AWS Summit Japan 2025会場でAWS Executive Briefing Centerに参加してきた
はじめに
こんにちは!ディップ株式会社の佐藤克洋と申します。
第一バイトル開発部の部長をしている他、プロダクトのインフラSREや社内システム関連部署、福岡のエンジニア拠点立ち上げなど、エンジニア組織の何でも屋をやっています。
だいぶ時間が経ってしまいました(理由は後ほど)が、2025年7月に開催されたAWS Summit Japan 2025の会場で、AWS Executive Briefing Center(以下:EBC)に参加してきましたので、その体験談をお届けします。
AWS Executive Briefing Centerとは
AWS Executive Briefing Centerは、AWSのエグゼクティブやソリューションアーキテクトが、顧客(今回は弊社ですね)のビジネス課題や技術的な課題について深く掘り下げて議論する場です。
我々の具体的な課題に対して、AWSの最新のサービスやベストプラクティスを提案してもらえる貴重な機会です。また、AWSのロードマップや新機能についても事前に情報を得ることができるため、今後の技術戦略の策定にも役立ちます。
参加のきっかけ
今回のEBCについてはAWS様から幾つかテーマを頂きまして、「AI-Driven Development Lifecycle (AI-DLC)」というテーマのセッションに参加いたしました。
私は特に、AIを活用した開発プロセスについて、開発組織にどのように浸透させていくか、悩んでいたので、これは解決の糸口が見つかるかもと思い、藁にも縋る思いでマッハで参加の挙手をしました!
またAWS EBCは通常、目黒のオフィスで実施されるようですが、AWS Summit Japanということで、スペシャリストがいらっしゃるので、せっかくなのでSummit会場で参加させていただきました。
事前準備
1時間と限られた時間で成果を持ち帰られるよう、以下のような質問を予め用意していきました。
質問 1. 技術進化への追随
- 技術が急速に進化していく中、AIコーディングツール(Cursor, Copilot, Amazon Q Developer他)をどのように選定するべきか迷いがあります。選定をするうえで考えると良い事等をお聞きしたいです。
質問 2. スキルや取り組みの差
- 実践しているメンバーと、取り組めていないメンバーとの間にAIコーディングスキルや理解の差が生じています。この差を埋め、全体に浸透させる為にどのような取り組みが有効かお聞きしたいです。
AWS EBC当日。それはAWS Summitの特別な場所。
AWS EBCは幕張メッセの国際会議場の部屋で行われました。ちょっと特別感があって嬉しいですね!
AWS様からはいつもお世話になっているお二人と、スペシャリスト三名、通訳の方、dipからはAI駆動開発に興味がある六名が参加し、それぞれ自己紹介のあと、早速質問をぶつけていきました。
技術的な議論
まずは AI-Driven Development Lifecycle (AI-DLC) について解説いただきました。
AI-DLCとは一言でいうと、以下のような感じです。
-
AIが開発プロセスを、計画、タスクの分解、アーキテクチャの提案などを通じて制御
-
開発者は検証、意思決定、監督の最終的な責任を保持
ふんふん思わず流してしまいそうですが、「AIが開発プロセスを制御」 というのが、ショッキングでした。
AIコーディングとか、そんな次元ではないってことです。
AIが開発プロセスそのものをコントロールしていく世界です。
誤解を恐れずに言えば・・・・人間はAIにコントロールされる側ってことです!
人間がAIに従って何を作るか決めていく・・・
おれはAIに指示してプロダクトを作らせていたと思ったら、いつのまにかAIに指示されて作らされていた…
な…何を言ってるのか(
今年で人間はコードを書かなくなった!AIが書くんだ!と思ったら、実は、AIの指示で動く立場になってたということですね!\(^o^)/
この意味を実感することになるのは、この説明を受けてから数週間後だったのでした・・・。
このあと、dip側で用意した質問にも、気持ちよくスパッと回答いただけました。
質問 1.
- 技術が急速に進化していく中、AIコーディングツール(Cursor, Copilot, Amazon Q Developer他)をどのように選定するべきか迷いがあります。選定をするうえで考えると良い事等をお聞きしたいです。
回答: どのツール使っても良い。
→ 進化のスピードが早く、機能的にはすぐに横並びになる。どのツールを使うかは重要ではない。
質問 2.
- 実践しているメンバーと、取り組めていないメンバーとの間にAIコーディングスキルや理解の差が生じています。この差を埋め、全体に浸透させる為にどのような取り組みが有効かお聞きしたいです。
回答 : プロダクトに関わるチーム全員で、AIによる開発プロセスを一度体験すること。
一度体験してしまえば、あとはそのやり方を横展開すればよい。
以下のような流れでやっていく。
Mob Elaboration: 要件定義や設計段階でチーム全体が集まって議論し、共通理解を深める
Mob Programming: 複数の開発者が1つの画面を見ながら、リアルタイムでコードを書く
Mob Testing: テスト設計やテスト実行をチーム全体で行い、品質向上とスキル共有を同時に実現
特にAI-DLCでは、Mob Elaboration が重要。
これはエンジニアだけでなく、プロダクトオーナーも参加して、詰めていくことが重要。
この作業の質によって、AIがコンテキストを理解し、品質の高い成果物を出してくれると。
なおAI-DLCの実践へのアプローチとして、AWSではAI-DLC Unicorn Gymというプログラムも用意されているとのことで、我々も是非参加したいと思っています。
ちなみに、上記AWSスペシャリスト方々の説明は、基本全て英語でしたので、通訳を挿んでの会話となりました。
私はなんとか言っていることは聞き取れましたが、自分から会話することができず、ちょっと悔しい思いをしましたね・・・スピーキング頑張らないと!
同席していた弊社CTOは、ペラペラ会話できていてカッコよかったです!
得られた学び
私としては、毎週のように新しいツールや進化が出てくる中、組織としてどのツールを選定すべきか・・・なんてこともかなり悩んでいたのですが、頂いたアドバイスでその悩みはなくなりました。
以降、dipでは、一旦Cursorを開発者の標準として配布しています。
(もちろんClaude Code他、併用して使っています)
そして組織への浸透のさせ方。
早速、一部のプロジェクトでは、シニアとジュニアを混ぜて、Mob Programming、Mob Testingを開始しています。
今後控えているプロジェクトでは、順次Mob Elaborationも始めていきます。
そして今(EBCから1ヶ月後)・・・
AWS Summitから一ヶ月経過しましたが、その間も相変わらずツールの進化が著しいですね!
AWSからは、kiroが登場しました。
Spec-driven Development(仕様駆動開発) モードが装備され、「要件定義 → 設計 → タスクに分解」という、AIにも(人間にも?)詳細なコンテキストを理解させたうえで、AIが迷子になりにくく、精度の高い成果物が得られる、開発ワークフローがツールに組み込まれています。
今までは、AIコーディングを始める際に、このスタート地点でも現場毎のナレッジがあったりして、右往左往しやすいところでしたが、今後は統一感のある進め方ができそうですね。
私も実際に使用してみて、kiroが作り出す要求定義の質の高さに、自分自身が今まで作ってきたそれが、如何にいい加減なものだったのかと思い知らされます・・・もう何一つ勝てる気がしません・・・
このkiroをきっかけに、どのAIコーディングツールでも、このような開発スタイルがデファクトになっていきそうですね!
・・・・
って、これはEBCで説明を受けた、AI-DLCのまんまですね!
まさしくkiroは、AI-DLCの中心となるツールでしょう。
kiroがプロダクト開発のレールを敷いてくれる、人間はAIの指示に従って、検証、意思決定、監督していく。
これが本当のシンギュラリティか・・・
・・・・ってことで、kiroを触ってみて、AWS SummitでのEBCを振り返らなければと思い、筆を執った次第ですw
まとめ
AWS Summit Japan 2025でのEBC参加を通じて、AI開発の組織浸透について大きな学びを得ることができました。
技術選定の悩みが解決されたこと、Mob手法による組織浸透のアプローチ、そしてAWS kiroの登場でEBCでのアドバイスが実証されたこと、どれも非常に価値のある体験でした。
来年以降もAI開発ツールの進化は続くと思いますが、今回のEBCで得た知見を活かして、dipの開発組織をより良い方向に導いていきたいと思います。
↓EBCでもらったステッカー
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