2025年夏までの Google Cloud Compute Engine アップデートまとめ
2025年4月〜8月15日の Google Compute Engine 正式アップデート一覧
2025年も折り返しを過ぎ、Google Cloudでは Compute Engine を中心に数多くの新機能や改善が発表されました。特に「Google Cloud Next ’25(2025年4月・ラスベガス開催)」と「Google Cloud Next Tokyo ’25(2025年8月・東京開催)」では、大きな進化が披露されています。
今回は、8月15日時点までに公開された2025年中の Compute Engine および関連サービスの主な更新情報 を、新しい順にわかりやすく整理します。さらに、それぞれの機能が いつ発表されたのか、リリースノートを基に確認した発表日もあわせて紹介します。
初心者の方にも理解しやすいように、「この機能はどんな用途に便利なのか」という観点を交えながら解説していきます。
2025年4月
4月2日 – OS ポリシーオーケストレーターの一般提供
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概要 – VM Manager の「OS ポリシーオーケストレーター」機能が一般提供(GA)され、複数プロジェクトやゾーンにまたがって OS ポリシー設定を一括管理できるようになりました。これまでは単一ゾーンに限定されていましたが、大規模な組織でも統一した OS 設定を適用しやすくなりました。
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初心者向けポイント – VM Manager の OS ポリシーは、仮想マシンでソフトウェアが正しく設定されているか確認する仕組みです。これがプロジェクトやゾーンをまたいで管理できるため、大規模環境での作業が簡素化されます。
4月21日 – ソールテナンシー向け柔軟な CUDs が GA
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概要 – 専有ホストの料金に対しても柔軟な「Compute Flexible Committed Use Discounts (CUDs)」が適用可能になりました。CUDs は従来のように特定のリージョンやマシンシリーズに縛られることなく、使用量に応じて割引を受けられる契約です。
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初心者向けポイント – 専有ホスト(ソールテナンシー)は物理サーバーを占有するため料金が高めですが、柔軟な CUDs を利用すれば長期間利用する分を事前に購入してコストを抑えられます。
4月28日 – M4 新マシンタイプが GA
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概要 – 大容量メモリ向けに m4-megamem-28 および m4-ultramem-224 マシンタイプが一般提供となりました。
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初心者向けポイント – 新しい M4 タイプはメモリが多い処理に適しています。
2025年5月
5月12日 – CPU の脆弱性(CVE‑2024‑28956)公表
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概要 – Intel CPU の脆弱性 CVE‑2024‑28956 が報告され、Google は Shielded VM 対象の暫定対策を適用しました。
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初心者向けポイント – CPU の脆弱性は高度な権限を持つ攻撃者に悪用される可能性があるため、管理者はアップデートを適用しましょう。
5月13日 – 別の脆弱性(CVE‑2024‑45332)対策完了
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概要 – Intel CPU の脆弱性 CVE‑2024‑45332 に対する修正パッチが Compute Engine イメージに適用されました。
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初心者向けポイント – 使用している VM で自動更新を有効にしていない場合は、最新のセキュリティパッチを反映するために再起動などが必要です。
5月23日 – M4 6 TB マシンタイプ向けのリソースベース CUDs が GA
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概要 – 大容量メモリ M4 マシンタイプ(6 TiB メモリ)の使用量に応じたリソースベース CUDs が一般提供されました。定額割引でコスト最適化が可能です。
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初心者向けポイント – 事前に長期間利用分を購入することで、オンデマンドよりも料金を抑えられるため、大規模分析用途などに適用すると効果的です。
5月26日 – A3 Ultra マシンタイプが追加リージョンで GA
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概要 – GPU 集約型マシン A3 Ultra のうち、8 GPU のマシンタイプがヨーロッパ・アメリカ・アジアなど複数リージョンで GA となりました。さらに、4 GPU 版がソウルと東京リージョンで GA となりました。
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初心者向けポイント – 機械学習や HPC 向けに高い GPU 性能が必要な場合に利用します。日本リージョンでも提供開始されたため、国内ユーザーはレイテンシを抑えて利用できます。
2025年6月
6月6日 – Security Risk Overview ダッシュボードが GA
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概要 – 5月にプレビューされた Security Risk Overview ダッシュボードが一般提供となり、CVE リスク一覧を継続的に確認できるようになりました。
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初心者向けポイント – プレビュー利用者のフィードバックを基に安定した機能になり、本番環境でも安心して利用できます。
6月27日 – 外部 IPv6 アドレスのカスタム割り当てが GA
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概要 – VM にカスタム外部 IPv6 アドレスを割り当てられる機能が一般提供されました。
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初心者向けポイント – 独自のアドレス計画に基づき、指定した IPv6 アドレスを外部公開用に利用できるため、ネットワーク設計の柔軟性が向上します。
6月30日 – ディスクライセンスの変更機能が GA
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概要 – 永続ディスクのライセンスを追加・削除・置換できる機能が一般提供されました。データを維持したままライセンスを変更できるため、サードパーティソフトのライセンス調整が容易になりました。
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初心者向けポイント – 例えば Windows Server ライセンスを変更する場合でも、ディスクを再作成せずに済むためダウンタイムが減ります。
2025年7月
7月2日 – GPU 予約・Z3 小型マシンが GA
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概要 – Ultra GPU を搭載した A4/A3 マシンを将来予約できる機能が GA となりました。また、Z3 に小型の z3-standard-8/16/32/64、z3-highmem-8/16/32/64 マシンタイプが追加されました。
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初心者向けポイント – 事前に GPU VM を予約すると、必要な時期に確保しやすくなります。また、小型マシンタイプは開発・テスト用途向けにコスト効率が高くなります。
7月15日 – Flexible CUD の適用範囲拡大
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概要 – Flexible CUD が P4D、P4、A4、G4、Z3 および Hyperdisk Balanced / Extreme を利用する VM に対しても利用可能となりました。さらに、既存の CUD 契約から新モデルへの自動移行が翌年2月に予定されていることが告知されました。
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初心者向けポイント
CUD =確約利用割引 という、Compute Engine を利用する上でお得な割引プランが存在します。その中で大きく2種類のCUDに分けられます。
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従来の(リソースベースの)CUD
- 「東京にあるAタイプのサーバーを、1年間使います」と約束。
- もし途中で大阪やシンガポールで使いたくなったり、別のBタイプのサーバーが必要になっても、この割引は適用されません
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Flexible(コストベースの)CUD
- 「メーカー(Google Cloud)のサーバー全体で、合計〇〇円分を1年間使います」という、ざっくりとした金額の約束をします。
- これだけで、**どの場所(地域)**の、どのタイプのサーバーを使っても、自動的に割引が適用されます。
- 柔軟ですが、割引率は従来の CUD よりは少しだけ低くなります。
どちらも以前から存在していましたが、Flexible CUD は適用範囲が限定されていました。この時点で適用範囲が広がったことで、GPU や最新ディスクを使う VM でも割引が受けられます。自動移行により、ユーザーは契約を更新しなくても新しい割引体系を利用できる予定です。
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7月18日 – Hyperdisk ボリュームのスナップショット/クローンが GA
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概要 – Hyperdisk Balanced/Extreme ボリュームの即時スナップショットと標準スナップショットが一般提供となり、複数の VM で共有する Hyperdisk ボリュームからも利用可能になりました。
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初心者向けポイント – スナップショットはディスクのバックアップです。複数 VM で共有するディスクでも簡単に取得・複製できるようになり、データ保護が強化されます。
7月21日 – C4D ベアメタル 384 コアタイプが GA
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概要 – 384 vCPU の c4d-standard-384-metal、c4d-highcpu-384-metal、c4d-highmem-384-metal が一般提供となりました。
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初心者向けポイント – ベアメタルを利用することで仮想化によるオーバーヘッドがなくなり、ディスクアクセスが高速になります。AI/ML や HPC に適した構成です。
7月23日 – リージョナル永続ディスクのレプリケーション改善
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概要 – リージョナル永続ディスクの自動レプリケーションポイントが 1 日 1 回から 15 分ごとに短縮されました。
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初心者向けポイント – データ保護の更新頻度が上がり、障害発生時でもより直近のデータに復旧できます。
7月24日 – C4 で Hyperdisk Balanced HA が GA
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概要 – C4 シリーズ VM で Hyperdisk Balanced の高可用性 (HA) 構成が一般提供されました。
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初心者向けポイント – HA 構成はディスクの冗長性を高め、VM が障害に強くなります。C4 を使う本番環境で推奨されます。
7月25日 – Hyperdisk Extreme のリージョン展開および Balanced ボリュームのリサイズ制限緩和
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概要 – Hyperdisk Extreme が新たに欧米・アジアなど複数リージョンで利用可能になりました。また Hyperdisk Balanced のボリュームリサイズについて、以前は 4 時間に 1 回のみでしたが 4 時間で 2 回まで可能になりました。
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初心者向けポイント – データベースなど高 IO 要求のワークロードをより多くのリージョンで利用でき、またサイズ変更の柔軟性が向上しています。
7月30日 – C4 新機種が GA
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概要 – Xeon 6 プロセッサを搭載した C4 インスタンスが一般提供になりました。c4-standard-4~c4-standard-64、c4-highmem-4~c4-highmem-64、c4-highcpu-4~c4-highcpu-64 の各種が利用可能です。さらに、ハイメモリベアメタル z3-highmem-64-metal と z3-highmem-256-metal も GA となりました。
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初心者向けポイント – Xeon 6 によりパフォーマンスが向上し、幅広い vCPU / メモリ構成を選択できます。
2025年8月
8月5日 – Hyperdisk Throughput パフォーマンス向上/Z3 ハイメモリベアメタル GA/コンテナスタートアップ エージェント非推奨
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概要 – Hyperdisk Throughput のパフォーマンスが高速化され、スループットが最大 40 % 向上しました。Z3 ハイメモリベアメタル z3-highmem-192-metal が GA となり、コンテナスタートアップ エージェントが非推奨になりました。
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初心者向けポイント – Throughput はディスクがデータを連続送信できる速度です。今回の改善により、大量データのバッチ処理や分析の高速化が期待できます。
コンテナスタートアップ エージェントは以前推奨されていた方法ですが、今後廃止される可能性があるため代替手段を検討しましょう。
8月11日 – Hyperdisk ML ボリューム共有拡張
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概要 – Hyperdisk ML ボリュームを 128 インスタンスまで接続できるようになりました。
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初心者向けポイント – Hyperdisk ML ボリューム共有拡張により、複数の VM から同一データセットに効率よくアクセスできます。
8月13日 – License Manager が GA
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概要 – 4月にプレビューだった License Manager がひっそりと一般提供になりました。
自社ライセンスや(間違えを削除)サードパーティライセンスの在庫管理が本番環境で利用できます。(Google Workspace や その関連ライセンスを管理する Enterprise License Manager (API) とは別物です) -
初心者向けポイント – 私の中で大ニュース(というかやっと!)だったので、是非紹介したい「License Manager」の一般提供です。
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Windowsサーバー上で稼働する**サードパーティ製ソフトウェアのライセンスを一元管理できる仕組み**です。
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License Managerを使うと必要な分だけを割り当てたり、利用状況を可視化等出来るようになります。
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注意事項としては、製品毎にリージョン単位で1つの License Manager までの制限がありますので、大規模な組織(特にグループ全体で包括管理を考えていた場合)では配慮が必要になります。
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Microsoft Office は、現状「LTSC 2021 Professional Plus」のみとなります。 ※RDS SALも期待したい!
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現状で提供とされているリージョンに日本(東京、大阪)が入っていません。これは強く要望しております。
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これまで、Google Cloud 上の VDI 環境で Microsoft Office を利用する際は、SPLA (Microsoft Services Provider License Agreement) 形態としてサービスプロバイダーのサービス提供された Office Pro Plus が利用できましたが、2025年10月からはこちらも Microsoft 社の規約によりできなくなります。すべてのシーンでの代替策となるかは不明ですが、License Manager がその一つとなりえます。
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まとめ
2025年4月から8月15日までの期間、Compute Engine では新しいマシンタイプの追加、柔軟な料金体系の拡大、セキュリティ機能の改善、ディスク性能の向上、サードパーティライセンス管理など多くのアップデートが行われました。これにより、ハイパフォーマンスな計算やデータ処理がより効率的かつ安全に実行できる環境が整っています。日本リージョンの拡充も進んでおり、国内ユーザーにとってもメリットが大きい時期でした。
参照元
https://cloud-dot-devsite-v2-prod.appspot.com/compute/docs/release-notes
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