登壇が怖いエンジニアへ。社内勉強会から最初の一歩を引き出しやすくする3つのコツ
tl;dr
- 準備しなくていい:資料いらずで気軽に始める。
- ネタがないを救う:毎日のチェックアウトで話題の芽を拾い、公開ニーズとして次回へつなぐ。
- 領域を限定しない:フロントもバックもDBもAIも線引きしない。課題に向き合い、必要なスキルを身につけて解決するチームを目指す。
はじめに
登壇が怖い。自分なんかまだ早い。ネタもない。
最初の一歩の壁は、越えた後には小さく見えるのに、越えるまではとても大きい。これは自分にも何度もあった感覚です。
Dr.’s Primeの社内勉強会「Alchemy」は、2025年10月で110回目。現在は隔週で続いており、名前や形は少しずつ変えながらも、守っているコンセプトは変えずに運営しています。この記事では、「最初の一歩が出せない」人に向けて、Alchemyで実際に効いた3つのコツを共有します。運営の工夫が必要な点もありますが、これらの前提があるだけでハードルは確実に下がるはずです。
1. 準備しなくていい
目的は「立派な発表」ではなく、開発に活かせる知見を気軽に共有すること。創設当初からの核となるコンセプトです。「準備しなくていい」を徹底すると心理的な負担が薄くなり、参加・登壇の意思決定が軽くなります。だから隔週のリズムで回り続けました。
発表内容は自由
開発に関することであれば何でもOK。気になって調査した技術、読んでいる技術書のメモ、いまの業務で詰まったポイントの整理など、途中経過でも歓迎です。
頑張らない
スライドは作らなくてよい。Notionに簡単なメモでOK。資料がなくても発表できます。良かったZennの記事やブログをその場で見ながら共有するのも続けやすい方法です。
時間がない時は、slackのスレッドでの議論をClaudeに要約させて、そのスレッドを共有して発表するなど新しい形式が生まれました🎉
Trend news を冒頭に
前回から今回までのニュースを数本だけ共有します。直近はAIの論文や良まとめのURLを貼ることが多く、1分で終わる軽い共有もあります。最初に話しやすい空気をつくる助走として機能しています。
Agent経由でTrend Newsを今後用意したいですが、現状は個々人のキャッチアップをもとにAIでサマリして共有しています!
2. ネタがないを救う
「何を話せばいいかわからない」は誰にでもあると思います。その問題を個人の問題にしないことが大切でした。日常の振り返りから話題を見つけ、需要があるところにスポットを当てることで、ネタ切れによる詰まりはかなり減ります。
チェックアウト(夕会)で拾い上げる
毎日のチェックアウトで、今日の目標に対してどうだったかを共有する時間を設けています。今は全員一緒に行なっています。その後、各チームでの振り返りも行い、技術的な伸びしろ・学んだこと・できなかったことを言語化する時間を取っています。
そう言った場での共有の中で、別チームのメンバーが報告した話を聞いて「それAlchemyで聞きたい」「なんでなんだっけ?」といった公開ニーズが出てくるので拾い上げてみると、そこから次回の話題候補が生まれます。
期待を伴って“ネタになりそう”と指名されると、不完全でも整理して臨みやすい。当日の質問から新しい学びが生まれるのも良い点です。
また、ネタがないと思っていても、発表に慣れているメンバーから見るとネタになるということは良くあると思います。繋げ方とか視点を変えると意外とネタになることは日常に数多く転がっています。
周りのメンバーからそれネタになるよ!という話があれば、視点が増え自分でもネタを見つけやすくなると思っており、まずは周りのメンバーからのきっかけを与えるのは良い方法だと感じています。
チェックアウトから発表ニーズに育った実例
- クリーンアーキテクチャや責任分離:プロジェクトに入る中で理解しにくかった点をチェックアウトで共有→「どう分離しているか」を議論→周囲にも展開できた良い回。
- Hasuraのマイグレーション挙動:すでにマージするとCIの中でマイグレーションを行う仕組みを構築しているが、それがどう動いているかを改めて調査して共有→運用理解が揃い、チームの解像度が上がった。
- Claude Codeのslash commandやsubagent:一部メンバーの実験共有がきっかけとなり、周囲でも試す動きが広がって生産性が向上。
得意領域に応じたトレンドから
メンバーそれぞれ得意分野があリます。そこで、登壇に慣れていない、ネタがないと言うメンバーには、得意領域の最新トピックをきっかけに小さく始めてもらいます。
- 新バージョンや変更が出たらまずリンク共有
- キャッチアップ → 短い登壇 → その場のQ&Aという自然な導線を用意する。
最近の例:Go 1.25
「Goを追っていると思うし、1.25が出たからここから何か見てみたら?」と声をかけたところ、現在の業務に関連したslogを使ったロガー移行をコンパクトにまとめて共有してくれました。得意×最新の起点があるだけで、ネタ出しの負荷が下がり、最初の一歩が出やすくなるという良い事例でした。
3. 領域に線引きしない姿勢
Alchemyでは領域に線引きしない勉強会として運営しています。フロントエンドもバックエンドも、DBもAIも、なんでも共有の対象にしています。扱う技術領域をあえて限定しないことで、チームとして「目の前のことに向き合い、必要なスキルを身につけて解決する」スタイルを育てたいと考えています。
この姿勢は技術広報でも同じ。特定領域に閉じず、課題解決ドリブンで横断するチームであることを社内外に伝えていきます。
外部発信が怖い気持ちと、まずは賞賛から
最近読んだ 技術広報の教科書 に書かれていた、次の指摘には大きくうなずきました。
- すでにまとまったテックブログが世の中にある
- ほかの企業が当たり前に取り組んでいる技術でインパクトが出ない
- 同じテーマでよりレベルの高い事例を見たことがある
自分もこの感覚があり、外に出すことが怖くなる瞬間があります。社内勉強会を運営していても「これはみんな知っているから出すほどでもないのでは?」とネタを抱え込んでしまうことがありました。
それでも、やってみて全然説明できなくて新たに学ぶこともあり、話している中で新たな発見が生まれることもあります。
まずは肩肘張らずにやることが大切だという言葉に背中を押されました。発表を聞く側もまずは賞賛から始め、質問しやすい空気をつくる。Alchemyは、そのための練習の場にもなっています。
勉強会で気軽に始めてネタをもらいながら話すことは、外部登壇やテックブログにつながる良いステップになるはずです。ハードルを下げてまずはやってみる、自分なりの経験を少し付け足す、感想でも良いので添える。たったこれだけでも、実際に得た学びを外に開く第一歩になります。
「さぁやってみよう」これはドクターズプライムのカルチャーの一つですが、まずは気軽な一歩を踏み出すことが何よりも難しいのでそこを超えやすくするアイディアの共有でした!
まとめ
今回は人前で発表・登壇することが怖いと感じているエンジニア向けに、少しでもハードルを下げて一歩踏み出してみるためのアイディアを書いてみました!
チーム内で勉強会を開催しようとされている方も、もし発表してくれる人がいないという悩みがある場合はぜひどれか一つでも試してみてください!!
-
準備しなくていい
スライド不要、Notionに簡単メモ、資料なし発表もOK。冒頭にTrend newsなど話しやすいネタを入れて始める。 -
ネタがないを救う
毎日のチェックアウトから話題を拾い、公開ニーズとして次回へつなぐ。 -
線引きしない
フロントエンド,バックエンド,DB,AIなどなんでも共有。課題に向き合い、必要なスキルを身につけて解決するチームを目指す。
Discussion