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LLMのAPI料金計算を理解する|コスト試算と最適化

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LLMのAPI料金計算を理解する

生成AIアプリ開発には、API利用料金(トークン課金) の把握は避けて通れません。
ユーザーが増えるほど請求額も比例して増加するため、プロダクト設計段階からコストを意識することが重要です。

本記事では、GPT-5を例に、

  1. トークンとは何か
  2. LLMAPIの課金構造の仕組み
  3. 実際の料金試算
  4. コストが膨らむ要因
  5. コスト最適化のベストプラクティス
    について解説します。

1. トークンとは

生成AIモデルは文字単位ではなく、「トークン(token)」 という単位で文章を処理します。
トークンとは、単語や記号、文字列の一部を分割した最小単位のことです。
以下は英語の場合と日本語を入力した場合のトークン数です。

英語の場合

→ [ "I", " love", " AI", "." ] → 4トークン

日本語の場合

→ [ "生成", "AI", "は", "便利", "です", "。" ] → 6トークン前後

一般的な目安として、

言語 1トークンあたりの文字数 備考
英語 約4文字 単語ごとに分割される傾向
日本語 約1〜2文字 文字ごとに分割される傾向

と言われており、同じ文章量でも日本語の方がトークン数が多く、トークン数が多いほどコストが高くなりやすいです。
正確なトークン数を調べたい場合には、以下のサイトにて確認するのがおすすめです!
https://platform.openai.com/tokenizer

2. LLM APIの課金構造を理解する

LLM(大規模言語モデル)では、APIコール毎に

  • 入力トークン(Input)
  • 出力トークン(Output)

の合計料にて課金が発生します。

またChatGPTやGeminiなど各モデルやバージョンによって性能や特徴が異なるため、それに応じて料金体系が異なります。各モデルのバージョン毎の料金は公式ウェブサイトにて確認できます。

OpenAI

https://platform.openai.com/docs/pricing

Gemini

https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing?hl=ja#gemini-2.5-flash-preview-tts

Claude

https://www.claude.com/pricing#api

以下はGPT−5の入力単価と出力単価です(金額は$単位)

モデル 入力単価(1M tokens) 出力単価(1M tokens)
GPT-5 $1.25 $10

※「1M tokens」は100万トークン単位を意味します。

3. LLMにてざっくりとコスト試算してみる

では具体的に生成AIアプリ開発にてどの程度コストがかかるかをシミュレーションしてみましょう。
シミュレーションする際には、LLMを活用するのも一つの手です。

ChatGPTに聞いてみる

以下のシナリオでモデルAPIのコスト試算を行ってください。
なお、モデルの単価は以下の通りです。

## モデル
- gpt-5
   - input:1.25ドル/100万トークン
   - output:10ドル/100万トークン
   
## シナリオ:1日100回の質問応答
- 平均入力:50トークン/回
- 平均出力:200トークン/回
- 使用モデル:GPT-5

## 出力
### 1日あたりの料金計算
### 1ヶ月(30日)あたりの料金

出力結果


LLMの場合は正確なコスト見積もりとならない場合もありますが、ざっくりとした試算を行う場合には有効なので一度開発前には試算すると良いと思います。

4. コストが膨らむ要因

上記のケースの場合はそこまで高額なコストとはなりませんでしたが、次のケースでは高額な金額となる可能性が高いです。

ケース コスト増加の要因
長文生成(例:レポートや記事出力) 出力トークンが数千単位に増加する
履歴つきチャット 全履歴が毎回「入力」として課金される
ストリーミング未使用 出力を一度に生成するため時間・トークン効率が悪化
翻訳・要約の連続処理 APIコール回数が多くなる

そのため、アプリ開発では要件定義にて 「本当に必要な機能なのか?」「どのくらいのユーザーが使用するのか」 などを詳細に確認することが重要です。

5.APIコスト最適化チェックリスト

生成AIモデルを活用したアプリ開発を行う際にチェックするべきポイントをまとめてみました。
アプリ開発の際にぜひ活用いただければと思います。

1. モデル設計段階

確認項目 内容
タスク特性に応じたモデル選定を行っているか 単純タスクは軽量モデル、複雑/創造的タスクは高性能モデルに振り分ける
適切なモデルルーティング設計を導入しているか タスクごとに最適モデルを呼び出すルーティング設計を行う
検索設定は適切な設計となっているか Embeddingコストを考慮したハイブリッド検索を設計
RAG(Retrieval-Augmented Generation)を導入しているか 外部知識を検索して最小限のコンテキストで回答
コストをプロダクト設計の指標に組み込んでいるか 1ユーザーあたりコストを設計段階で想定する
モデル単価・バージョン管理ができる仕組みになっているか 新モデル登場・価格改定時に切り替え可能な運用体制を整備

2. 実装・開発段階

確認項目 内容
トークン削減設計を意識したプロンプトになっているか 冗長な言い回し・不要な文脈を削除し、簡潔な指示を心がける
キャッシュを活用しているか 同一入力や定型質問は結果を保存して再利用(例:Helicone, PromptLayer)
出力をサマライズして再利用しているか 長文出力を毎回再生成せず、要約・埋め込みを保存して再利用
コンテキスト長を最小限に保っているか 過去履歴やナレッジを必要以上に毎回送信していないかを確認
ベクトル検索と全文検索のバランスを取っているか Embeddingコストを考慮し、ハイブリッド検索を採用
プロンプトテンプレートを変数化しているか 動的プロンプト生成で重複トークンを削減
出力トークンの上限を明示的に設定しているか max_tokens パラメータを適切に指定して過剰生成を防ぐ
応答停止条件を設定しているか 「ここまで」「〜以上は不要」など生成範囲を制御
評価用のプロンプトは分離できているか テスト・評価用プロンプトと本番用プロンプトは分離してコストを抑制
出力形式を明示しているか JSON・Markdown・テーブルなど必要形式を明示して無駄出力を防止
システムプロンプトは固定化しているか システム指示をキャッシュ化してリクエストサイズを削減

3. 運用・スケーリング段階

確認項目 内容
トークン消費を可視化・監視しているか LangSmithなどのツールと連携し、日次・ユーザー単位で使用量を記録し、グラフ化・分析
コスト上限アラートを設定しているか 1日または月次のAPI使用量に上限を設け、異常時に通知
スケール時のコスト予測を行っているか 呼び出し回数・ユーザー数の増加時にコスト見積もりを更新
モデル価格・性能を定期見直ししているか 価格改定・新モデル登場に合わせて最適モデルを再評価
安全性とコストのバランスを確認しているか ハルシネーション対策、偏りチェック、PII保護を含めた設計
不要なコンテキストは削除できているか 連続チャットの履歴長が膨張する前に切断や要約で削減

4. 評価・改善段階

確認項目 内容
トークンの消費を分析しているか 消費パターンを可視化し、最適な指標を策定
プロンプトが最適化かを評価しているか 定期的に生成結果を分析しプロンプトを改善
定期的に生成品質の評価をしているか 正確性・網羅性・安全性の観点から評価プロンプトを定義して定期的にチェック
コストと品質が見合っているか コスト削減と生成品質・安全性のバランスを定期的に見直す
必要に応じてモデルを切り替えているか 新モデルや更新モデルに対して影響を検証して適切に移行

まとめ

LLMアプリのコストは、

生成AI時代のエンジニアに求められるのは、性能だけでなく“コスト構造を設計できる力 です。
本チェックリストを参考に、継続的にAPIコストを最適化していきましょう。

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