Numerai Crypto Metamodel を利用したトレードの検証
はじめに
Botter Advent Calender (裏) 13日目の記事です。
筆が進まず26日公開になってしまいました。
deraというものです。普段は大学のラボで限界ポスドクをしています。
この記事では、Numerai Crytpo Metamodelの予測値を実際にトレードに用いた場合どうなるかを雑に検証してみます。(Numerai知らなくても読めます。)
Numerai Crytpoとは
Numeraiは、仮想通貨NMRをstakeして4週間後の株式市場の予測を行い、その結果に応じてNMRを掘れるプラットフォームです。運営はstake量に応じて提出された予測結果を統合し(=メタモデル)、このメタモデルを元にファンド運用を行っています。2024年9月30日報告のファンドAUMは$375Mとのことで、一時期爆損していましたが最近は調子がよさそうです。(Kei Sanadaさんのブログより引用)
Numeraiの詳細については以下のUKIさんの記事が有名です。
Numeraiの予測対象は基本的には全世界の株式市場の銘柄ですが、今年5月に仮想通貨の予測を行うNumerai Cryptoが試験的に始まりました。これまでの株式市場の予測(Tournament, Signals)とは異なり、Numerai Cryptoではメタモデルがリアルタイムで公開されています。
つまり、NMR Staker (データサイエンティストかつ草コイナーというレアな人々) がひねり出した予測値を参考に実際にトレードを行うことができます。メタモデルの成績は予測対象銘柄の30日リターンと予測値の順位相関係数(CORR)として確認することができます。
右肩上がりでとんでもなく優秀に見えます。CORRが高いということは、各予測対象銘柄の30日リターンの順位を正確に予測できているということなので、予測値を用いてトレードしたら利益が出そうな気がします。
ということでCEX(bybit)での取引を念頭に、メタモデルの予測値を用いてCORRではなくPnLベースのバックテストしてみます。
取引の基本ルール
メタモデルの予測結果は、以下のように0から1の数値からなります。
Numeraiのファンド運用では、メタモデルの予測値について上位X銘柄をロング、下位X銘柄をショートするマーケットニュートラル戦略が採用されており、今回もそれに倣います。つまり仮に上の図の銘柄のみを対象として、X=3でポジションを組む場合、BTC,ETH,BNBをロングして、DOGE,XRP,ADAをショートすることになります。Numerai Cryptoでは30日後のリターンを予測しているので、ポジション保有期間は30日とします。(厳密には20D2L、20営業日と2日ラグと思われますがここでは単純化します)
手数料
Taker fee 往復分 (0.055%*2) とスリッページ (0.05%*2; bybitの板から適当多め見積もり) を手数料とします。Funding Rateも考慮すべきですが、基本的にどの銘柄も相場の加熱度に応じてFRの上下は連動しており、ロング/ショートではFRの支払い/受取りもニュートラルに近づくはずなので今回は考慮しません。(本当はめんどくさかったからです。FRはちゃんと考慮すべきです。)
銘柄選定
メタモデルの予測対象銘柄(universe)は、仮想通貨の時価総額上位500銘柄であり、以下の通りLSTやステーブルコインは除かれます。
500銘柄となると、低時価総額の銘柄は草コインもいいところなので無期限先物が存在せずショートを打つことができません。DEXやレンディングを活用すれば空売り可能な銘柄もあるはずですが、クロスマージンでロング/ショートを行うことで片側での取引よりもレバレッジを掛けることができるメリットが消えてしまうので、今回はbybitに無期限先物が存在する銘柄のみを対象とします。
bybitである程度出来高がある400銘柄と、メタモデル採用銘柄との重複を確認します。重複した銘柄が今回の取引対象銘柄です。
275銘柄が取引対象となるようです。
バックテスト
メタモデルの予測値が公開されており、かつ予測から30日が経過している期間は半年分(5月-11月)しかありませんが、バックテストを行ってみます。Numeraiの実運用では500銘柄中50銘柄ずつロング/ショートしていたはず(どこかで見た気がしますが間違っているかも)なので対象275銘柄でのロングショートの銘柄数は、とりあえず25銘柄ずつとしました。
クリプトに休日はありませんが、株の予測プラットフォームに準拠しているため土日はメタモデルの予測値が更新されません。30日の間に最低20回(平日日数)ポジションのopen/closeを行うため証拠金は20分割されリターンは20分の1になります。半年でだいたい+50%くらいでしょうか。勝率はかなり高いですがドローダウンも大きくレバレッジもかけられなさそうです。最近のバブル相場には乗れているようですが、9月あたりで当時pumpしていたREEF等を何度もショートして爆損しています。
当時pump銘柄はFRもおかしなことになっていた気がするので、30日もポジションを保有すると考えるとめんどくさがらずFRもちゃんと考慮すべきでした。FRも考慮した場合全然違う損益曲線になる可能性があります。
おわりに
CORRの右肩上がりっぷりを考えると微妙な結果です。現状のメタモデルはショートを打てない銘柄が多く存在することで実質虚無の順位予測となっており、高パフォーマンスに見えるCORRも虚無ということだと思います (それでもNMR掘れるからヨシ!)。また、今回の検証はメタモデルの活用としてマーケットニュートラル戦略を検証しましたが、ロング側だけ取引するバブルチンパンbotにも使えるかもしれません。
Numerai Cryptoは現状既存の株式市場の予測パイプラインがクリプト銘柄に転用されているだけなので、土日の予測もなく予測期間も長め(30日)です。実際に使えるメタモデルにするためには期間を短くするとか、予測対象を絞るとかした方が実用的かなと思います。そこまで運営にやる気があるかは分かりませんが。
それでは来年もよろしくお願いします。
来年の目標(隙自語)
個人的な話ですが来年の目標はクリプト卒業で、その先は起業を考えています。いわゆるディープテック系なので、今はクリプトでのお金稼ぎと並行して大学で特許を取るために研究をしています。ぼちぼち特許出願も開始しており、そろそろ本業専念の時期かなと思っています。ちなみに出願費用も自身のクリプト利益から出している(大学は貧しくて出してくれない)ので、なんやかんや研究が続けられるのはWeb3のおかげです。ありがとうWeb3。
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