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もっとも小さなプロジェクトの価値について考えてみた
プロジェクトMVC(Minimum Viable Creation)フレームワーク
基本概念
プロダクトMVP vs プロジェクトMVC
- プロダクトMVP: ユーザー体験(UX)に焦点を当てた最小価値の製品
- プロジェクトMVC: 持続可能性とリスク回避に焦点を当てた最小価値のプロジェクト
プロジェクトMVCの価値定義
「このやり方で今後も進めることで大きく問題が起きることがない」
回避すべき「大きな問題」
1. コストが見積もれなくなる・肥大化する
- 見積もり精度の低下
- 機能追加や変更によるコスト影響の予測困難
- スケール時の予測可能性の欠如
2. 予定期間を超過するタスクが潜在化
- 隠れたタスクやブロッカーの存在
- 依存関係や外部要因による遅延
- チームの実際の開発速度の把握不足
3. エンジニアの習熟度が低い
- 新技術や新手法への適応度不足
- スキルギャップの見積もり困難
- 学習コストや教育期間の予測困難
フレームワークの実行プロセス
Discovery Phase(発見フェーズ)
期間: 要件定義のフィードバック開始〜設計の見通しが立つまで(約1ヶ月)
検証項目:
- 要件の曖昧さの露呈
- 技術選択の妥当性
- 設計アプローチの現実性
- チームの作業リズムとコミュニケーション
重要な問い:
- プロジェクトの大小に関わらず、このタイミングが適切か?
- 要件定義から設計への移行で何が見えてくるか?
- チームの実際の開発ベロシティは予想と合っているか?
Diagnosis Phase(診断フェーズ)
検証: 理想との乖離の検知
乖離のパターン:
- 理想が立っていない(共通認識の欠如)
- 既にルールがおざなりになっている(規律の問題)
- ズレを感じているが言い出せていない(コミュニケーションの問題)
重要な問い:
- 何をもって「理想との乖離」と判断するのか?
- 1ヶ月でルールが破綻するなら、長期プロジェクトではどうなるか?
- チーム内の心理的安全性は確保されているか?
Deliberation Phase(熟議フェーズ)
手法: ブレストによる問題解決
参加者: 有識者 + 内部ステークホルダー
目的: 多角的視点での問題の本質把握と解決策の検討
有識者を含める意味:
- 技術的な問題なのか、プロセスの問題なのか、要件の問題なのかを切り分け
- 過去の類似事例からの学習
- 客観的な視点での現状評価
内部ステークホルダーを含める意味:
- 「ズレを感じているが言い出せない」状況の解消
- 理想の再定義や優先順位の調整
- 現場の実情と経営層の期待のギャップを埋める
重要な問い:
- このタイミングでのブレストが最も効果的か?
- 参加者のバランスは適切か?
- 問題の本質を見極められているか?
Dedication Phase(集中取組フェーズ)
期間: 1週間以内
目的: リソース整理の集中実行
整理対象:
- 力量・教育:現在のスキルレベルと必要なレベルのギャップを明確化
- ルール:形骸化したルールの実情に合わせた再設計
- マネジメントコスト:現在の管理工数の適切性見直し
- 技術リソース:インフラ、ツール、ライブラリの必要水準検証
判断基準: この1週間が計画に沿うか
重要な問い:
- なぜ1週間という期間が適切なのか?
- 短期間の計画すら守れない場合の含意は?
- リソース整理の優先順位はどう決めるべきか?
- この期間の成果で何を判断すべきか?
Decision Phase(決定フェーズ)
選択肢の判断
計画に沿った場合
→ 本格プロジェクトへ移行
「このチーム・このやり方で大きなプロジェクトも進められる」という自信と根拠を獲得
計画に沿わなかった場合
判定: 健全なプロジェクトとならない
選択肢:
- コスト・予定等を超過させてもやる
- 一度計画を見直す(推奨)
見直しの制約と方針:
- 体制変更は困難なことが多い
- 「出来る事に絞る」アプローチを採用
- プロダクトMVPとの照らし合わせが必要
重要な問い:
- なぜ「見直し」が推奨されるのか?
- 体制変更が困難な場合の現実的な選択肢は?
- プロダクトMVPとプロジェクトMVCのバランスをどう取るか?
- 「出来る事に絞る」際の優先順位付けの基準は?
判断の基準と指標
マネジメント vs 力量の天秤
基本認識: そこはマネジメントと力量の天秤
判断要素: 不足度合いの定量化
- マネジメント不足:進捗管理、品質管理、コミュニケーション
- 力量不足:技術スキル、ドメイン知識、開発プロセス習熟度
- その他要素の不足:ツール、インフラ、ドキュメント、外部連携
手法: KPTによるリスク許容度の判断
- Keep:現状維持できる部分の確実性
- Problem:不足による具体的な影響度と発生確率
- Try:改善施策の実現可能性とコスト
重要な問い:
- マネジメント重視か力量向上重視かをどう判断するか?
- 短期的な成果と長期的な能力向上のバランスは?
- リスク許容度を定量的に判断する具体的方法は?
コスト算出の重要性
基本認識: プロジェクトは人件費がメイン
算出項目:
- 教育・研修にかかる時間とリソース
- ツールやインフラの導入・整備費用
- マネジメント体制強化のための人的コスト
- 品質向上のための追加作業量
ステークホルダーへの提示:
- 「今投資するコスト」vs「後で問題が発生した時のコスト」の比較
- 複数の改善案のコストパフォーマンス比較
- 具体的な人月数での投資判断材料の提供
重要な問い:
- 人件費の算出で最も誤差が生じやすい部分は?
- コスト算出の精度をどう向上させるか?
- ステークホルダーが判断しやすい形での提示方法は?
成果による測定
基本方針: 厳し目に判断するなら成果。なので測定になる
成果測定の価値:
- 技術選択や個人のスキルに関わらず、実際に「何ができたか」で判断
- 言い訳や理由よりも、具体的な成果物での評価
- ステークホルダーにとって最も分かりやすい指標
指標の考え方:
- 指標はリスクの塊
- フォーカスを絞るが確定はしない
- 結果からステークホルダーに評価をもらう
測定における柔軟性:
- 単一の指標では実態を把握しきれない
- プロジェクトの性質や組織の状況に応じて重要な指標が変わる
- 事前に指標を確定すると、その指標に最適化してしまうリスク
重要な問い:
- 成果の測定で最も重要視すべき指標は?
- 指標の選択肢をどう準備すべきか?
- 「結果からの評価」で何を最も重視すべきか?
- 測定していない領域での問題発生をどう防ぐか?
第三者機関の必要性
プロジェクトコンサルの役割
必要性: ステークホルダーは最終決定者だが正しいとは限らない
ステークホルダー判断の限界:
- 技術的な複雑さや将来的なリスクの理解不足
- 短期的な成果重視で長期的な持続可能性を軽視
- 政治的・感情的要因による判断の歪み
プロジェクトコンサルの機能:
- 技術的妥当性と事業価値の客観的評価
- 複数のプロジェクト経験からの類似事例やリスクパターン提供
- ステークホルダーと開発チーム間の建設的議論促進
内部 vs 外部の選択
判断要因:
- DXの成熟度
- プロジェクトMVCの理解度
成熟度による選択:
- 成熟度が低い組織:外部コンサルが客観的視点と専門知識を提供
- 成熟度が高い組織:内部人材の組織理解の深さを活用
段階的アプローチ:
- 最初は外部コンサルで導入
- 徐々に内部人材に移行
重要な問い:
- 組織のDX成熟度をどう判断するか?
- プロジェクトMVCの理解度の測定方法は?
- 内部と外部のハイブリッド構成は有効か?
現状認識と今後の課題
現状の課題認識
体感と根拠の関係:
- 多くの組織でプロジェクト管理に課題があるという体感
- しかし、それを裏付ける統計的根拠が不足
- プロジェクト成功のための書籍が多数存在することから、問題の存在が推測される
データ収集の必要性
収集すべき統計:
- プロジェクト失敗率(予算超過、期間超過、中止など)
- コスト超過の平均的な割合
- 期間超過の頻度と期間
- 要件変更の発生率と影響度
データ収集の課題:
- 組織にとってセンシティブな情報
- 一晩で済むものではない長期的な取り組み
- 様々なアプローチの組み合わせが必要
データ収集のアプローチ案:
- 既存の調査・レポートの活用
- 小規模からの測定開始
- 間接的な指標の利用
- 匿名性を担保した調査
体系化の重要性
目的:
- 再現性の確保:考えをまとめて一貫した実践を可能にする
- 目的のブレ防止:データ収集や実践の方向性を明確化
- 組織学習の促進:成功パターンの蓄積と共有
重要な問い:
- この体系化で見落としている重要な要素はないか?
- 実際の現場適用での課題は何が予想されるか?
- 継続的な改善と進化をどう組み込むか?
フレームワーク適用時の重要な考慮事項
技術の確実さと個人の素養
見える化の重要性:
- 技術選択の妥当性の実測
- 個人の学習速度や適応能力の把握
- 予定と実績の乖離要因の分析
対応策:
- 短期間での現実露出
- データとしての蓄積
- 次回の見積もり精度向上
組織固有の制約への対応
制約の例:
- 予算制限
- 人事制度
- 既存システムとの連携要求
- 法規制やコンプライアンス要求
対応方針:
- 制約を前提とした現実的な計画
- 段階的な改善アプローチ
- ステークホルダーとの継続的な対話
重要な問い:
- 組織固有の制約をどう事前に洗い出すか?
- 制約の中での最適解をどう見つけるか?
- 制約自体を変更する可能性をどう評価するか?
Discussion