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【本の紹介】エンジニアリング組織論への招待

2024/03/31に公開

概要

「エンジニアリング組織論への招待」という本の紹介です。

組織論と書いていますが、個人的には序盤の問題解決の方法がかなり印象的だったので、
その部分を書いていきます。

基本的には印象になったトピックを抜き出して紹介していくスタイルです。
問題解決方法に悩んでいるエンジニアの方に読んでいただけると幸いです。

エンジニアリングの意味

「エンジニアリング」とは、プログラムを書くことでも、顧客の満足を上げることでもない。
エンジニアリングとは、日本語で「工学」といい、「実現していくための科学分野」と言える。

はじめとおわりを考える

「実現する」には、はじまりとおわりが必ずある。

「はじまり」をすべて曖昧な状態からスタートするので定義することは難しいが、
「おわり」は曖昧な状態ではなく、具体的なものが出来上がっているので定義できる。

誰かの曖昧な要求からスタートし、具体的で明確な何かに変わっていく過程が「実現」であり、
その過程すべてがエンジニアリングという行為である。

つまり、曖昧さを減らし、具体性・明確さを増やす行為が、
「エンジニアリングとはなにか」という答えになる。

情報を生み出すこと

物事を「実現」させる唯一の手段が、不確実性を減らしていくこと。

しかし、人は、不確実性の高いもの(わからないもの)には「不安」になり、本能的に、逃避するようにできている。
なので、確実性が高い物事を実行してしまうクセがある。

不確実性が減っていない限り、常に不安は減らないし、物事を実現することはできない。
不安を解消するには、結局は不確実性の高いものに向き合う必要がある。

エンジニアリングという行為は、実現のために不確実性の高い状態から、不確実性の低い状態に効率よく移していくという過程に行うすべての行為のこと。

この、不確実性を減少させる知識のことを、情報と呼ぶ。

つまり、「不確実性を下げるとは、情報を生み出すこと」になる。

仕事と学力テストの3つの違い

私達は社会人になるまで、「情報を生み出す」「不確実性を下げる」という観点で物事を学んできていない。

与えられた問題をどうやって解いたら良いか方法論を学び、
学力テストで正解率を高められるように勉強してきた。

  • 学力テスト...問題の解き方を知っている
  • 仕事での問題...問題の解き方を知らない

そして、学力テストと仕事の違いは以下のようになる。

学力テスト 仕事
人数 1人 複数人
情報 問題に書いている 必ずしもあるわけではない
答え 決まっている 決まっていない(問題を設定することからはじまる)

この「学力テスト」と「仕事での問題解決」の考え方の違いを埋めていく「情報」を
生み出す事ができれば、仕事での問題解決は簡単になるはず。

この考え方の違いを埋めていく思考様式が以下の3つ。

  • 論理的思考の盲点
  • 経験主義と仮説思考
  • システム思考

論理的思考の盲点

論理的思考には以下の前提がある。

  • ルールと事象を正しく認知できること
  • 正しく演繹できること

学力テストは1人で行うが、仕事の問題解決は複数人で行う。
そのため人間関係や他人との共同作業をしていくうえで、感情的になることがある。

さらに、様々な人の認知能力の限界や、自分でない人の情報を正しく認識することが難しく、
起きている事象を正しく認知することができなくなる。

そのため、仕事での問題解決を行うために必要な論理的思考力は、
コミュニケーションの失敗によって制限される。

経験主義と仮説思考

経験主義

例えば3枚のカードが目の前にあったとして、「ハートのエースはどれか?」という問題があるとする。
正解するためのアプローチ方法は、1枚ずつ調べるしかない。

不確実性を確実なものにするには、行動して確かめる以外方法はない。
このように、立脚点に元づいた思想、考え方を、「経験主義」という。

もしも今ある情報の中からでしか考えることしかできなければ、次の行動への一手が止まってしまう。

対して、「すべての問題が揃っていないのだから、より問題をはっきりさせるための一手を考える」のであれば、思い悩むことが少なくなる。

仮説思考

仮説思考は、「わずかな痕跡」から、それを説明可能とする大胆な思考展開・モデル化を行い、それを検証するための行動につなげる推論方法

例えば、以下のようなこと。

事象: 2つの大陸の海岸線は似ている。
仮説: 大陸は移動したのではないか。

結論: 2つの海岸線が1つである証拠を探そう

仮説思考は、経験主義をさらに生産的な(不確実性を削減する)ものにするための「大胆な跳躍」をもたらす。

システム思考

システム思考は、生態系で考えるとわかりやすい。
例えば害虫を駆除して減らしてしまっては、生態系全体に影響を与え、思わぬ変化を引き起こすという減少がある。

ビジネスでいうと、売上を上げようとして顧客単価を上げたら、顧客数が減ってしまうということである。

すべての要素がツリー構造になるような、「要素還元型主義」に対して、
すべての要素がネットワーク構造になるような考え方を、「システム」とよぶ。

仕事の問題を学力テストの問題に変換する

仕事の問題を先述の3つのを使って、学力テストの問題に変換できれば、
学生時代に培ってきた能力で解決できるはず。

この3つの考え方を使って、複雑な問題を、簡単な問題に変換していくことが、「思考のリファクタリング」という。

感想

この本で1番ビビっときたのは、「エンジニアリングとは不確実性を効率よく減らして実現していく工程すべて」ということ。

「わかるもの、できるもの」から手をつけがちだが、不確実性が高いままのうちはそれは「実現」に近づいていないということを頭に入れて、日々の仕事に取り組もうと思いました!

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