エンジニアと非エンジニアの感覚の違い - 知らなさそうなPC概念集
はじめに
エンジニアには「当たり前」でも、一般ユーザーには「え、そうなの?」という概念がたくさんあります。ここでは、両者の感覚の違いを表でまとめました。
ファイル・データの概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| ファイルの削除 |
削除ボタンを押したら消える |
ゴミ箱に移動しただけ、実データは残存 |
| コピー vs 移動 |
どちらもファイルを別の場所に置く |
コピー=複製を作る、移動=場所を変える |
| ファイルサイズ |
表示される数字が実際のサイズ |
クラスター単位で管理、実使用量は異なる |
| 同名ファイル |
同じ名前は1つだけ |
拡張子が違えば同名でもOK |
| ファイル名の文字数制限 |
長い名前でも大丈夫 |
OS毎に制限あり、使えない文字も存在 |
| 隠しファイル |
見えないファイルは存在しない |
システムファイルは意図的に非表示 |
| ファイルの実体 |
フォルダの中に入っている |
インデックスで場所を管理、物理的には断片化 |
| バックアップ |
コピーと同じ |
定期的・自動的・差分管理が前提 |
メモリ・ストレージの概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| メモリとストレージ |
どちらも「保存する場所」 |
メモリ=作業机、ストレージ=本棚 |
| メモリ不足 |
容量が足りない |
RAM不足、ストレージ容量とは無関係 |
| アプリの動作が重い |
パソコンが古いから |
CPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワークの複合要因 |
| SSDとHDD |
どちらも同じ保存装置 |
仕組みが全く違う(半導体 vs 磁気ディスク) |
| 仮想メモリ |
そんなものは無い |
ディスクを仮想的にメモリとして使用 |
| キャッシュ |
よく分からない |
高速化のための一時保存領域 |
ソフトウェア・プログラムの概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| アプリのインストール |
アプリをパソコンに入れる |
ファイル群をコピー+レジストリ登録+関連付け |
| プログラムの実行 |
ダブルクリックで動く |
OSがファイルを読み込みメモリに展開、CPUが実行 |
| アップデート |
新機能が追加される |
バグ修正、セキュリティパッチ、機能追加の複合 |
| 32bit vs 64bit |
数字が大きい方が良い |
メモリアクセス可能量とCPU命令セットが違う |
| ドライバー |
よく分からない |
ハードウェアとOSの通訳プログラム |
| プロセス |
起動しているアプリ |
1つのアプリが複数プロセスを持つ場合もある |
| サービス |
そんなものは無い |
バックグラウンドで常駐する機能プログラム |
| ライブラリ |
図書館? |
プログラムが共通で使う機能部品集 |
ネットワーク・インターネット概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| Wi-Fi接続 |
インターネットに繋がる |
ルーターに接続、インターネットは別問題 |
| ブラウザ |
インターネットそのもの |
Webページを表示するアプリケーション |
| URLとファイルパス |
全然違うもの |
どちらも「場所を示すアドレス」 |
| クラウド |
雲の中にデータがある |
他社のサーバー(コンピュータ)にデータ保存 |
| オフライン |
ネット接続が無い状態 |
一部機能は手元で動作可能 |
| IPアドレス |
聞いたことない |
インターネット上の住所、全デバイスに必須 |
| DNS |
知らない |
URLを実際のサーバー場所に変換する仕組み |
| SSL/HTTPS |
鍵マークがあると安全 |
通信内容を暗号化する技術 |
セキュリティ・プライバシー概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| パスワード保存 |
文字そのまま保存 |
ハッシュ化して保存、元には戻せない |
| ウイルス対策ソフト |
入れれば安全 |
完璧ではない、定期更新と行動が重要 |
| 無料アプリ |
本当に無料 |
広告収入、データ販売、アップセル前提 |
| プライベートモード |
完全に秘匿 |
ブラウザが履歴を残さないだけ |
| クッキー |
お菓子 |
Webサイトがブラウザに保存する情報 |
| 二段階認証 |
面倒な手続き |
セキュリティを大幅に向上させる仕組み |
| 暗号化 |
難しい技術 |
情報を第三者に読めない形に変換 |
ハードウェア・物理概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| CPU |
パソコンの頭脳 |
計算処理装置、「判断」はしない |
| GPU |
ゲーム用 |
並列計算が得意、AI処理でも活用 |
| パソコンの構成 |
1つの機械 |
CPU、メモリ、ストレージ等の組み合わせ |
| USB差込口 |
USBはどれも同じ |
Type-A、Type-B、Type-C、Micro-USB等形状・規格が多種 |
| USB規格 |
新しい方が良い |
USB2.0/3.0/3.1等で転送速度が大幅に違う |
| ケーブルの向き |
差せなかったら逆向き |
USB-Aは上下あり、USB-Cは上下なし |
| Thunderbolt |
USB-Cと同じ |
USB-Cの形だが40Gbps、外部GPU接続も可能 |
| HDMI |
テレビとつなぐやつ |
映像・音声のデジタル伝送規格、バージョンで性能差 |
| 電源ケーブル |
どれも同じ |
電圧・極性・ワット数で互換性が決まる |
| ハードディスク |
保存装置 |
物理的な磁気ディスクが高速回転 |
| SSD vs HDD |
どちらも保存装置 |
半導体 vs 磁気、速度・寿命・価格が大幅に違う |
| 電源 |
コンセントから電気 |
交流を直流に変換、各パーツに適切な電圧供給 |
| 冷却ファン |
熱を逃がす |
CPU温度制御、性能に直結 |
| マザーボード |
基盤 |
全パーツを接続する神経系統 |
| 無線LAN |
Wi-Fi |
IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax等の規格で速度・距離が違う |
| Bluetooth |
無線でつながる |
バージョンで消費電力・音質・接続安定性が大幅に違う |
システム・OS概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| OS |
Windows等の画面 |
ハードウェアを抽象化する基盤ソフト |
| レジストリ |
知らない |
Windowsの設定情報データベース |
| パス(PATH) |
フォルダの場所 |
ファイル・フォルダの絶対的な住所表記 |
| 環境変数 |
存在しない |
OSが管理するシステム設定値 |
| ユーザー権限 |
自分のパソコンなのに制限? |
セキュリティとシステム保護のための階層管理 |
| カーネル |
聞いたことない |
OSの中核部分、ハードウェア直接制御 |
| シェル |
貝? |
ユーザーとOSの間のインターフェース |
接続・ケーブル・規格概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| USBの種類 |
USBはUSB |
Type-A(角型)、Type-B(四角)、Type-C(楕円)、Micro等 |
| USB規格番号 |
数字が大きければ新しい |
USB2.0(480Mbps)、USB3.0(5Gbps)、USB3.1(10Gbps) |
| ケーブルと端子 |
繋がれば同じ |
ケーブル自体にも規格あり、端子だけでは判断不可 |
| 電源ケーブル |
同じ形なら使い回せる |
電圧(5V/12V/19V等)、極性、ワット数で互換性決まる |
| Thunderbolt |
USB-Cの一種? |
見た目同じでも40Gbps、外部GPU・モニター直結可能 |
| Lightning |
iPhoneの充電ケーブル |
Apple独自規格、USB-Cとは非互換 |
| HDMI |
テレビに繋ぐケーブル |
バージョン1.4/2.0/2.1で4K/8K対応が違う |
| 有線LAN |
インターネットケーブル |
カテゴリ5e/6/6a等で最大通信速度が10倍以上違う |
| 音声ジャック |
イヤホン穴 |
3.5mm/2.5mm、3極/4極で機能が違う |
| 充電器のワット数 |
大きい方が良い |
デバイス側の対応W数を超えても早くならない |
| ケーブルの長さ制限 |
長くても同じ |
USB、HDMIは距離で信号劣化、規格ごとに限界あり |
| 双方向対応 |
どちら向きでもOK |
USB-Cは双方向、USB-Aは片方向のみ |
| 急速充電 |
充電器の性能 |
デバイス・ケーブル・充電器の3つが対応してる場合のみ |
| データと電源 |
別々のもの |
1本のUSBケーブルでデータ転送と充電を同時実行 |
| ワイヤレス充電 |
置くだけで充電 |
Qi規格、位置ズレで充電効率大幅低下 |
規格・互換性概念
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| 下位互換性 |
新しいものは古いものも使える |
必ずしもそうではない、規格による |
| 変換アダプタ |
形を合わせるだけ |
信号変換が必要な場合、単純接続では動作しない |
| 充電専用ケーブル |
安いケーブル |
データ転送用配線が省略されている |
| MFi認証 |
よく分からない刻印 |
Apple公式認証、非対応品は突然使えなくなる可能性 |
| PD対応 |
急速充電対応 |
Power Delivery、最大100Wまでの電力供給規格 |
| オス・メス端子 |
形状の違い |
接続の方向性、挿す側(オス)受ける側(メス) |
| アナログ vs デジタル |
昔と今の違い |
信号の種類、変換無しでは繋がらない |
| 項目 |
非エンジニアの感覚 |
実際の仕組み・エンジニアの感覚 |
| デジタルデータ |
コピーすると劣化 |
完全複製可能、劣化は圧縮方式による |
| 文字コード |
文字は文字 |
Shift-JIS、UTF-8等の規格でバイナリ化 |
| 圧縮 |
ファイルを小さくする |
情報理論に基づく冗長性除去 |
| バイナリデータ |
01の羅列? |
全デジタルデータの根本的表現方法 |
| データベース |
Excel的なもの |
効率的なデータ保存・検索・更新の仕組み |
| API |
知らない |
アプリケーション間でデータをやり取りする窓口 |
| ログ |
記録 |
システムの動作履歴、トラブル解析に必須 |
データ・情報概念
これらの概念の違いを理解することで、パソコンをより深く理解し、エンジニア的思考に近づけます。重要なのは「表面的な操作」から「仕組みの理解」へとシフトすることです。
Discussion