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Tidy First 第7章 変数宣言と初期化を一緒の場所に移動する

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リーダブルコードがジュニアエンジニア向けならば、Tidy Firstはミドルエンジニア以上向けであると思う。
この記事はそのTidy Firstの第7章の内容をわかりやすい文章で私なりにまとめました

変数宣言と初期化のベストプラクティス - 読みやすいコードへの第一歩

プログラミングにおいて、コードの可読性は非常に重要な要素です。今回は、変数の宣言と初期化に関する小さな工夫で、コードを劇的に読みやすくする方法について解説します。

なぜ変数の宣言と初期化が重要なのか

変数名は、その変数がコード内でどのような役割を持つかを示すヒントです。しかし、宣言と初期化が離れていると、読み手はその変数の目的やコンテキストを見失ってしまいます。

問題のあるコード例

function processData() {
    let userCount;
    let averageScore;
    
    // 何十行もの別の処理...
    
    userCount = users.length;
    
    // さらに別の処理...
    
    averageScore = calculateAverage(scores);
    
    // averageScoreを使用する処理
    return averageScore * userCount;
}

このコードの問題点:

  • userCountaverageScoreの宣言が、実際に使用される場所から遠い
  • 初期化にたどり着く頃には、変数の目的を忘れてしまう可能性がある
  • コードの意図が不明確

改善策:宣言と初期化を一緒に

改善されたコード例

function processData() {
    // 何十行もの別の処理...
    
    let userCount = users.length;
    
    // さらに別の処理...
    
    let averageScore = calculateAverage(scores);
    
    // 使用箇所が近いため、変数の目的が明確
    return averageScore * userCount;
}

実践のポイント

1. 使用直前での宣言・初期化

変数は、実際に使用する直前で宣言・初期化することで、その変数の目的とスコープが明確になります。

# 良い例
def calculate_total_price():
    # 基本価格の計算
    base_price = get_base_price()
    
    # 税金の計算(base_priceを使用する直前で宣言)
    tax_rate = get_current_tax_rate()
    tax_amount = base_price * tax_rate
    
    # 最終価格の計算
    total_price = base_price + tax_amount
    return total_price

2. データ依存関係の考慮

変数間にデータの依存関係がある場合は、その順序を維持する必要があります。

// データ依存関係を考慮した例
public void processOrder() {
    // step1: 基礎データの取得
    String userId = getCurrentUserId();
    
    // step2: userIdに依存するデータ
    User user = getUserById(userId);
    
    // step3: userに依存するデータ
    List<Item> cartItems = getCartItems(user);
    
    // step4: cartItemsを使用した処理
    double totalAmount = calculateTotal(cartItems);
}

段階的な改善アプローチ

大きな変更は危険を伴います。以下のような小さなステップで改善していきましょう:

ステップ1: 現状の把握

まず、問題のあるコードパターンを特定します。この例では、変数の宣言がまとめて関数の先頭で行われ、実際の初期化と使用が離れた場所で行われています。

// 現在のコード(問題あり)
function oldFunction() {
    let a, b, c;  // ← 宣言のみ。何に使うかが不明
    // 長い処理...
    a = getValue1();  // ← ここで初めて値が設定される
    // さらに長い処理...
    b = getValue2(a);  // ← aに依存してbを初期化
    c = getValue3(b);  // ← bに依存してcを初期化
    return c;
}

問題点:

  • 変数a, b, cの目的が最初は不明
  • 宣言から初期化まで距離があり、読み手が変数の存在を忘れやすい
  • データフローが追いにくい

ステップ2: 宣言と初期化を統合

各変数の宣言を、初期化が行われる場所に移動します。この段階では、まだ配置の最適化は行いません。

// 改善中のコード
function improvedFunction() {
    // 長い処理...
    const a = getValue1();  // ← 宣言と初期化を同時に実行
    // さらに長い処理...
    const b = getValue2(a);  // ← aを使用する場所の近くでbを宣言・初期化
    const c = getValue3(b);  // ← bを使用する場所の近くでcを宣言・初期化
    return c;
}

改善点:

  • 宣言と初期化が統合され、変数の目的が明確になった
  • constを使用することで、変数の不変性を保証
  • データの依存関係(a → b → c)が見えやすくなった

ステップ3: 最適な配置に調整

最後に、可読性をさらに向上させるため、関連する処理をグループ化し、適切な空白行を追加します。

// 最終的なコード
function finalFunction() {
    // 長い処理...
    const a = getValue1();
    
    // さらに長い処理...
    const b = getValue2(a);  // aに依存する処理をグループ化
    const c = getValue3(b);  // bに依存する処理を直後に配置
    
    return c;
}

最終的な改善点:

  • 関連する変数宣言を論理的にグループ化
  • 空白行によって処理の段階を明確に区分
  • データフローが一目で理解できる構造

改善の効果比較

項目 改善前 改善後
変数の目的 宣言時は不明 宣言時に明確
データフロー 追いにくい 一目で理解可能
保守性 変更時にリスクあり 安全に変更可能
新人の理解度 時間がかかる 素早く理解可能

メリットと効果

この手法を適用することで、以下のメリットが得られます:

可読性の向上

  • 変数の目的が明確になる
  • コードの意図が理解しやすくなる

保守性の向上

  • バグの発見が容易になる
  • 修正時の影響範囲が明確になる

開発効率の向上

  • コードレビューが効率的になる
  • 新しいメンバーの理解が早くなる

まとめ

変数の宣言と初期化を適切に配置することは、コードの品質を大幅に改善する簡単で効果的な手法です。小さな変更から始めて、段階的にコードベース全体の可読性を向上させていきましょう。

推理小説家のように、コードの読み手の体験を想像し、理解に必要な手がかりを適切な場所に配置することが、優れたプログラマーの条件の一つです。

今日から実践して、より読みやすく保守しやすいコードを書いていきましょう。

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