ADKで作るAIクリエイティブアシスタント:多様な視点でアイデアを磨くマルチエージェントシステム
はじめに
本記事は、第3回 AI Agent Hackathon with Google Cloudの応募作品について紹介します。AIエージェントを活用して広告クリエイティブのアイデア出しから評価までを効率化する仕組みを目指しました。
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プロジェクトの概要
想定ユーザー
広告代理店のクリエイティブディレクターや、事業会社のマーケティング担当者など、クリエイティブの品質担保と意思決定に責任を持つ方々をターゲットにしています。
直面する課題
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アイデアの枯渇と偏り
クリエイティブ制作において、新しいアイデアを考えるのは簡単ではなく、つい自分の経験や好みに寄ってしまいます。 -
多角的な視点の欠如
デザイン、ビジネス、社会的受容性といった多様な観点からのフィードバックを、迅速かつ網羅的に得ることが困難です。 -
評価の属人化とバイアス
クリエイティブの評価が特定の個人の主観に依存し、意図しないバイアスがかかることで、ターゲット層に響かない、あるいは炎上リスクを抱える可能性があります。
解決の方向性
これらの課題を解決するために、GoogleのAgent Development Kit (ADK) と Vertex AI Gemini モデルを活用した、以下の仕組みを構築しました。
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AIによるアイデア生成
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クリエイティブディレクターエージェントが、ユーザーの簡単な指示から広告コンセプトやキャッチコピーを迅速に生成し、アイデアの壁打ち相手となります。
例: 「20代向けエナジードリンクのコピーを考えてほしい」と入力すると、複数の案が出力されます。
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多様なAIペルソナによる多角的評価:
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若手デザイナー中堅ビジネスマンシニア市民活動家という3つの異なる視点を持つAIエージェントが、クリエイティブを並行して瞬時に評価します。
→ 短時間で多角的な意見が得られ、人力では時間がかかるレビュー作業を自動化できます。
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バイアスを考慮した統合レポート:
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統括マネージャーエージェントが、各ペルソナからの多様な意見を統合・分析。それぞれの視点を尊重しつつ、潜在的なリスクや改善点を整理します。
→ 具体的な推奨アクションを含むレポートとして出力されます。
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システムアーキテクチャ図
このエージェントシステムは、ユーザーの指示を解釈して適切なエージェントに処理を振り分ける「クリエイティブアシスタント」を起点として、以下のコンポーネントが連携して動作します。
開発体験と工夫
今回の開発では Google Cloud の Agent Development Kit (ADK) を活用しました。
ADKのおかげで、複数のエージェントを直感的に追加でき、ペルソナの切り替えや評価パイプラインの構築もスムーズに実現できました。
特に工夫した点は以下の通りです。
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エージェントの役割設計
まず「クリエイティブディレクター」「ペルソナ評価者」「統括マネージャー」という役割を明確に定義し、それぞれが独立して動けるように設計しました。 -
並列評価の仕組み
ペルソナごとの評価は並行で実行し、処理時間を短縮。実際のレビュー会議のような「同時に複数の意見が飛び交う」体験を再現しました。 -
統合レポートの見やすさ
最後に統括マネージャーがまとめる際、単なる意見の寄せ集めではなく総合的な結論と推奨事項などユーザーのアクションにつながる提案を行います。
こうした工夫により、アイデア出しから多角的評価、レポート化までを一気通貫で実行できるシステムを短期間で仕上げることができました。
終わりに
今回のプロジェクトでは、AIエージェントを組み合わせて「アイデア出し」「多視点レビュー」「統合評価」をまとめて実現する仕組みを構築しました。
実際に動かしてみると、短時間で多様な意見が返ってきて、複数人でブレストしているような感覚になります。新しい発想が出てきたり、見落としがちなリスクに気づけたりするのは、このシステムならではです。
今後は、さらにペルソナの種類を増やしたり、業界特化のアレンジを加えたりしながら、より実用的なツールに育てていきたいと考えています。
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