザの翻訳機能を使うことは認められているため、
公式サイトで公開されている模擬試験を使い、翻訳機能の精度を試してみました。
体感としてはGoogleもDeepLも試験問題に対しての翻訳精度はあまり変わらないように
感じましたが、どちらかの機能に慣れておくのが良いかと思います。
(もちろん、英語でも問題ないということでしたら必要ないです。。)
PSM ii 試験の傾向としては、具体的なシチュエーションやスクラムの価値観について
問われる設問が多かった気がします。
私は模擬試験の問題の解答率が安定的に90%を超えるようになってから受験して、
実際の試験でも正答率90%くらいでした。
準備期間は大体2週間〜3週間くらいという感じでした。
プログラミングをするパンダさんもスクラムをチームで経験されているという
ことでしたら、同じくそれくらいの準備期間で問題ないかと思います。
少し長文になりましたが、参考になりましたでしょうか?
もし資格取得を目指されるのであれば頑張ってくださいね!
現在チームでスクラムを実践しているので、準備期間の目安がとてもわかりやすかったです。
資格受験の具体的なイメージができました。詳細にご回答いただきありがとうございます!