[AI Agent Jump Start:応用編#1] 失敗しないAIエージェント設計:段階的導入と目的に応じたデザインパターンの選び方
AIエージェントは強力な可能性を秘めていますが、その効果を最大化するには、目的に合った設計と段階的な導入がポイントになります。
「とりあえずエージェント」「とりあえずマルチエージェント」ではなく、どのような場面でエージェントを使うべきか、どのように設計すべきかを見極めることが重要です。
この記事では、プロジェクトでAIエージェント設計に関わるエンジニアを想定して、押さえておきたい指針と代表的なパターンを整理しました。
特に、第1章(エージェントを使うべきとき/使わないべきとき)と第4章(設計のポイントとアンチパターン)は、以下の信頼性あるガイドをベースにしています。
- OpenAI: エージェント構築実践ガイド(実装に直結するベストプラクティスを提示)
- Anthropic: Building Effective AI Agents(安全性と信頼性を重視した設計原則を解説)
- IBM CognitiveClass: Introduction to Agentic AI(エンタープライズ視点での導入プロセスを整理)
これらの知見をもとに、エージェントを使うべき場面や設計の原則、避けたいアンチパターンを整理しました。
※ 詳しいガイドへのリンクは記事末尾「5.3 参考文書の紹介」にまとめています。
第1章:いつエージェントを使うか/使わないか/マルチエージェントを選ぶか
AIエージェントは、どんな場面でも有効というわけではありません。ここでは、使うとき、使わないとき、マルチエージェントを選ぶときを、整理します。
1.1 エージェントを使うべきとき
-
タスクが複雑で、手順や判断の流れを事前に決められないとき
たとえば、例外処理や文脈に応じた判断が多く、固定的なワークフローでは対応できない場合です。こうしたオープンエンドな問題では、エージェントの柔軟な意思決定が役立ちます。〔OpenAI, Anthropic, IBM〕 -
非構造化データへの依存が大きく、会話的なやり取りを通じて情報を整理する必要があるとき
たとえば、自然言語で書かれた文書を解釈しながら、ユーザーとのやり取りで不足情報を補うケースです。こうした場面では、単発のLLM呼び出しよりも、柔軟に判断を繰り返せるエージェントが適しています。〔OpenAI〕 -
会話とアクションを組み合わせる必要があるとき
たとえば、顧客とのチャットで情報を集めながら、外部システムにアクセスしてデータを取得したり、チケットを更新したりするケースです。単なるチャットボットではなく、実際の操作を伴う場合にエージェントが有効です。〔OpenAI, Anthropic〕 -
結果を検証しながら改善できる仕組みがあるとき
コーディングのように、自動テストで出力を評価し、その結果をもとに再試行できるタスクです。こうした反復改善が可能な領域では、エージェントの強みが発揮されます。〔Anthropic〕 -
コストに見合う高い価値があるとき
エージェントは運用コストが高くなる傾向があります。そのため、戦略立案や高度なトラブルシューティングなど、投資対効果が見込める場面で使うのが適切です。〔IBM〕
1.2 エージェントを使わないべきとき
-
手順や結果が明確で、決定的なタスクのとき
すべてのステップを事前に定義できる場合は、ワークフローや単発のLLM呼び出しで十分です。複雑なエージェントを導入する必要はありません。〔Anthropic, IBM〕 -
大量処理やゼロエラーが求められるとき
たとえば、医療やセキュリティの判断、リアルタイムの不正検知などです。こうした場面では、エージェントの柔軟性よりも、確実性とスピードが重要です。〔IBM〕 -
コストやリスクに見合わないとき
エージェントはレイテンシやコストが増えやすく、誤りが連鎖するリスクもあります。まずは、よりシンプルな方法で目的を達成できないかを検討しましょう。〔Anthropic, IBM〕 -
LLMを使うが、柔軟なワークフロー制御は不要なとき
たとえば、感情分析や要約などの単機能タスクです。こうした場合は、エージェントではなく通常のLLM機能で十分です。〔OpenAI〕
1.3 マルチエージェントを選ぶべきとき
まずは、単一エージェントでどこまで対応できるかを検討することが基本です。そのうえで、次のような考慮が出てきた場合に、マルチエージェントを検討します。
-
ロジックが複雑になりすぎるとき
条件分岐が増え、プロンプトやテンプレートの管理が難しくなった場合です。〔OpenAI〕 -
ツールの数や類似性が原因で誤用が頻発するとき
ツールの名前や引数を工夫しても改善しない場合は、役割ごとにエージェントを分ける方が効果的です。〔OpenAI〕 -
単一エージェントで役割が混ざり、品質やデバッグ性が低下するとき
たとえば、創造的な文章生成と批判的なレビューを同じエージェントに任せると、どちらも中途半端になることがあります。〔IBM〕
こうした場面では、エージェントを分割することで次のようなメリットが得られます。
分割のメリット
- 役割を明確にし、プロンプトや評価を個別に最適化できます。
- デバッグや品質管理がしやすくなり、スケーラブルな設計が可能になります。〔IBM〕
第2章:段階別アーキテクチャパターン
この章では、シンプルなものから複雑なものへと段階的に導入できる、4つの基本パターンを整理します。原則は「まずは最も簡単な方法から始め、必要になったときに複雑さを増やすこと」です。この考え方に沿って、Level 0 から順に説明し、最後に高度なマルチエージェント構成を紹介します。
エージェントのパターンはさらに細かく分類できますが、それらの代表的な18パターンの詳細は続編の記事AI Agent Jump Start:応用編#2 AIエージェント設計の課題解決:18パターンによる体系的アプローチで扱います。
2.1 決定論的チェーン(Level 0:非エージェント)
特徴:
- 固定されたパイプラインで処理を進めるケースです。
- 予測可能性や一貫性、監査が求められる場面で向いています。
処理フロー例(プロンプト・チェーニング・ワークフロー):
[入力] → [LLM処理] → [LLM処理] → [LLM処理] → [出力]
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
文書 テキスト抽出 要約生成 回答生成 結果
その他のバリエーション:
- ルーティング・ワークフロー(条件分岐で経路選択)
- 並列化ワークフロー(独立サブタスクの同時実行)
- オーケストレーター/ワーカー、エバリュエーター/オプティマイザー構成
これらのバリエーションの詳細は、参考文書のひとつであるBuilding effective agentsを参照してください。
適用判断チェックリスト:
- 処理ステップが事前に決まっていて、あらかじめ固定して問題ないでしょうか?
- 各処理の内容や所要時間が予測可能でしょうか?
メリット・デメリット:
- ✅ 実装が簡単で予測可能、低コストで監査しやすい
- ❌ 曖昧さや例外には弱く動的な対応は難しい
2.2 シングルエージェント(Level 1:基本エージェント)
特徴:
- 1つのエージェントが複数ツールを状況に応じて使い分け、タスクを自律的に進めます。
- 代表的な実行様式として、思考→行動(ツール)→観察→評価のループを回します。
処理フロー例(思考と行動の反復):
[タスク受領] → [思考] → [行動選択] → [ツール実行] → [観察]
↑ ↓
←←←← [完了判定] ←←←← [結果評価] ←←←←←
適用判断チェックリスト:
- 単一ドメインで柔軟な判断が必要でしょうか?
- 複数のツールを組み合わせて選択することで価値が出せそうですか?
- 試行錯誤(反復改善)でアウトプットの品質を上げられそうですか?
メリット・デメリット:
- ✅ 柔軟で、会話とアクションの統合や反復改善と相性がよい
- ❌ 複雑なタスクでは限界がある(プロンプトが大きくなる、ツールを誤用しやすい、デバッグが難しい)
2.3 順次実行エージェント(Level 2:ワークフロー型)
特徴:
- 段階ごとに役割を持つエージェントやコンポーネントが、順番にタスクを進めます。
- 多くの業務アプリで採用されており、構造化しやすくデバッグが容易です。
- 各段階のコンポーネントは、行動選択やツール実行など、エージェント要素の一部だけを持つ場合があります。
処理フロー例:
[タスク受領]
↓
┌───────────────────┐
│ Phase 1: 情報収集 │ ← エージェントが段階実行
└───────────────────┘
↓
┌───────────────────┐
│ Phase 2: 分析 │
└───────────────────┘
↓
┌───────────────────┐
│ Phase 3: 報告書作成│
└───────────────────┘
↓
[最終出力]
適用判断チェックリスト:
- 処理フローは明確な段階に分かれていますか?
- 各段階で異なるツールが必要になりそうですか?
- 単一ドメインでも処理フローが複雑ですか?
- 単一エージェントでは品質や保守に限界がありますか?
メリット・デメリット:
- ✅ 構造が分かりやすく、デバッグもしやすい
- ❌ 並行処理には弱く、エージェントやLLMの能力の上限に影響されやすい
2.4 協調型マルチエージェント(Level 3:協調・並行型)
特徴:
- 複数の専門エージェントが協調し、コーディネーターが分担と統合を担います。
- スター型(中央が統括)や分散ハンドオフ型(ピア間引き継ぎ)などの協調パターンがあります。
- DeepResearchやペルソナによる議論など、高度なユースケースで採用されます。
協調パターン例:
[タスク入力]
↓
[タスク分散コーディネーター]
↓
┌─────────────────────────────────┐
│ Agent1 │ Agent2 │ Agent3 │ ← 並行実行
│ ↓ │ ↓ │ ↓ │
│ タスク1 │ タスク2 │ タスク3 │
│ ↓ │ ↓ │ ↓ │
└─────────────────────────────────┘
↓
[結果統合・最終出力]
適用判断チェックリスト:
- 複数の専門領域が必要で、協調処理によって価値が生まれそうですか?
- エージェント間の依存関係は薄く、独立性が高いでしょうか?
- 分割することで役割の明確化や評価のしやすさが期待できそうですか?
メリット・デメリット:
- ✅ 高い専門性と処理速度、スケーラビリティを確保できる
- ❌ 設計や調整のコストが高く、監視やデバッグが複雑になりやすい
第3章:目的別エージェントパターン
この章では、現場の業務で活用されやすい代表的なエージェントパターンを紹介します。
3.1 Agentic RAG:インテリジェント情報検索(Level 1-2対応)
概要:
- 従来のRAGと比べ、検索戦略を動的にしたり、複数回の検索と評価・再検索のループを取り入れることで、解答の妥当性を高めます。
- ユーザの意図を明確にし、クエリを再設計することで、情報を段階的に集約・統合します。
従来RAG vs Agentic RAG :
従来RAGとAgentic RAGでは、検索方法や結果の扱い方に大きな違いがあります。
次の表で、それぞれの特徴を比較してみましょう。
項目 | 従来RAG | Agentic RAG |
---|---|---|
検索戦略 | 固定クエリ | 動的クエリ生成・調整 |
検索回数 | 1回 | 複数回(評価・再検索) |
結果処理 | そのまま利用 | 情報統合・分析 |
API呼び出し | 1-3回 | 5-15回 |
実装パターン例:
質問入力
↓
┌─────────────────────────────┐
│ Query Planning Agent │ ← 検索戦略立案
└─────────────────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────┐
│ Retrieval Agent │ ← 情報検索実行
└─────────────────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────┐
│ Evaluation Agent │ ← 結果品質評価
└─────────────────────────────┘
↓
再検索が必要? YES → Query Planning Agent
↓ NO
┌─────────────────────────────┐
│ Response Generator │ ← 統合回答生成
└─────────────────────────────┘
適用場面:
- 複雑な技術調査: たとえば「XXXの新機能と移行リスクを調べる」場合
- 法務・コンプライアンス調査: 多角的に法規制を確認するとき
- 専門知識ナレッジの構築: 医療や金融など専門分野で情報を整理する場合
具体例:
3.2 Sequential Workflow Agent:業務プロセス自動化(Level 2対応)
概要:
- 段階的に責務を分割し、人間の承認(HITL)や検証を要所に組み込むことで、監査性と安全性を確保します。
実装パターン例:
入力データ
↓
┌─────────────────────────────┐
│ Stage 1: Document Review │ ← 書類確認
└─────────────────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────┐
│ Stage 2: Risk Assessment │ ← リスク評価
└─────────────────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────┐
│ Stage 3: Recommendation │ ← 推奨事項生成
└─────────────────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────┐
│ Stage 4: Human Approval │ ← 人間承認
└─────────────────────────────┘
↓
最終結果
適用場面:
- 契約書レビュー: 法務チェック → リスク評価 → 修正提案 → 承認
- 採用プロセス: 書類選考 → 面接評価 → 最終判定
- コンテンツ制作: 企画 → 執筆 → 校正 → 公開
3.3 DeepResearch:自動研究・調査システム(Level 3-4対応)
概要:
- 情報を検索するだけではなく、情報の信頼性・関連性・最新性を評価し、構造化された回答を生成する高度なAIエージェントです。
- 計画 → 情報収集 → 統合・分析 → レポート作成を、単一エージェントで進めることも、複数エージェントで協調して実装するパターンもあります。
- 実現方法はひとつだけではなく、ベンダーやオープンソースで様々なデザインパターンが提案されています。
- 専門エージェントを分担させることで、精度・網羅性・速度のバランスを取りやすくなります。
実装パターン例:
[トピック入力]
↓
[研究計画立案] ← Research Coordinator
↓
[並行情報収集](複数エージェント)
┌────────────┬───────────┬────────────┐
│サブトピック1│サブトピック2│サブトピック3│ ← Information Collector
└────────────┴───────────┴────────────┘
↓
[データ統合・分析] ← Data Analyzer
↓
[レポート生成(根拠提示・要約)] ← Report Generator
↓
[HITLレビュー → 最終出力]
適用場面:
- 市場調査・競合分析: 新規事業参入の検討に活用
- 技術トレンド分析: 技術選定を支援する場合
具体例:
第4章:目的に応じたデザインパターンと実装の注意点
この章では、エージェントを導入するかどうかの判断基準、設計の基本原則、そして避けるべき問題点とその対策をまとめます。
4.1 エージェント導入判断のポイント
エージェント導入を検討する際は、以下のポイントを確認してください。
すべてに当てはまらない場合は、まずワークフローや単発LLMでの対応を検討するのがおすすめです。
タスク特性
- 曖昧さや例外処理が多く、固定ワークフローでは対応できないか?〔OpenAI, Anthropic, IBM〕
- 会話と外部アクションを組み合わせる必要があるか?〔OpenAI, Anthropic〕
- 非構造化データへの依存が大きく、会話的なやり取りで情報を整理する必要があるか?〔OpenAI〕
成果とコスト
- 成果を自動評価できる仕組み(テストやフィードバックループ)があるか?〔Anthropic〕
- コストに見合う高い価値(ROI)があるか?〔IBM〕
安全性と制御性
- ガードレールと人間介入の仕組みを設計できるか?〔OpenAI, IBM〕
- 段階的導入(POC→パイロット→本番)を計画できるか?〔IBM〕
設計のシンプルさ
- 単一エージェント+ツール設計の改善で対応できないか?〔OpenAI, Anthropic〕
- 複雑さを追加する理由が「明確な成果改善」であるか?〔Anthropic, IBM〕
単一かマルチエージェントかの判断のポイント
- 単一エージェントで目標を達成できるか? → できるならそのまま〔OpenAI〕
- ツールの工夫で改善できるか? → できるなら分割不要〔OpenAI〕
- それでも複雑さや誤用が解消しないか? → マルチエージェントを検討〔OpenAI, IBM〕
4.2 エージェント設計のポイント
エージェントを設計するときは、次のポイントを意識するとスムーズです。
1. モデル(Model)
- 最初は最も高性能なモデルでベースラインを確立し、その後、許容品質を維持できる範囲で小型モデルに置き換えてコストと応答時間を最適化します。〔OpenAI〕
- タスクの性質に応じてモデルを使い分けます。単純な分類や検索は軽量モデル、複雑な意思決定は高性能モデルを使うのが基本です。〔OpenAI〕
2. ツール(Tools)
- ツールは標準化された定義を持ち、明確な名前・引数・説明を備え、再利用可能であることが重要です。〔OpenAI, Anthropic〕
- ツール定義には、使用例・エッジケース・入力形式・他ツールとの境界を明記します。〔Anthropic〕
- ツールは大きく3種類に分類できます: 〔OpenAI〕
- データツール(情報取得)
- アクションツール(外部システム操作)
- オーケストレーションツール(他エージェントをツールとして利用)
3. 指示(Instructions、Prompt)
- 高品質な指示は、エージェントの意思決定を改善し、エラーを削減します。〔OpenAI〕
- ベストプラクティス:
- 既存の運用手順やポリシーを活用
- タスクを小さく分解
- 明確なアクションを定義
- エッジケースを想定して条件分岐を組み込む
4. 安全性と制御性
- 多層ガードレール(関連性・安全性・PIIフィルタ・モデレーション・ツールリスク評価・出力検証)を設計します。〔OpenAI〕
- 人間による介入 (HITL)を組み込みます。特に、失敗しきい値の超過や高リスク操作の前には必ず人間にエスカレーションします。〔OpenAI, IBM〕
- 段階的導入(POC → パイロット → 本番)と包括的なログ記録を徹底します。〔IBM〕
4.3 避けるべき問題点(いわゆるアンチパターン)とその対策
ここでは、ガイドで指摘されているアンチパターンと、その対策を順に紹介します。設計時の注意点として参考にしてください。
1. 複雑なフレームワークに依存しすぎる
- 問題点:抽象化レイヤーが多いとデバッグが困難になり、不要な複雑さを招く。〔Anthropic〕
- 対策:まずはLLM APIを直接利用することから始め、コードやフレームワークを理解した上で、必要最小限の抽象化を慎重に追加します。
2. 初期段階から複雑にしすぎる
- 問題点:「高度なエージェントを作ること」が目的化し、シンプルな方法で十分なケースでも複雑化してしまう。〔Anthropic, IBM〕
- 対策:まずは最も簡単な解決策から始めることを徹底します。
3. モデルが扱いにくいツール設計
- 問題点:引数やフォーマットが複雑で、モデルが誤用しやすい。〔Anthropic〕
- 対策:ツールの名称、説明、引数や仕様を工夫し、モデルが間違いを起こしにくい設計にします。たとえば、相対パスではなく絶対パスを必須にすることで、モデルの誤用を防ぐことができます。
4. ガードレールや人間介入の不足
- 問題点:高リスク操作を完全自動で任せると重大な事故につながる。〔OpenAI, IBM〕
- 対策:多層ガードレール+人間承認を必ず設計します。
5. 単一エージェントに過剰な役割を詰め込みすぎる
- 問題点:コンテキスト過負荷や役割混在で品質が低下する。〔IBM〕
- 対策:役割分割(マルチエージェント化)を検討します。
4.4 本章のまとめ
- 導入判断 → 設計 → リスク回避の順で考える。
- Model / Tools / Instructionsの3要素を意識して設計する。
- 安全性と制御性を確保するために、ガードレールと人間介入の仕組みを組み込む。
- 複雑さやマルチエージェント化は、必要になったときに最小限で導入する。
第5章:まとめと次のステップ
5.1 重要ポイントの振り返り
AIエージェントの導入と設計は、タスクの複雑さや柔軟性の要求度に応じて段階的に考えるのがポイントです。最後に、この記事で解説したレベル別パターンをまとめて振り返ります。
レベル | 名称 | 概要 | 主な活用例 |
---|---|---|---|
Level 0 | 決定論的チェーン(非エージェント) | 固定パイプライン、ワークフロー | RAG、定型処理 |
Level 1 | シングルエージェント (基本エージェント) | 単一エージェントが柔軟に判断 | RAG強化、簡易自動化 |
Level 2 | 順次実行エージェント (ワークフロー型) | 段階的なエージェント処理 | 業務ワークフロー |
Level 3 | 協調型マルチエージェント (協調・並行型) | 専門エージェントによる協調・並行処理 | 技術調査、複雑処理 |
原則
- 最もシンプルな方法から始める
- 複雑さは「明確な成果改善」がある場合のみ追加
- 安全性・制御性(ガードレール+HITL)を必ず設計
5.2 関連記事の紹介
この記事で整理した基本パターンの理解を踏まえ、次の記事では、実務で直面する設計・実装上の課題と、その解決策として提案されているデザインパターンを紹介します。
全シリーズはこちら
この記事はシリーズの一部で、AIエージェント設計の基本から応用までを段階的に解説しています。シリーズ全体を通して読むことで、AIエージェントの概要と実装を体系的に理解できます。
5.3 参考文書の紹介
- OpenAI
日本語版もあり)
(- Anthropic
- IBM
「Introduction to Agentic AI 章」を参照。コンテンツは多言語対応しているので日本語で進められます。
最後に
AIエージェントは魔法の解決策ではありません。しかし、適切な設計と段階的な導入によって、ビジネス価値を最大化できる強力なツールです。
まずは小さく始め、評価と改善を繰り返しながら、着実に実装していきましょう。
Discussion