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測距センサの比較

2023/09/13に公開

概要

吊り下げられた物体が横に流れていく工場で、物体が通ったか(横切ったか)を判定するために、測距センサ(距離センサ)を試しました。物体が通る場所は決まっていますので、そこまでの距離が測定できたとき「物体がある」、もっと遠くの距離が測定されたとき「物体はない」と判断できますので、これを利用して、物体が通過したかどうかを検出しようと考えました。

測距センサの距離測定方式として広く使われているのが、光や音の放射とその反射を利用する方式です。この方式で距離を計算する方法としては、大きくは、三角測量法と飛行時間法があります。三角測量法は、放射角度と反射の受光角度、放射点と受光点の距離から対象物までの距離を計算する方法で、飛行時間法は、放射開始から反射受信までかかった時間と光や音の速さから距離を計算する方法です。

このようなセンサは、反射を利用するため、対象物の角度や色などに影響されます。今回、物体は完全に平坦ではなく、また、吊り下げられた状態を想定しているため角度が変化します、そこで、3種類の測距センサを使用して、測定対象物の色や角度を変えて比較しました。

なお、本実験は、平成30年度(2018年度)に、共同研究の事前比較実験として行ったものです。

測定の内容

測距センサ

以下の測距センサを比較しました。すべて株式会社 秋月電子通商にて購入したもので、下表には商品名を記載し、計測範囲も商品ホームページから抜き出したものとなっています。

なお、記事内では、それぞれのセンサを「本記事での呼び名」で示した名称で記載します。

種類 商品名 計測範囲 本記事での呼び名
赤外線
(飛行時間法)
VL53L0X使用 レーザー測距センサモジュール(ToF) 3cm~200cm レーザー(VL53L0X)
赤外線
(三角測量法)
シャープ測距モジュール GP2Y0A710K 1m~5.5m 赤外線(GP2Y0A710K)
超音波
(飛行時間法)
超音波センサー SRF02 16cm~6m 超音波(SRF02)

以下は、今回使用した3つのセンサの写真です。左から「レーザー(VL53L0X)」、「赤外線(GP2Y0A710K)」、「超音波(SRF02)」です。大きさの違いが分かると思います。

3つのセンサの写真
3つのセンサの写真

なお、左端の「レーザー(VL53L0X)」は、センサ自体は、緑色の基板の中央部の黒いチップであり、非常に小型であることが分かります。

レーザー(VL53L0X)の基板部を拡大
レーザー(VL53L0X)の基板部を拡大

条件

下表のような測定条件にて、3種類の測距センサで測定し、各センサの比較を行いました。

項目 内容
測定対象までの距離 50cm、100cm、150cm(実使用環境からこれら3つの距離を設定)
測定対象への入射角度 0度、15度、30度、45度、60度、75度
(0度に近いほど真っ直ぐ反射する)
測定対象の材質 紙(A4コピー用紙)
測定対象の形状、サイズ 平面でA3用紙サイズ(A4用紙を2枚使用)
測定対象の色 白、黒
外光 一般的な事務室で窓はブラインド閉(昼間なので薄暗い状態)にて、天井蛍光灯を点灯、消灯

実験のイメージ図(上から見た図)
実験のイメージ図(上から見た図)

データ収集

上記条件にて、それぞれ100回測定し、計測誤差範囲内のデータを数えました。つまり、100回の測定中、何回正しい値だったか、ということです。

その他

センサを接続するマイコンは、Arduino Unoを使用しました。また、近距離モード/遠距離モードなど測定時のモードが複数あるセンサでは、より適切なモードを選択しました。

測定結果

グラフについて

グラフの見方は次のとおりです。

  • 縦軸(Y軸) … 100回測定中、誤差範囲に収まったデータ数(100回中、何回正しかったか)
  • 横軸(X軸) … 入射角度(0度に近いほど、真っ直ぐ反射する)
  • 系列 … 青:距離50cm、赤:距離100cm、緑:距離150cm
  • グラフ個数 … センサごとに、4つのグラフがある。対象の色の「黒」と「白」、照明の「あり」と「なし」の組み合わせで4通り。

「レーザー(VL53L0X)」の測定結果

グラフ

レーザー(VL53L0X)、対象物の色:黒、照明:あり
レーザー(VL53L0X)、対象物の色:黒、照明:あり

レーザー(VL53L0X)、対象物の色:黒、照明:なし
レーザー(VL53L0X)、対象物の色:黒、照明:なし

レーザー(VL53L0X)、対象物の色:白、照明:あり
レーザー(VL53L0X)、対象物の色:白、照明:あり

レーザー(VL53L0X)、対象物の色:白、照明:なし
レーザー(VL53L0X)、対象物の色:白、照明:なし

所感

結果としては、以下です。

  • 色は、白の方が正確
  • 距離は、近い方が正確
  • 角度は、対象が白の場合30度~60度まで正確、黒の場合0度でも距離50cm以外は正確でない
  • 照明は、消灯(なし)の方が正確

測定対象の色が白と黒で、大幅に違いが見られました。可視光においては、白はよく反射し黒は吸収すると感覚的に理解していますが、VL53L0Xは波長940nmを使用しているとのことで、可視光に近い近赤外線であり、可視光と似たような性質であるようです。

センサのデータシート等でも、「白」と「グレー」や「室内」と「室外」で測定可能距離が異なることが記載されていますので、対象の色や外光などの影響が大きいことが分かります。仕様上、計測範囲としては3cm~200cmとありますが、データシートには、対象色がグレーで室内の場合、推奨の測定可能距離80cmなどと記載されていますので、今回の対象色が黒の場合はより短くなり、せいぜい50cmがいいところなのかもしれません。

「赤外線(GP2Y0A710K)」の測定結果

グラフ

赤外線(GP2Y0A710K)、対象物の色:黒、照明:あり
赤外線(GP2Y0A710K)、対象物の色:黒、照明:あり

赤外線(GP2Y0A710K)、対象物の色:黒、照明:なし
赤外線(GP2Y0A710K)、対象物の色:黒、照明:なし

赤外線(GP2Y0A710K)、対象物の色:白、照明:あり
赤外線(GP2Y0A710K)、対象物の色:白、照明:あり

赤外線(GP2Y0A710K)、対象物の色:白、照明:なし
赤外線(GP2Y0A710K)、対象物の色:白、照明:なし

所感

結果は、概ね100に近い値で、唯一低い値だったのが、対象の色が白で、一番遠い150cm、入射角75度の条件でした。

「レーザー(VL53L0X)」の結果から述べた「白は反射し黒は吸収する」からすれば、「赤外線(GP2Y0A710K)」も赤外線を使用しており(波長は不明でした)、白の方がよい結果になると考えますが、実際の測定結果では、白の150cmが75度で落ちており、黒の落ち込みは少ないです。なお、センサのデータシートでは、白とグレーの用紙での比較が掲載されていますが、どちらもほぼ同一であり、色による違いは少ないようです。

仕様上、計測範囲は1m~5.5mとなっており、今回比較した3機種では、長い距離が得意ですが、0.5m(50cm)も問題なく測定できているように見えます。センサのデータシートを見ると、距離と出力電圧の出力曲線の例が掲載されており、50cm前後が限界値のように読み取れますので、やはり(当然のことですが)、仕様で規定されている1m~での使用がよいでしょう。

このセンサは、三角測量法を使用しているため、発光部と受光部を少し離す必要があるので、センサ自体が大きくなってしまいます。正確性が高い代わりに、筐体が大きくなるということでしょうか。

「超音波(SRF02)」の測定結果

グラフ

超音波(SRF02)、対象物の色:黒、照明:あり
超音波(SRF02)、対象物の色:黒、照明:あり

超音波(SRF02)、対象物の色:黒、照明:なし
超音波(SRF02)、対象物の色:黒、照明:なし

超音波(SRF02)、対象物の色:白、照明:あり
超音波(SRF02)、対象物の色:白、照明:あり

超音波(SRF02)、対象物の色:白、照明:なし
超音波(SRF02)、対象物の色:白、照明:なし

所感

他のセンサに比べて、入射角度の依存度が高く、ほぼ100か0かで分かれます。黒50cmは45度以上、またそれ以外は30度以上で0でした。このセンサの場合、30度未満(15度以下)で使用した方がよさそうです。

また、今回使用したセンサは、超音波の発信と受信を1つのセンサで行っており、筐体は「赤外線(GP2Y0A710K)」より小さいです。

対象物の色ではほとんど差はないですが、距離50cmに限っては、黒は30度まで正確なのに対して白は15度までとなっており、色による差が出ています。

対象物の材質について、スポンジのような吸音性のあるもので試してみたら面白かったと思いますが、想定する対象物が金属でしたので、考えが及びませんでした。

最後に

今回の条件による測定結果では、3つの測距センサで三者三様のグラフとなり、非常に興味深いものとなりました。中でも、赤外線で三角測量法を利用したGP2Y0A710Kが優秀な結果でしたが、3つのうち一番大きな筐体でした。

実際の使用では、測定方式、許容できるセンササイズ、測定対象物、測定距離などによって使い分ける必要があります。たとえば、測定対象物として、ガラスなどは超音波は反射しますが、光(赤外線)は透過します。また、今回使用した機種なら、近距離の測定では、「レーザー(VL53L0X)」や「超音波(SRF02)」を使用したほうがよいです(ただし、今回使用した「赤外線(GP2Y0A710K)」と同じシリーズで、計測範囲10~80cmという機種もありますので、「近距離は飛行時間法」という訳ではありません)。

Discussion