最初の1冊として初学者にオススメする、合成開口レーダー(SAR)の本
↑ 画像が上手く表示されない、、泣
Thomas Ager「The Essentials of SAR: A Conceptual View of Synthetic Aperture Radar and Its Remarkable Capabilities」
最近、SARの記事などを書く機会が増えています。ただ、執筆していると理解が曖昧なことに気づいたり、用語の説明の仕方に悩んだりしています。そこで、SARを分かりやすく解説した本ないかなぁ~と改めて思い、最近購入したのが、こちらの一冊となります。
本書の感想
とにかく読みやすく、理解しやすいです。あまりにも分かりやすいので、読むのにハマってしまい、1週間程度で読み終えるほどでした。
本書の良い点として、以下が挙げられます。
- SARの入り口として理解すべき内容が包括的に書かれている。
- 難しい数式がなく、あっても理解に時間がかからない。
- 図が多用されているので、直感的に理解できる部分が多い
本書でカバーしている範囲として、以下が挙げられます。
- 波長とマイクロ波
- カメラの仕組み(=光学画像)とSARの仕組みの対比
- SAR衛星の観測の仕組み
- SAR画像の見方・解釈
- SAR画像の基礎的な解析手法
- 信号とノイズの発生源と背景
- ジオコーディングとジオリファレンスの仕組み
- アンビギュイティ
- サブアパチャー
個人的に特に良いと思った点は、ジオコーディングとサブアパチャーの解説です。
ジオコーディングでいうと、これまでに納得感をもって理解できた説明を見たことがないです。例えば、国土地理院のウェブサイトで記載されているジオコーディングの説明は、以下のようになっています。
ジオコード
上記過程ではSAR衛星によって得られたレーダー座標系で解析を行っていますが、地球物理学的な解析を行うに当たっては、実際の地表の座標系に変換します。
SARを勉強し始めた時だと、なんとなく理解できるけれども、完全には腑に落ちない説明になっていると思います(少なくとも私はそうでした)。他にも、ジオコーディングとジオリファレンスって、結局何が違うの?とか色々と疑問が生じる人って多いと思います。
そうしたSARであるあるの疑問点(ジオコーディング以外でも)を、図を用いて分かりやすく解説してくれているのが本書となります。
そして、嬉しいことにサブアパチャーについても分かりやすく解説してくれています。最近、サブアパチャーを使った動画やカラー画像が、SAR衛星事業者から販売されるようになったり、SNSで発信され始めています。
そうした比較的新しいトレンドについても取り扱ってくれているのは、SAR初学者にとっては非常に役立つものだと思いました。とりあえず、これ1冊読めば、SARの基礎から応用までを一通りキャッチアップできる形です。
最後に
ただ、これ1冊で、SARについて深い知識を持てるかというと、そのレベルではないです。あくまでもSARを学び始める第一歩としての本となります。SARをより深く学びたい場合には、大内本や島田本といった本を読むことは必然になります。
↑ 大内和夫「リモートセンシングのための合成開口レーダの基礎 」
↑ 島田政信「合成開口レーダによる高精度な地球観測の原理と実際」
これまでSARを学ぶ時には、大内本や島田本を読むように言われて泣かされている人が多くいる泣く、、、なんて話もあったりなかったりですが、今回紹介した本というのは、そうした人たちにとって涙が出るほど嬉しい本になっているはずです。
ということで、SARについてこれから学んでいきたいという方は、まずはこの本を手に取ることをオススメします。ただ、洋書のため、英語を読むことに抵抗ないことが前提となりますが、、、
あと、少し宣伝にはなりますが、宇宙メディアの宙畑でSARに関する記事を共同で執筆しています。これらの記事も初学者向けに書いているつもりではいるので、英語に抵抗があったり、まずは日本語で学んでみたいという方は、ぜひご覧ください。
SARの面白さに気付き、のめり込んでもらえると、嬉しいです!!
質問等ありましたら、気軽にコメントください。
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