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AIエージェント時代のプロトコル比較:MCP、ACP、A2Aの役割と使い分け

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はじめに

MCPが浸透しつつある中、ACPやA2Aというプロトコルも登場し、「MCPとACP、A2Aって何なの?何が違うの?」という疑問を耳にするようになりました。これらのプロトコルは、AIエージェントが進化していくうえで重要性が増してくると感じています。そこでこれらのプロトコルの違いと重要性を、AIエージェントの進化を背景として、概要レベルで整理しました。

AIエージェントの基本構成を理解する

従来の生成AIアプリは「質問されたら答える」単発対応でしたが、AIエージェントは目標を設定すれば状況を判断しながら必要な行動を繰り返し実行し、タスクを完遂します。

LLM単体では思考・判断はできても、実際の行動(データ取得、システム操作、外部連携等)はできません。AIエージェントは、LLMの思考力に各種ツールとの連携機能が加わることで実現されます。ツールとは、Web検索やコード生成・実行、データベース操作などがその例で、頭脳(LLM)に手足(ツール)を与えることで実際のタスクを実行できるようになります。

さらにAIエージェントは、別のAIエージェントと協調・対話して、より複雑な業務を遂行することもでき、この複数のエージェント構成はマルチエージェントと呼ばれます。


図1:AIエージェントの基本構成

MCPとACP:それぞれの役割

AIエージェントがツールを使う場合、LLMに応じた呼び出し方法を実装する必要がありますが、このツールの呼び出し方法を統一したプロトコルで標準化したものが MCP(Model Context Protocol) (https://modelcontextprotocol.io/introduction) です。

一方、 ACP(Agent Communication Protocol) (https://agentcommunicationprotocol.dev/introduction/welcome) は、エージェントがどのような技術やフレームワークで構築されているかに関係なく、エージェント同士が簡単に通信および連携できる方法を標準化したものです。

つまり、MCPは「LLMに外部ツールを与えるための機能拡張のプロトコル」であり、エージェント単体の能力を増やしたいときに使います。
MCPの目的として「LLMにコンテキストを与える」という言い方がされることがありますが、これは少しわかりにくい表現かもしれません。コンテキストとはLLMが回答を生成するために必要な背景や状況のことを指します。つまり、この説明は、LLMが知らない情報を外部ツールを使って取得し、LLMに与えるということを意味しています。

ACPは「エージェント連携のプロトコル」ですので、エージェント同士を協調させたいとき、エージェントを呼び出したいときに使います。ここにはエージェント同士の複数ターンでの対話も含まれます。


図2:AIエージェントにおけるMCPとACPを示した基本構成

MCPとACPの比較

以上のように、MCPとACPは相対するものではなく、目的や使いどころが異なるプロトコルです。主なポイントを以下にまとめます。

項目 MCP ACP
目的 LLMにツールを接続 エージェント同士の連携
対象 LLM ↔ ツール エージェント ↔ エージェント
通信パターン 単発の呼び出し 複数ターンの対話
データ構造 関数呼び出し形式 構造化メッセージ
使用場面 機能拡張 協調作業

大きく異なるのは、ACPは複数ターンのやりとりが考慮されている点です。具体的には、複数回のインタラクションの仕方、その時のメモリの持ち方、より複雑なデータ構造の受け渡し方などがキーになると思いますので、これらの点は別の記事で深堀していきたいと思います。

エージェントをMCPのように使う

エージェントを一回だけツールのように呼び出したいというケースもあるでしょう。ACPではこのケースも考慮されていて、ACP-MCPアダプター (https://github.com/i-am-bee/acp-mcp) を使うとACP対応のエージェントをMCPのプロトコルを使ってツールとして呼び出すこともできます。


図3:ACP対応エージェントのMCP呼び出しイメージ

A2Aの位置づけ

ACPのようなAIエージェント連携を目的としたプロトコルは他にもいくつか策定中であり、代表的なものが A2A(Agent2Agent) (https://developers.googleblog.com/en/a2a-a-new-era-of-agent-interoperability/) です。目的は同じですが、運営母体やアーキテクチャが異なります。

出典:https://www.deeplearning.ai/short-courses/acp-agent-communication-protocol/

これらの異なるプロトコルがどのような特徴を持ち、どのような場面で使い分けるべきかについては、各プロトコルの技術仕様がより明確になってきた段階で、改めて詳しく比較・分析したいと思います。

マルチエージェントシステムでの全体像

マルチエージェントシステムでは、複数のエージェントが協調して複雑な業務を処理します。例えば、金融機関のワンストップ窓口システムでは以下のような構成が考えられます。

  • 統括AIエージェントが顧客の複雑な要求を理解し、必要に応じて専門エージェントを連携させて顧客体験を向上します。
  • 専門AIエージェント(入会申し込み、融資、商品問合せ等)が、自律的に必要な業務処理を実行し、顧客との円滑なやり取りを実現します。
  • LLMが各種ツールと連携し、効率的に業務プロセスを自動化します。


図4:マルチエージェントシステム全体像

プロトコルの重要性

マルチエージェントシステムにおいて、これらのプロトコルの適用箇所と、プロトコルが重要な理由は以下の通りです。


図5:マルチエージェントシステム全体像におけるMCP/ACPの位置づけ

異なる技術で作られたエージェントを組み合わせられる
実際のビジネスでは、A社がLangGraphで作った営業エージェントと、B社がCrewAIで作った顧客サポートエージェントを組み合わせたいということが考えられます。従来はそれぞれ独自の通信方式だったため、連携が困難でした。しかし、ACPという共通プロトコルがあれば、使用技術に関係なく簡単に連携できます。

LLMを切り替えても同じツールが使える
現在は、タスクの性質に応じて最適なLLMを選択する「モデルゲートウェイ」や「LLMルーター」と呼ばれる考え方が広がりはじめています。企業によってはセキュリティ要件や処理能力、コストに応じて異なるLLMを使い分けることもあります。従来は、LLMが変わるたびにツール連携部分も書き直す必要がありました。しかし、MCPという共通プロトコルがあれば、どのLLMでも同じツールを同じ方法で使えるため、開発効率が大幅に向上します。

まとめ

AIエージェント時代において、MCP、ACP、A2Aはそれぞれ異なる役割を担う重要なプロトコルです。MCPはLLMとツールの橋渡し、ACPとA2Aはエージェント間の連携を担います。これらのプロトコルの標準化により、異なる技術やフレームワークで構築されたエージェントやツールが相互運用可能になり、より柔軟で拡張性の高いマルチエージェントシステムの構築が可能になります。

今後これらのプロトコルがさらに発展し、AIエージェントエコシステムの発展を支える基盤となることが期待されます。

ACPについては、こちらに特長をまとめた記事がありますので、よければ参考にしてみてください。
https://zenn.dev/dxclab/articles/f80bc2176f8a67

ACPをより学びたい方には、無料トレーニングコースが用意されており、サンプルコードも編集・実行できます。
https://www.deeplearning.ai/short-courses/acp-agent-communication-protocol/

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