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エンジニアのためのAI数学、ベクトル空間について。

2023/05/31に公開

ベクトル空間とは何でしょうか。これは、初心者がもっとも躓く部分であり(私も多くの人と同じく躓きました)、線形代数のもっとも根本的な部分でもあります。
 
これから、そのベクトル空間の初歩的な解説をしていきたいと思います。
 
ベクトル空間とは、いくつかの性質を持った集合のことであり、ベクトルとはその集合の要素です。ここで、ベクトルの定義とはベクトル空間の要素であることであり、そのことが(そのことだけが)重要であると考えられています。
 
実際、ベクトルとは様々な形をとり、皆さんがご存である、高校で習った2次元ベクトル(平面内の矢印)、3次元ベクトル(空間内の矢印)の形をはじめ、それらを一般化したもの、つまりただ数を横または縦に並べた(高校では横)n次元数ベクトルはベクトルです。また、これら以外にも、ベクトルとは数列であったり、関数であったりします!しかし、このような多様な姿に惑わされないでください。ここで重要なのは、ベクトルとは、ベクトル空間の要素(後に述べるいくつかの性質を満たす集合の要素)であることです。

ベクトル空間の定義
ある集合Vが次の条件を満たすとする。

1 集合Vの中の任意の(すべての)要素abに対して(高校ではベクトルは矢印を用いて表されましたが、大学では太字で表されます)で表されます、a+bを考えることができ、また、それがVの要素になる(後述)。

2 集合Vの中の任意の要素aとスカラー(実数や複素数のような数)cに対して、caを考えることができ、また、それがVの要素になる(後述)。

3 これらの2つのもの(a+b、ca)が次の(3-1)から(3-8)を満たす。
(3-1) 集合Vの中の任意の要素、a,b,dに対して、(a+b)+d=a+(b+d)が成り立つ(+という演算に関して結合法則が成り立つ、また、演算+を上で定義していたことに注意、つまり、数列や関数など普通の数とは違ったものに対して+という演算を定義した)。
(3-2) 集合Vの中の任意のaに対して、a+0=0+aとなる。
(3-3) 集合Vの中の任意のaに対して、a+b=b+a=0となるbが存在する(つまり、+という演算に対する逆元のようなものが存在する)。
(3-4) 集合Vの中の任意のa,bに対して、a+b=b+aが成り立つ(交換法則)。
(3-5) 集合Vの中の任意のaとスカラーc、eに対して、c(ea)=(ce)aが成り立つ(スカラー倍に関しての結合法則が成り立つこと、ベクトルに関しては成り立つわけではない)。
(3-6) 集合Vの中の任意のaとスカラーc,eに対して、(c+e)a=ca+eaが成り立つ(スカラー倍に関する分配法則)。
(3-7) 集合Vの中の任意のa,bとスカラーcに対して、c(a+b)=ca+cbが成り立つ(ベクトルに関する分配法則)。
(3-8) 集合Vの中の任意のaに対して、1a=aが成り立つ。
ある集合Vが上記の条件1~3を満たすとき、その集合Vをベクトル空間という。
このような、性質を考えることは初期段階ではあまり納得できませんが、受け入れてください。また、次の記事では、これらの性質を具体例を通してみていきたいと思います。

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