なぜ今松尾研発SU エムニが『AI駆動経営』に取り組むのか
株式会社エムニで代表を務めている下野と申します。エムニは松尾研発スタートアップとして、大手製造業を中心にAI技術の社会実装に取り組んでいます。
エムニはまだ設立2期目にも満たないスタートアップですが、業務委託・学生インターンを中心にメンバーが100名を超えました。この成長フェーズにおいて、「AI駆動経営」というスローガンを新たに掲げ、エムニ自身の業務フローをAIネイティブに再設計していくこととなりました。本稿では、その背景と実践について詳しくご紹介します。
AI駆動経営とは何か
AI駆動経営のゴール
AI駆動経営の最終的なゴールは、エムニのVisionである「AIと共同で新たな価値を創造できる環境を実現する」を達成することです。これは単なる効率化を超えて、人間とAIが真に協働し、これまでにない価値を生み出せる組織づくりを目指しています。
なぜAI駆動経営を導入するのか
AI駆動経営を導入する理由は、以下の4つの観点から説明できます。
1. プロフェッショナルとしての責任:
お客様にAI導入をプロフェッショナルとしてサポートしていくためには、まずは我々の業務自体がAI-nativeであることが必要条件だと考えています。自社でAIを徹底的に活用し、その効果を実証することで、お客様に対してより説得力のある提案と実践的な支援が可能になります。
2. 独自ノウハウの蓄積:
最新のAI技術について、やはりただ知っている状態ではなく、きっちり使ってエムニ内でベストプラクティスを貯めていくことが、独自のノウハウとして強みにもなり、圧倒的なスピード「爆速」の実現にも寄与すると考えています。
3. 継続的な価値創造:
AI技術の進歩は日進月歩であり、理論的な知識だけでは実際の現場での課題解決には限界があります。自社で実践を重ねることで初めて見えてくる課題や改善点があり、それらの経験こそがお客様への価値提供の源泉となります。
4. 組織成長に伴う変革の必要性:
これまでは業務フローの最適化については各自が個々に行えてきたところもあるのですが、現在メンバーが100名を超え、業務の細分化・多量化が進んできたフェーズで、横断的な最適化を行うことに大きな利得があると考えています。加えて、「AI駆動経営」というワーディングによって、組織内外の意識を統一させ、より強固なチームを作っていこうという狙いがあります。
AI駆動で何を行うのか
エムニのあらゆる経営活動をAIネイティブなフローに置き換えていくのがAI駆動経営です。
理想状態としては、業務において他の人に代替できる業務全てが対象となります。いくつか具体例を挙げてみます。
営業活動の変革
- 顧客提案の高度化
お客様に適切な提案をするためのサーベイ業務では、AIを活用して市場トレンド、競合情報、顧客の業界特有の課題などを効率的に分析し、パーソナライズされた提案資料を迅速に作成します。 - ミーティングの効率化
議事録作成を自動化することで、ミーティングへの集中力向上・顧客理解を深めることが可能になります。営業担当者は記録に気を取られることなく、顧客との対話に集中でき、より深いニーズの把握や関係構築に時間を割くことができるようになります。
開発業務の効率化
- プロトタイプの爆速開発
AIを活用したコード生成やテスト自動化により、アイデアからプロトタイプまでの開発サイクルを劇的に短縮し、迅速な検証と改善を可能にします。 - ドキュメント管理の自動化
ドキュメント類の充実、及び人の手だけでは難しい密な更新作業をAI支援で実現しています。開発プロセスで生成されるコードや設計情報から、AIが自動的にドキュメントを生成・更新することで、常に最新かつ高品質なドキュメントを維持します。
全般業務の最適化
メール作成やスケジュール調整、データ分析など、日常的に発生する様々な業務についても段階的にAI化を進めています。これらは個別に見ると小さな改善かもしれませんが、積み重ねることで大きな効率向上につながっています。
どのようにAI駆動経営を進めるのか
対象とする業務はすべてなので、あらゆる方向性からのアプローチが考えられます。エムニは開発会社なので、自社用のアプリを内製することもあれば、他社の製品を導入する場合もあります。あえて生成AIを使わずに、古典的な手法を取り入れることもありますし、そもそもオペレーションの工夫というようなアプローチをとることもあります。
これらのアイデアは、基本的に現場からボトムアップで提案を募っています。実際に、メンバー全員が投稿できるNotionのDBにアイデアを投稿していってもらっており、そこから先程挙げたような「議事録の自動作成」といった仕組み作りに現在取り組んでいます。
具体的な実践事例
社内チャットボットの開発
現在、GitHubのレポジトリ数は200、Slackのチャンネル数は300を超えています。さらにGoogle DriveやNotionなどを含む複数のサービスにまたがってデータが保管されることもあり、情報検索の効率化のために社内チャットボットを作成しています。
システムアーキテクチャの特徴
- Slack認証(SSO)
社内のメンバーがスムーズかつ安全に利用できるよう実装 - MCP(Model Context Protocol)によるデータ連携
各ソースを疎結合に統合し、柔軟なデータ活用を実現 - Azure AI Agent Serviceを用いたAgentic RAG
コンテキストのより詳細な解釈を実現し、データ追加時の再インデックスの手間を削減
AI駆動開発プロセス
実装の大部分をAI Agentによる対話型コーディングで行っています。予め、仕様を丁寧に定義することで、Slackとの認証連携までAI Agentによって実装しています。こうした、AI駆動開発のコツについても、比較的自由に取り組むことができる社内プロジェクトを通じて知見をためています。
AI駆動経営を推進するための工夫
AI駆動ワーキング制度
AI駆動経営をさらに推進するために、『AI駆動ワーキング制度』を導入しています。
エンジニアだけでなくビジネス職も含め、ChatGPTやClaude Code、Cursor、Gensparkといった業務に必要なAIツールの費用を全額会社負担で利用できるというものです。
この制度により、各人が自分の業務に最適なAIツールを選び、活用し、知見を共有することで、組織全体の学習速度を上げていきます。
詳しくはぜひ以下のプレスリリースをご覧ください。
AI駆動経営による影響と期待される効果
内部の影響:本質的な業務への集中
どの業種にも限らず、広く自分の業務にAIを活用できる仕組み・環境を整えることで、人間にしかできないクリエイティブな業務に集中できる環境を作りたいと考えています。ルーティンワークや定型的な作業をAIに任せることで、従業員はより戦略的思考や創造的な問題解決、顧客との深い関係構築など、人間の強みを活かせる領域に時間とエネルギーを集中できるようになります。
これは単なる効率化を超えて、働く人々の満足度や成長機会の向上にもつながると考えています。AIとの協働により、従業員一人ひとりがより高次の価値創造に関わることができ、結果として個人のスキルアップや組織全体の競争力向上に寄与します。
外部への影響:バリューアップの実現
AI活用のベストプラクティスを共有することもそうですし、何よりAI駆動でPDCAを高速化することでトライアンドエラーの回数を増やして提供価値の最大化に寄与できると考えています。
従来であれば時間のかかっていた分析作業や企画立案、プロトタイプ開発などをAI支援で高速化することで、より多くの仮説検証を短期間で実行できます。
これにより、お客様のニーズにより適合したソリューションを迅速に提供できるようになり、結果として満足度の向上と事業成果の最大化を実現できると考えています。
終わりに
本稿では、エムニが取り組むAI駆動経営について説明しました。引き続き実際の事例についても発信していく予定ですので、フォローいただけると幸いです。
エムニでは共に「AIで働く環境を幸せに、世界にワクワクを」というMissionを実現する仲間を募集しています。
AIと共に価値を発揮できる未来に向けて、新しい業務フローを作っていくことに興味がある方はぜひエントリーをお待ちしています。
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