スーパーマリオで2Dと3Dの違いを理解する
3Dゲームであるために
この記事の内容はゲーム開発の授業に向けて、3Dゲームを面白くする技術(大野功ニ)から一部抜粋、引用させていただいた内容です。
2Dゲームと3Dゲームは、それぞれ異なる遊戯性を提供し、異なる面白さがあります。以下にそれぞれの特徴と遊戯性の向上について説明します。
3Dゲームの遊戯性が高い理由
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空間的な自由度:
3Dゲームはプレイヤーに空間的な自由度を大幅に提供します。この自由度により、探索、ナビゲーション、戦略の立て方が豊富になり、プレイヤーはより没入感と探究心を持ってゲームを楽しむことができます。 -
リアリズムと没入感:
3D環境はリアルな視覚効果を提供し、よりリアルな物理法則のシミュレーションが可能です。このリアリズムはプレイヤーをゲーム世界に深く没入させ、より強い感情的な繋がりを生み出すことができます。 -
多角的な視点とインタラクション:
3Dゲームでは、カメラアングルを変えることで様々な視点からゲームを体験でき、これが戦略やパズル解決に新たな層を加えます。また、オブジェクトとのインタラクションが多面的になり、より複雑でリッチなゲームプレイが実現します。
2Dゲームにしかない面白さ
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シンプルさとアクセシビリティ:
2Dゲームは視覚的および操作的にシンプルで直感的です。新しいプレイヤーでもすぐに理解しやすく、習熟するまでの時間が短いため、手軽に楽しむことができます。 -
明確なゲームプレイとデザイン:
2Dゲームは画面上の情報が限られているため、ゲームデザイナーは非常に洗練されたレベル設計やクリアな目標を用意する必要があります。この明確さはプレイヤーにストレスフリーな体験を提供し、ゲームの流れをスムーズにします。 -
芸術的な表現とスタイルの多様性:
2Dゲームは芸術的な表現においても特に多様で、ユニークなビジュアルスタイルを持つことが多いです。これにより、特定のアートスタイルやテーマを愛するプレイヤーにとって独自の魅力を持つことができます。
結論
2Dゲームも3Dゲームも、それぞれ異なる体験をプレイヤーに提供するため、どちらが優れているというわけではありません。ゲームの種類や目的、対象とするプレイヤーによって、最適な選択が異なります。デザイナーはこれらの特性を理解し、ゲームの目的に合わせて適切な技術とスタイルを選ぶことが重要です。
それらの前提を踏まえた上で、遊戯性を高めるために、いかに考えるかの課題をピックアップしました。
まずこの内容が自身で設計するゲームに対して組み込まれているか、考えて設計されているかを考察してみましょう。
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3Dゲームの魅力を明確にする:
3Dゲームの面白さとは何かを、基本的なゲームの楽しさを通じて説明し、プレイヤーが2Dゲームからスムーズに移行できるようにする。 -
シンプルな操作性の維持:
2Dゲームのシンプルさを3Dゲームにも反映させ、初心者でも容易にゲームの操作ができるようにする。例えば、『スーパーマリオブラザーズ』の直感的な操作方法を3Dゲームにも適用し、プレイヤーが自然とゲームに没入できるように工夫する。 -
インタラクティブな体験の提供:
3Dゲームの空間でプレイヤーが自由に探索し、試行錯誤する楽しさを提供。プレイヤーの行動に対する直接的なフィードバックを通じて、ゲームの動的な側面を強調する。 -
アクションとリアクションの強化:
3D空間でのアクションに対して、リアクションを豊かにしてプレイヤーの行動がゲーム世界に明確な影響を与えることを示す。これにより、プレイヤーがより多くのアクションを試みたくなるような設計を心掛ける。
これらの技術は、2Dゲームプレイヤーが3Dゲームの新たな体験に容易に適応し、楽しむことができるようにするために重要です。それぞれのゲームデザイン要素が組み合わさって、プレイヤーが新しいゲームフォーマットでも安心して楽しめる環境を作り出しています。
Bダッシュでわかる『官能性』と『リスクとリターン』のおもしろさ
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官能性:
「Bダッシュ」はプレイヤーがマリオを加速させ、スピーディーにゲームの世界を駆け抜けるアクションです。このアクションによってプレイヤーは速度感と動きの快感を体験でき、ゲームの直感的な楽しさを感じることができます。マリオの速く走る感覚は、プレイヤーにとって非常に「気持ちが良い」とされ、これが官能性の一例です。 -
リスクとリターン:
Bダッシュを使うことには、高速移動のスリルとともにリスクが伴います。速く動くことで障害物を素早く避けたり、敵を効率的に通過したりできますが、反面、制御を失いやすくなるため、穴に落ちたり敵にぶつかったりするリスクも高まります。このリスクとリターンのバランスがゲームプレイに緊張感と戦略的な考慮をもたらし、プレイヤーにとっての挑戦となります。
以上の要素が、Bダッシュを通じてプレイヤーに与える影響を示しており、これが『スーパーマリオ』シリーズにおけるゲームプレイの深みを増す理由の一部となっています。プレイヤーはこのメカニズムを理解し利用することで、ゲームの挑戦により積極的に取り組むことができ、それがゲームをさらに楽しく感じさせる要因になります。
ジャンプのアクションに対する『インタラクティブな遊び』
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インタラクティブな体験の創出:
ジャンプは『スーパーマリオブラザーズ』において基本的で中核的なアクションです。このアクションによってプレイヤーはゲームの世界と直接的にインタラクションを行うことができます。ジャンプを通じて障害物を越えたり、敵を倒したりすることで、プレイヤーは自らの意志とスキルが直接ゲームの結果に反映されることを体感できます。 -
アクションとリアクションのダイナミズム:
マリオのジャンプは、単に空を飛ぶだけでなく、様々なゲーム内要素との相互作用を引き起こします。例えば、ブロックを頭上で叩くことによりアイテムが現れるといった具体的なリアクションがあり、これがプレイヤーにさらなる行動を促します。このようなアクションとリアクションの連鎖は、ゲーム内での予期せぬ発見や楽しいサプライズを生み出し、ゲームプレイをリッチでダイナミックなものにします。 -
ゲームのフックとしての機能:
ジャンプはその単純さの中にも多くのゲームデザインの「フック」を内包しています。プレイヤーはジャンプの結果として現れる様々なゲーム内の変化に引き寄せられ、探索や試行を続けるモチベーションを保ちます。これにより、プレイヤーはゲームに継続的に関与し続けることになり、ゲーム体験が拡張されます。
このように、ジャンプのアクションは単なる移動手段以上の役割を果たし、『スーパーマリオ』シリーズのインタラクティブな遊びの核となっています。それはプレイヤーにとって直接的で影響力のある方法でゲーム環境に影響を与える手段を提供し、ゲーム体験の核心的な部分を形成しています。
「2Dマリオ」から「3Dマリオ」への進化
ここまで2Dの『スーパーマリオ』シリーズが持つ「ゲームを面白くする技術」について解説してきました。次に、いよいよ「3Dゲームを面白くする技術」に迫ってみましょう。その前に、『スーパーマリオ』シリーズが3Dへ移行する際の重要な転換点となった作品を紹介します。
スーパーマリオブラザーズ
このゲームはファミコンで発売された初の『スーパーマリオブラザーズ』で、世界中で大ヒットし、横スクロールジャンプアクションの名作となりました。「ゴール」は常に画面の右方向に設定されており、「官能性」と「リスクとリターン」を存分に体験できる魅力がこのゲームにはありました。
スーパーマリオ64
Nintendo 64で発売された初の3Dマリオゲームで、3Dグラフィックを使用してマリオの世界を「箱庭」の形で再現しました。2Dマリオに見られたゴールポールはなくなり、ゴールの目的がボスを倒したり、特定の条件をクリアしたりと多様化しました。また、「探索」を重視した広大なフィールドを自由に遊び尽くすゲームに進化しました。3D化に伴い、「しゃがむ」操作が十字ボタンの「下」から「しゃがむボタン(このゲームではトリガーボタン)」へと変更されました。
スーパーマリオギャラクシー
Wiiで発売されたこの3Dマリオゲームは、ステージを『スーパーマリオ64』の「箱庭」から球形の「星」へと変化させました。前作とは異なり、限られたフィールドである「小さな星」を一つずつ探索し、迷うことなく小気味良いテンポでステージをクリアする楽しさを提供しました。
これらの進化を通じて、『スーパーマリオ』シリーズは2Dから3Dへと変貌を遂げ、「遊びやすさ」を追求し続けました。しかし、多くのプレイヤーにとっては「3Dゲームは2Dゲームより難しい」と感じられがちです。これについて、任天堂の岩田社長は「社長が訊く『スーパーマリオ 3Dランド』」で次のように述べています。
「確かに、『2Dマリオは遊ぶけれど、3Dマリオは遊ばない』と言い切る方もいます。私が『ギャラクシー2』の際に『はじめてDVD』を同梱する提案をしたのは、3Dマリオに慣れ親しんだ人とそうでない人との間に大きな差があり、触る前から『3Dマリオは私には無理』と感じる方が多かったためです。」
さらに、『スーパーマリオ 3Dランド』の開発キーワードが「3Dマリオのリセット」とされており、このゲームは、2Dマリオを楽しんでいた人々もすぐに3Dマリオを楽しめるように、「3Dゲームが遊びやすくなる技術」と「3Dゲームを面白くする技術」を豊富に取り入れています。
このテキストは「2Dマリオ」と「3Dマリオ」の違いと、それぞれのゲームの操作性の変化や設計思想を詳しく説明していますが、少し構造を整理することで、より一層の理解を促すことができます。ここでは、テキストの流れを整理し、技術的な詳細をより明確に伝えるための改善案を示します。
2Dと3Dの違い
「2Dマリオ」と「3Dマリオ」の違い
「2Dマリオ」と「3Dマリオ」のゲームプレイの違いは、操作性とゲームのダイナミクスに大きな変化をもたらしました。『スーパーマリオ 3D ランド』は、Nintedo 3DSで発売され、全世界で900万本以上を売り上げる大ヒットとなりました。このゲームでは「走って、跳んで、踏んづける」というマリオシリーズの核心的な楽しさを3Dの世界で体験することができます。
このゲームでは、伝統的な「ゴールポスト」が復活し、2Dの『スーパーマリオブラザーズ』における原点回帰が図られました。しかし、3Dマリオならではの「探索要素」もしっかりと組み込まれ、プレイヤーは2Dマリオの感覚で3Dマリオの面白さを体験できます。操作はスライドパッドでの「移動」、A・Bボタンでの「ジャンプ」、X・Yボタンでの「Bダッシュ」、L・Rボタンでの「しゃがむ」といったシンプルな方法が採用されています。
3Dマリオの操作性の調整
2Dの『スーパーマリオブラザーズ』では、マリオの移動アクションに慣性がありましたが、3Dになった『スーパーマリオ 3D ランド』ではこの慣性が排除されています。プレイヤーはスライドパッドから手を離すとマリオが即座に停止します。この変更は、3D視点による距離感の認識が難しくなるため、操作の難易度を抑える狙いがあります。
カメラと視覚の調整
3Dゲームではカメラの角度によって距離感が変わり、これが操作の難しさを増す要因となります。『スーパーマリオ 3D ランド』ではこの問題に対処するため、カメラの撮り方を「横」「上」「斜め」の3パターンに限定し、マリオの移動は16方向に限定されています。これにより、カメラ角度と移動角度が一致し、2Dゲームのような直感的な操作感を実現しています。
新しい操作性の導入とアクションの拡充
『スーパーマリオ 3D ランド』では、ジャンプ中の方向転換も可能となり、プレイヤーはより多くのアクションを楽しむことができます。さらに、Nintendo 3DSの3D機能を活用することで、より正確な
距離感を得ることが可能となっています。また、ゲーム初心者向けには操作が容易な「タヌキマリオ」が用意され、より幅広いユーザーにアクセス可能なゲームデザインが施されています。
これらの変更は、「3Dゲームをおもしろくする技術」の一環として、プレイヤーに新しいが遊びやすい3Dゲーム体験を提供することを目的としています。
まとめ: 「2Dマリオ」と「3Dマリオ」から学ぶゲームデザインの魅力
『スーパーマリオブラザーズ』と『スーパーマリオ 3D ランド』を通じて、2Dと3Dゲームの面白さの本質とプレイヤーを引き込む工夫を垣間見ることができました。以下にその要点を挙げます:
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官能性とエンゲージメント:
ゲームがプレイヤーに提供する官能的な体験は、単なる操作の快適さだけでなく、運動する喜びや、自然体での行動の自由を刺激します。『スーパーマリオブラザーズ』での走る楽しさは、まさにこの官能性をゲーム内で再現しています。 -
リスクとリターン:
ゲーム内のチャレンジが提供するリスクとリターンは、ゲームの引き込み力を高める重要な要素です。プレイヤーが成功したときの達成感は、このバランスによって大きく左右されます。 -
アクションとリアクション:
プレイヤーのアクションに対する直接的なリアクションは、ゲーム体験を直感的で満足感のあるものにします。連続的かつ連鎖的に設計されたゲーム内のフックは、プレイヤーが更に探求しようとする動機を与えます。 -
感情の共感:
ゲーム開発者がプレイヤーに伝えたいと考える感情や気持ちは、ゲームデザインを通じて形作られます。『スーパーマリオ』シリーズでは、この「走る喜び」がゲーム体験全体を通して感じられるよう工夫されています。 -
ゲーム外でのコミュニケーションの拡張:
宮本茂氏が示唆するように、ゲームは単にプレイするだけでなく、その体験を他の人と共有することでさらに価値が増します。『スーパーマリオ 3D ランド』のようなゲームは、内部だけでなく外部のコミュニティ形成にも貢献しています。
これらの要素は、『スーパーマリオ』が長年にわたり愛され続ける理由を示すとともに、他のエンターテインメント形態と共通する普遍的な魅力を持っています。ゲームデザイナーは、これらの原理を理解し応用することで、プレイヤーに長く愛される作品を創出することができるでしょう。
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