プロダクトはリサーチから始まる(ソフトウェアエンジニア向け)
最初に
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想定対象読者
- ソフトウェアエンジニア全般
- プロダクト開発がよくわからない人
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読むのに必要な時間
- 約5分
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この記事を書くに至ったキッカケ
- プロカン関西#5にて「本当に良い体験とは何か?」という議論から、持論をまとめておきたいと思ったため
- プロダクト開発するソフトウェアエンジニアはもっと顧客と対話すべきと感じるため
プロダクト開発は宝くじなのか?
- 「やってみなければわからない」
- 「宝くじは買わないと当たらない」
うまくいくかどうかわからないときに、こういう言葉がどこからともなく出てくることってありますよね。
ちょっとしたプロダクトのアイディアがあって、作るかどうかを悩んでいるときとか。
「じゃあ、当たるかわからないけど、思い切ってやってみるか!」と飛び出す前に、もう一度よく考えてみるのもありかもしれません。
本当にそのアイディアは宝くじですか?実は少しのブラッシュアップで輝くものかもしれません。けど、宝くじ扱いで開発してしまうと、そのことに気づけず、外れて終わってしまうかもしれない。
宝くじじゃないようにする=成功の再現性を高める=科学するには?
あなたが考えたそのアイディアは、きっとどこかで必要とする人がいる、素敵なアイディアです。
けど、うまくいくかどうかはわかりません。
- 本当に必要な人に届けられなかった
- もう少しだけ違う切り口で作る必要があった
決して悪くないアイディアだったとしても、うまくいくかどうかはわかりません。
けど、そのアイディアは宝くじなんかではありません。
どうすれば成功の再現性を高められるのでしょうか?
ここの問題を解決する方法論は過去に多くの方が語られているとおもいます。
書籍なども多く発刊されていますし、ネット上にも多くの記事があります。
端的にいうと**「顧客と対話することから始める」**です。
- あなたが想定している顧客は誰ですか?
- 顧客はそのプロダクトをいつ、どこで、何をしながら、どうやって使いますか?
- 顧客はあなたのプロダクトを使って、本当に喜びますか?
これらの問いに答えていくためには、実際に顧客と対話することが求められます。
すべては顧客との対話から始める
ケースによっては対話の時間を作るのが難しいケースもあるかもしれませんが、アイディアの成功率を上げるためにはなんとかして対話する機会を作りましょう。
会社HPからの問い合わせ、SNSのDM、街角のアンケート、顧客によって適切なアプローチ方法は様々ですが、きっと何か手立てがあるはずです。
顧客と対話する機会が得られたら、最大限活用していきましょう。
事前にユーザーインタビューやリサーチの手法について調べて、可能なら知人や同僚に協力してもらって事前にリハーサルをしておくことをお勧めします。
(私自身この辺はあまり明るくないのですが...)
私はよく日本ウェブデザイン株式会社の羽山さんが発信されている情報をいつも参考にさせてもらっています。
架空のペルソナを想定してイメージで進めるのではなく、実際に顧客と接することで初めて得られる情報は多くあります。
実際のお客様と話して、自分たちの考えたアイディア・仮説のどこに間違いがあるのかを得ることで、成功の確率を事前に上げておくことができます。
顧客と対話するようになると、準備、実施、分析が必要になります。また、得られたフィードバックをもとに漸進し、もう一度顧客と対話し... というサイクルが発生します。はっきり言って大変です。それなりに時間もかかります。
とても大変な顧客との対話ですが、得られるものもとても大きいです。ユーザーが普段なにを見ながら、いつ、どこで、どんな気持ちを抱きながら行動を取っているのか。こうした情報を集めることで、初めて顧客の真の課題を得られます。
リリースを焦ってはいけない、急ぎましょう
顧客との対話はとても重要ですが、一方で「早くリリースしないと」という悪魔の囁きもきっとあります。しかし、焦ってはいけません。焦りはこれまでの頑張りすべてを無に帰すかもしれない。
顧客との対話を十分にせず、自分が考えたアイディアをもとにプロダクトを開発して、その結果うまくいかなかったら...大変ですよね。顧客との対話はとても大事なステップであり、決して飛ばしていいようなものではありません。これは顧客との対話に限った話ではありませんが、やることが多い時に手順を飛ばしてはいけません。焦ってはいけないのです。
思ったより時間がかかってしまうと、誰しも焦りを感じるでしょう。しかし、そこで安易に焦ってはいけません。焦らずに、急ぎましょう。ステップを飛ばさずに、どうすれば少しでも早くなるのかを考えましょう。特にプロダクトの初期段階では特に重要です。最初からうまくやれるわけがないのですから、効率よりも効果を求めましょう。
実際にどうやって進めているか
プロダクトを開発していくときや、新しいユーザー体験を提供するような機能を追加するときに使う、弊社なりのテンプレートを用意しています。
- 顧客の対話から課題を見つける
- 課題に適した解決策を見つける
- 解決策をプロダクトに昇華する
上記のプロセスを確実に実施していくためのテンプレートとなっております。
こちらは公開はできないので、概要だけ紹介いたします。
ユーザーインタビュー
弊社のペルソナにマッチした製造業者の方々にユーザーインタビューにご協力をいただいております。詳細な内容は記事には書けませんが、やはり実際にお話をさせていただいたり、現場に伺うことで見えることが多数あります。
ユーザーインタビュー実施時には事前準備としてインタビューシートを用意して、ユーザーと一緒にシートを見ながら進めていきます。各できごとを 「いつ」「どこで」「誰が」「どうやって」「何を見ながら」「何を聞いて」「何を言う」 という風にできる限り実際の行動がわかるようにインタビューしていきます。
分析
インタビューが終わったら、分析作業に入っていきます。伺った内容から、気づきに繋がることを探します。
インタビューシートをもとに、ユーザーの行動の裏にある気持ちや背景を洗い出します。その中から特に重要度の高いものを集めていき、顧客が抱えている重要な課題を見つけます。
必要に応じて業務フローを可視化したり、簡単なドメインモデリングを実施します。
ここで注意するのが「自分の考える仮説が当たっているかどうか」を意識しないことです。ひとは安心感を求めるために自分の考えに近いものを優遇してしまいます。いわゆるバイアスと呼ばれるものです。
日本ウェブデザイン羽山さんの神スライドが参考になります。
プロトタイピング
課題が見つかったら、まずはそれを解決するための機能をFigmaでデザイン&プロトタイピングします。
ある程度プロトタイピングが固まったら、ユーザーに持っていき、フィードバックをもらって改善していきます。
ここで「抱えている課題」「解決策」の両方が顧客の現実とフィットしていることが確認できたら、実際の機能開発に入っていきます。
一見回りくどいステップに見えますが、この流れを踏むことで、本当に顧客に求められる機能が開発できる確率を高めます。
まとめ
プロダクト開発において一番大事なのは、顧客との対話です。
もちろんただ会話するだけではダメで、ちゃんとユーザーの真の課題を浮き彫りにできるようなユーザーインタビューでなくはなりません。学習も準備も分析もとても大変です。
しかし、焦ってはいけない。飛ばしてはいけない。本当にプロダクト開発を成功させたいのであれば、顧客との対話を避けてはいけません。
なお、冒頭にも書きましたがこの記事はソフトウェアエンジニアに向けた記事です。
本当にいいもの作りたいって思うなら、顧客との対話に怯えずに積極的に動いていきましょう。
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