AWS MCPで効率的にCDKプロジェクトをレビューする方法

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AWS CDKを使ったインフラ開発において、ベストプラクティスに従うことは欠かせません。しかし、日々進化するAWSの最新情報を把握し、適切な判断を下すことは容易ではありません。この記事では、AWS MCP を活用してCDKプロジェクトのレビューを効率化する方法をご紹介します。思いもよらない改善点や、知らなかった便利なツールが見つかるかもしれません。

はじめに

「自分のAWS CDKコードは本当に最適なのだろうか?」
「AWSベストプラクティスに沿ったコードになっているだろうか?」
「知らないだけで、もっと効率の良い実装方法があるのでは?」

このような疑問を持つ開発者は少なくありません。AWS MCP は膨大なAWS公式ドキュメントやベストプラクティスの知識を基に、こうした疑問に答えてくれます。従来の同僚レビューでは気づけなかった視点や、最新のAWS機能についての提案も得られることが特徴的です。

AWS の MCP にレビューを依頼する方法

AWS は複数種類・ユースケースの MCP サーバーを提供しています。今回のような CDK リソースのレビューを依頼する場合は、 AWS CDK MCP Server を利用します。

https://github.com/awslabs/mcp/blob/main/src/cdk-mcp-server/README.md

Dockerを利用する方法であれば、uvを利用したパッケージのインストールや、そのためのPython実行環境の整備も不要です。

  {
    "mcpServers": {
      "awslabs.cdk-mcp-server": {
        "command": "docker",
        "args": [
          "run",
          "--rm",
          "--interactive",
          "--env",
          "FASTMCP_LOG_LEVEL=ERROR",
          "awslabs/cdk-mcp-server:latest"
        ],
        "env": {},
        "disabled": false,
        "autoApprove": []
      }
    }
  }

この MCP サーバーを Claude Desktop や Cursor に登録した状態で、CDK テンプレートを添付し、レビューを依頼してみましょう。

MCP サーバーが正しく登録されていれば、レビューが始まります。

MCPによるレビューから得られる価値

実際のCDKプロジェクトをMCPでレビューしたところ、様々なフィードバックを得ることができました。いくつか具体例をご紹介します。

Well-Architectedフレームワークをベースとした構成へのアドバイス

MCPからはまず次のようなレビューコメントがありました。

「SNSトピックにサーバーサイド暗号化が適用されていません。AWS Well-Architectedフレームワークのセキュリティの柱によれば、保存データの暗号化は欠かせないベストプラクティスとされています。KMSキーを使った暗号化を取り入れてはどうでしょうか。また、非HTTPS通信を明示的に拒否するポリシーが見当たらないため、暗号化されていない通信でデータが送信されるリスクがあります。」

Well-Architectedフレームワークに則った実装かどうかのレビューまでしてもらえるのは正直意外でした。このレベルでレビューしてもらえるのであれば、CIワークフローかレビュープロセスに入れてみてもいいのでは?とまで思えてしまいます。

設計への追加提案

このほかにも、MCPはデッドレターキュー(DLQ)の追加なども提案してくれます。ここでは EventBridge から SNS へのルールを設定していましたが、次のような提案をもらいました。

「イベント処理の信頼性を高めるなら、デッドレターキュー(DLQ)の追加を検討してみてはどうでしょうか。StripeイベントからSNSへの配信に失敗した場合、メッセージは失われてしまいますが、DLQを設定すれば失敗したメッセージを保持でき、後で分析や再処理が可能になります。AWS公式ドキュメントでも、この方法がイベント駆動型アーキテクチャのベストプラクティスとして推奨されています。」

なかなか意識して設計しないと漏れやすい機能だと思いますが、このようにレビューコメントがあることで、「なるほど、こんなこともできるのか」という気づきや AWS への理解に繋がりそうです。

便利なAWSツールの紹介

MCPからは既存のツールやライブラリについての提案もあります。Solutions Constructsについても、「これを使えばもっとシンプルにできますよ」という提案がありました。

「AWSが提供するSolutions Constructsライブラリを使えば、EventBridgeとSNSの連携がもっとシンプルになります。aws-eventbridge-snsパターンを採用することで、コード量を減らしながらセキュリティのベストプラクティスが自動的に適用されます。このライブラリには、様々な一般的なAWSサービスの組み合わせに対応したパターンが用意されているため、開発効率と品質の両方を高められるでしょう。」

ただしSolutions Constructsについては、追加で機能要望を出すにつれて「そんな機能・パラメータは存在しないよ」という TypeScript の型エラーに遭遇しやすくなっていました。この辺りは CDK MCP の管轄・知識領域外に踏み出さない範囲で使いこなす必要があるかもしれません。

モニタリングの設定アドバイス

MCPは実装だけでなく、運用面についても提言してくれます。

「EventBridgeルールのパフォーマンスを監視するなら、CloudWatchアラームの設定がお勧めです。特に'ThrottledRules'メトリクスを見ておくと、スロットリングが発生した場合に早めに気づけます。AWS EventBridgeのベストプラクティスドキュメントによると、ルールのスロットリングは予想外のイベントバックログや請求額の増加につながることがあります。」

開発だけでなく、その後の運用まで見据えた提案をしてくれることは貴重です。実装時には見落としがちな観点ですが、本番運用では重要になる部分といえます。

セキュリティ検証ツールの紹介

セキュリティ面でも役立つツールを紹介してくれることがあります。

「CDK Nagというツールを使えば、セキュリティのベストプラクティスに準拠しているかを自動的にチェックできます。これはAWSが推奨するセキュリティチェックを網羅した静的解析ツールで、デプロイ前に潜在的なセキュリティ問題を見つけることができます。例えば、AwsSolutions-SNS3ルールを使えば、SNSトピックがHTTPSのみを許可するように設定されているかを確認できます。」

セキュリティチェックを自動化するためのツールまで紹介してもらえることは、開発者にとって大きな助けになります。

効果的なMCPレビュー依頼のコツ

このように AWS CDK の MCP を活用することで、AWS の設計から CDK の利活用まで幅広い範囲・視点からレビューを受けることができます。このようなMCPからより価値のあるレビューを得るには、依頼方法が重要です。ここからは、レビュー依頼を出す際の実践的なアプローチをご紹介します。

レビュー依頼の組み立て方

効果的なレビュー依頼を作るためには、以下の要素を含めると良いでしょう。

まず、プロジェクトの目的を明確に説明することが大切です。何のために作られたコードなのかをMCPに理解してもらうことで、より的確なアドバイスが得られます。次に、特に不安や確認したいポイントを具体的に伝えましょう。「セキュリティ面で問題ないか」「コスト最適化の余地はないか」といった観点を示すと良いでしょう。また、使用している主要なAWSサービスについても言及しておくと、それらに関連する詳しいアドバイスを引き出せます。例えば「このプロジェクトではEventBridge、SNS、IAMを使用しています」といった情報があると参考になります。

こうした情報を明確に伝えることで、より具体的で有用なアドバイスを得ることができます。

レビュー依頼の実例

「このAWS CDKプロジェクトは、Stripeのサブスクリプションイベントを受け取り、SNSで通知する機能を実装しています。AWS MCPの力を借りて包括的なレビューをお願いしたいのですが、特に以下の点に注目していただけますか:

1. セキュリティのベストプラクティスに則しているか
2. もっと効率的な実装方法はないか
3. 信頼性を高めるための追加設定のアイデア
4. 私が知らないかもしれないAWS機能やツールの提案

このプロジェクトでは主にEventBridge、SNS、IAMを使っています。」

このように具体的な依頼をすることで、焦点を絞ったフィードバックが得やすくなります。曖昧な質問よりも、具体的な懸念点を示した方が良いアドバイスを引き出せることが多いようです。

フォローアップ質問で深掘りする

レビュー結果に対して、さらに詳しく知りたい場合は、フォローアップ質問も効果的です。

「AWS Solutions Constructsについて興味深い提案をありがとうございます。このライブラリを使う際の注意点や制限事項はありますか?また、私たちのユースケースで特に役立ちそうなパターンをいくつか教えていただけますか?」

最初のレビューで気になったポイントを深掘りすることで、より実用的な知識を得ることができます。このように対話を重ねることで、理解をさらに深めることができるでしょう。

MCPレビューを最大限活用するために

レビュー依頼を分割して、各観点に特化したレビューを依頼すると、より深い洞察が得られることがあります。

例えば、セキュリティに特化したレビューを依頼する場合は、「このCDKプロジェクトのセキュリティ面での弱点を重点的に見てほしい」と伝えます。また、コスト最適化に特化したレビューでは「運用コストを削減できる余地はないか」と尋ねるといいでしょう。運用効率に特化したレビューでは「監視や障害検知の仕組みを改善するアイデアはないか」といった質問が効果的です。

このように焦点を絞ることで、それぞれの分野でより専門的なアドバイスを引き出すことができます。一度に全ての観点を網羅しようとするより、段階的にレビューを依頼する方が良い結果につながることも多いようです。

未知の領域を探検する

「私が知らないかもしれないこのプロジェクトに役立つAWSツールやサービスはありますか?」といった質問をしてみることも有益です。思いもよらない発見があるかもしれません。新しい知識との出会いは、開発者としての成長につながります。

MCPは膨大なAWS公式ドキュメントの知識を持っているため、自分では気づかなかった選択肢を提示してくれることがあります。特に新しいサービスや機能については、情報を追いきれていないことも多いものです。こうした未知の領域を探索することで、プロジェクトの可能性が広がるでしょう。

継続的なフィードバックループを作る

レビュー → 改善 → 再レビューというサイクルを回すことで、継続的な学習と改善が可能になります。一度きりのレビューで終わらせず、改善後に再度レビューを依頼することで、さらなる気づきが得られることがあります。

最初のレビューで指摘された問題を修正した後、「前回の指摘事項を修正しました。他に改善点はありますか?」と尋ねることで、より高いレベルのアドバイスを得られることもあるでしょう。このようなフィードバックループは、プロジェクトの品質を段階的に高めていくのに役立ちます。

チーム全体で学びを共有する

MCPのレビュー結果をチーム内で共有し、ディスカッションすることで、チーム全体のAWS知識を底上げすることができます。「今日はこんな発見があった」と共有する文化を作ることも大切です。

例えば、毎週のチームミーティングでMCPから得た新しい知見を共有する時間を設けるといった取り組みも効果的でしょう。個人の学びをチーム全体の財産にすることで、組織としての技術力向上につながります。

レビュー後の知識共有と標準化

MCPからのフィードバックは、一度きりのアドバイスで終わらせるのではなく、チーム全体の長期的な成長につなげていくことが重要です。

知識ベースの構築として、頻出するレビューコメントをWikiなどにまとめておくと良いでしょう。同じ問題が繰り返し指摘されないよう、チーム内で共有することが大切です。

また、良い実装パターンをテンプレート化して再利用しやすくすることも効果的です。MCPの提案に基づいて作成した実装を、次のプロジェクトでも活用できるようにしておくと便利です。

開発者が自己レビューできるチェックリストを整備することも有用です。MCPからの指摘事項を基に、コードをコミットする前にチェックするべき項目をリスト化しておくと、問題を未然に防ぐことができます。

さらに、こうした取り組みを通じて、組織内のAWS CDK開発標準を作り上げていくことができます。MCPの知見を取り入れた独自のベストプラクティス集を作成することで、より品質の高い開発が可能になるでしょう。

まとめ

AWS MCPを活用したCDKプロジェクトのレビューには、様々なメリットがあります。

人間のレビューでは見落としがちな詳細まで指摘してくれるため、プロジェクトの盲点を発見できます。また、開発者が知らなかったAWSの機能やサービスを提案してくれるので、知識のギャップを埋める助けになります。常に最新のAWSベストプラクティスに基づいたアドバイスが得られる点も見逃せません。

レビュー結果から効率的にAWSの知識を習得できるため、学習のスピードも上がります。詳細な調査や情報収集にかかる時間を大幅に削減できるのも魅力の一つです。こうしたメリットをうまく活かせば、AWS CDKプロジェクトの品質向上につながるでしょう。

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