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Gemini CLIとGoogle Antigravityの使い分け!

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はじめに

2025年は、開発者にとってAIツールの転換点となる年でした。

6月に登場した「Gemini CLI」がターミナルでのAI活用を民主化した一方で、11月に発表された「Google Antigravity」は、開発環境そのものを「エージェント・ファースト[1]」へと再定義しようとしています。

ただ、実際には「結局、どっちを使えばいいの?」 「Gemini CLIがあれば、Antigravityはいらない?」など悩むこともあるかと思います。

本記事では、これら2つのツールの違いと、それぞれの強みが活きる使い方について解説します。

概要と役割の違い比較表

特徴 Gemini CLI Google Antigravity
ツールの本質 コマンドラインツール (CLI) AIファースト IDE (統合開発環境)
主な役割 ターミナル操作の補助、スクリプト作成、単発の質問 エージェントによる自律的なコーディング、プロジェクト全体の構築・管理
環境 既存のターミナル (Bash,Zsh, PowerShell等) 独立したアプリケーション(VS CodeベースのUI)
AIの動き Copilot (副操縦士) 的な動き。ユーザーの指示でコマンドやコードを出す。 Agent (自律した作業者) 的な動き。タスクを渡すと、計画・コーディング・検証を自律的に行う。
手軽さ 軽量。npm 等ですぐ入る。 重量級。専用アプリのインストールが必要。

具体的な使い分けシーン

Gemini CLI

Gemini CLIは、Unix哲学[2](小さく作って連携させる)を体現したツールです。
その真価は、IDEもブラウザも開けない制約のある環境で発揮されます。

① リモートサーバーでの作業 (SSH接続)

クラウド上のLinuxサーバーや、踏み台サーバー(Bastion)経由で作業する場合、GUIやVS CodeのRemote接続が許可されていないことがあります。

状況

  • 手元にはターミナルしかない。
  • サーバー内のログファイル(access.log 等)を調査したいが、ローカルにダウンロードするのは禁止されている。

Gemini CLIの活用

  • ログをパイプで流し込み、その場で解析させる。

コマンド例

tail -n 100 error.log | gemini "このエラーの根本原因と、解決策を箇条書きで教えて"

② CI/CDパイプラインの中 (Headless環境)

GitHub ActionsやCircleCIなど、自動化されたスクリプトが動く環境には、ディスプレイもマウスも存在しません。

状況

  • 自動ビルドが失敗した際、ただ「Failure」と通知されるだけでは不親切。

  • 自動でリリースノートを生成したい。

Gemini CLIの活用

  • ビルドのエラーログを読み込ませ、要約をSlack通知用スクリプトに渡す。

  • Gitのログから変更点を抽出し、リリースノートのテキストを生成してファイルに書き出す。

コマンド例

git log --oneline | gemini "これまでの変更点をユーザー向けのリリースノートとしてまとめて"

③ 緊急時のトラブルシューティング (障害対応)

システム障害でGUI環境が立ち上がらない、あるいは動作が重すぎてIDEが開けない場合です。

状況

  • サーバーが過負荷で応答が遅い。メモリを食うIDEなど論外。
  • 焦っていて、複雑なコマンド(tarやfindのオプションなど)が思い出せない。

Gemini CLIの活用

  • 軽量なバイナリ一つで動くため、極限状態でも動作する。
  • やりたいことを自然言語で伝え、コマンドを生成させる。

コマンド例

gemini "現在メモリを最も消費しているプロセスTOP5を表示し、それをkillするコマンドを教えて"

④ 設定ファイルの編集 (Vim/Nano)

サーバー上の設定ファイル(nginx.conf, k8s manifest, systemd unit file)を直接編集する場面です。

状況

  • シンタックスハイライトはあるが、Lint(構文チェック)や自動補完機能がない。
  • 設定の書き方が合っているか不安だが、ブラウザで検索するのも手間(またはネット閲覧制限がある)。

Gemini CLIの活用

  • 設定ファイルの内容を標準入力で渡し、間違いがないかレビューさせる。

コマンド例

cat /etc/nginx/nginx.conf | gemini "この設定ファイルに構文ミスやセキュリティリスクがないかチェックして"

⑤ 低スペックなエッジデバイス (IoT)

Raspberry Piの古いモデルや、組み込み機器など、リソースが限られた環境です。

状況

  • メモリが512MBしかなく、モダンなエディタは動かない。
  • Pythonスクリプトをその場で少し修正したい。

Gemini CLIの活用
AIの推論はクラウド側で行われるため、デバイス側の負荷はほぼゼロで高度なコーディング支援を受けられる。

Google Antigravity

Google Antigravityは、「人間が『何を(What)』作りたいかだけを考え、AIが『どう(How)』作るかをすべて肩代わりする」 場面で発揮されます。

単なるコード補完ではなく、「複数のファイルを横断して、自分で考えて動く」 場面で威力を発揮します。

① エラーログ解析からの自律修正とGitプッシュ

CLIが「直し方を教える」だけなのに対し、Antigravityは「直して、テストして、プッシュする」まで完結させます。

User (Agent Managerへの指示): 「ビルドエラーが出ているから直して。テストが通ったらfeatureブランチにプッシュしておいて」

Antigravity Agent:

  1. ターミナルのエラーログを読み込み、原因(例:型定義の不整合)を特定。
  2. 対象ファイルを自動編集して修正。
  3. 再度ビルドコマンドを実行し、成功を確認(失敗したら再修正)。
  4. 変更内容を理解した上でコミットメッセージを作成し、git push を実行。
  5. 「修正してプッシュしました」と人間に報告。

② CI/CDパイプラインの自律構築とデバッグ

Antigravityは「パイプラインが成功するまで」追跡します。

User:「このプロジェクトをCloud RunにデプロイするGitHub Actionsを組んで。実際に実行して、成功するまで面倒見ておいて」

Antigravity Agent:

  1. .github/workflows を作成しPush。

  2. ブラウザを起動してGitHubを開き、ビルド進行を監視。

  3. エラーが出たらログを読み、IAM権限などを修正して再Push。「緑色(成功)」になるまで試行錯誤します。

③ フレームワークの移行・大規模リファクタリング (E2E)[3]

CLIが「変換を助ける」のに対し、Antigravityは「移行して動作確認まで行う」ことができます。

User:「Next.jsをv14からv15へアップグレードして。破壊的変更箇所を修正し、全ページで表示崩れがないかブラウザで確認して」

Antigravity Agent:

  1. 依存パッケージを更新しインストール。
  2. エラー箇所を特定し、コードを修正。
  3. ブラウザを自律起動し、各ページを巡回してレンダリング結果を目視確認。
  4. 修正ログと検証レポートを提出。

まとめ

最終的に、Gemini CLIとGoogle Antigravityのどちらを選ぶべきかは、あなたの「職種」と「作業環境」によって分かれます。

  • サーバーの中やターミナルが主な作業場なら、Gemini CLI。
  • IDEを開き、プロダクト全体を作り上げるなら、Google Antigravity。

この2つを場所と目的に応じて使い分けて開発効率の向上に役立てていきましょう!

引用

脚注
  1. ソフトウェアやビジネスの設計において、「自律的に行動するAIエージェント」が利用・活躍することを最優先に考えるという新しい戦略・思想のこと ↩︎

  2. Unixの開発者たちによって確立された、ソフトウェア開発における一連の文化的な規範やアプローチのこと ↩︎

  3. 「End to End(エンド・ツー・エンド)」の略語
    ITの現場では「最初から最後まで、全体を通して」というニュアンスで使わる ↩︎

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