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ダイニーが Prettier のスポンサーになりました!

2024/07/05に公開

こんにちは、ダイニーで VP of Technology を務めている karszawa です。本日は、ダイニーが開始した Prettier という OSS への寄付(スポンサー)について説明したいと思います。

dinii - Open Collective

これまでのダイニーでの寄付

ダイニーは2018年に創業したスタートアップで、複数の投資家からのエクイティ調達を経て成長していきました。まだ上場はしておらず、誰がどう見ても投資フェイズにある企業です。

そんなダイニーが OSS への寄付を開始したのは2022年4月からです。初めて寄付をしたのは NestJS という OSS で、今も昔も Node.js ワールドでサービスを開発しているダイニーにとって NestJS は最も重要なフレームワークと言えます。

今現在も NestJS への寄付は継続しており、気づけば NestJS への寄付ランキング(組織)でダイニーが10位にランクインしていました!

当時の経緯についてはこちらのブログもご覧ください。

dinii が NestJS のスポンサーになりました|karszawa

なぜ OSS への寄付を実施するのか

過去のブログからの引用になりますが、考え方は当時とは全く変わっていないのでそのまま引用します。

そんな dinii にとって超重要な Node.js のエコシステムに対して、実は dinii は一切の利益を還元していません。React の Facebook にも Next.js の Vercel にも TypeScript の Microsoft にも一切の対価も支払っていないのです。よしんば Facebook, Vercel, Microsoft は dinii より遥かに規模の大きい会社なのでまあ良し(良いのか?)としても、dinii が使っている技術はそれだけではありません。

具体的にはサーバーサイドの NestJS, TypeORM やツール周りの Prettier, ESLint は dinii でも非常に重要な OSS ですが、それらはインターネット上で集まった有志によって開発されており、それらに対して dinii は一切何の対価も支払っていません。一方的に利用するだけのフリーライド状態になってしまっています。

最近では OSS の開発者が開発を継続できないといったメッセージを発信していたり、OSS に悪意のあるコードが混入してしまったりといった事件が発生しています。もし OSS 開発者にそれを阻止するのに十分なインセンティブがあればそういった出来事は防げたかもしれません。

以上のような道義的責任、事業継続に対するリスク管理という観点から dinii では OSS に対する寄付を開始することにしました。

この文章は2022年に書かれたものですが、実は当時から Prettier にも言及しています。

とはいえ営利企業として…

ダイニーは株式会社です。株式会社の至上命題は投資家の資金を利用してビジネスを拡大するということです。今回の寄付に関しても、元をたどれば投資家の資金というものを利用するからには、ビジネス上の利益を出さなければなりません。

上述のように、利用している OSS が安定的に運営されること自体が我々にとっての利益というのは間違いないのですが、今回の寄付と Prettier の継続的開発の因果関係を明示するのはやや難易度が高いです。

そこで、私がダイニーの利益としてアピールしたいのは、企業広報としての効果です。ダイニーの開発組織は拡大を続けており、今後も継続的にメンバーを増員していく予定です。そこで大きなハードルとなるのが、エンジニアコミュニティでの認知です。ダイニーはまだまだ無名の弱小スタートアップなので、採用市場で出会うエンジニアに認知されていません。認知されていないから応募も少なく、採用はエージェントに頼り切り、かつ内定受諾率にも伸びしろがあります。そういった課題を解決する手段として、OSS への寄付(スポンサー)を利用したいと考えています。

そんなわけで、今回の Prettier への寄付を通じてダイニーのエンジニアコミュニティでの認知度が高まることを期待しています。

今回の寄付の経緯

今回の寄付のきっかけは、Prettier のメンテナーである sosuke さんによる次の投稿です。

https://twitter.com/__sosukesuzuki/status/1805614549347058034

このように、メンテナーの方が分かりやすく発信してくれているため、この事象に対するエンジニアコミュニティの関心を社内に伝えるのも容易でした。寄付をする企業の立場に立ってみると、このような発信は非常に助かりますし、あらゆる OSS のメンテナーが積極的にこういった発信をするべきだと思います。

この発信をベースとして社内稟議を実施し、今回の寄付を実施できることになりました。

OSS への寄付のすゝめ

営利企業云々という話をしましたが、エンジニアとして生計を立てている身としては、その生業を成立させている OSS へ何かを還元したいという気持ちも重要です。

そういった気持ちと企業としての体裁を両立させるため、社内に向けても OSS への寄付の重要性を発信しています。

具体的には下記のような項目を伝えています。

  • その OSS がどれだけ重要か
    • そもそも何に使っているものなのか
    • それが無ければどれだけのコストを追加で支払っていたか
    • それが無くなると移行にはどれだけのコストがかかるか
  • 事例
    • 他社の事例 → 会社の規模感と寄付の規模感
    • 自社の事例 → 仮に OSS でなくとも、広報目的でやっているものであれば何でも良い
  • 寄付の手段
    • 実際問題として、どういった事務手続きが必要なのか
      • 経理上の処理が難しければ寄付の実施は不可能です
      • 逆に、まずは経理から説得してみるというのも面白いですね
  • なぜ今なのか
    • 採用に注力している時期的な要因
    • その OSS が「今」困っているという状況

ポイントとしては、非エンジニアのメンバーにとっては OSS という概念自体が新鮮なものである可能性が高いため、そういった前提の説明からきっちり行うことだと思います。間違っても「これは道義的に当たり前のことだからやる」といったエンジニアカルチャーの押しつけはいけません。

まとめ

繰り返しになりますが、今回の寄付の目的として、企業広報効果という要素は非常に大きなものです。この記事を読んでその信念に共感して頂けるのであれば、ぜひ拡散にもご協力いただけると嬉しいです。それによって寄付の効果が増大すれば、その分だけ金額を増額することもでき、それにより OSS の持続性も高まります。

更に強く共感したという方は、ぜひこちらのブログを自社で共有し OSS への寄付にチャレンジしてみてください。ダイニーは弱小スタートアップではありますが、少額でも寄付を実施しています。あなたの会社でも実施できるはずです。実際、企業規模が小さいほど寄付の効果は大きい気もします。寄付の金額が10倍になっても広報効果が10倍とは言えないからです。スタートアップの皆さん、今がチャンスです。

更に更に共感したという方は、ぜひ個人でも OSS への寄付を実施してみましょう。稟議も無いし簡単です。私も、個人的に GitHub と OpenCollective で6件の OSS へ寄付を行っています。金額の多寡はあまり関係ないと思います。仕事で OSS を利用しているエンジニアが今よりもっと気軽に寄付を実施するようになれば、OSS コミュニティの継続性は飛躍的に高まります。もっとカジュアルに寄付しちゃいましょう!

最後に

この記事をきっかけにエンジニア採用が決まれば、今回の投資(寄付)は余裕でペイできることになります。ダイニーという企業に興味を持っていただけたのであれば、ぜひカジュアルにお話しましょう。

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