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アイデンティティ形成

同化と同一化の違い
- 心理学でいう「同化」とは「有機体が外界の物質を取り込み吸収して、自分の性質に適したようにこれを変化させる」こと。
- ピアジュの同化: 外界の物質を取り込むの意だけでなく、取り込む主語としてのシェマ、目的語としての環境までを内包する。同化の概念は前後の文脈を内包して取り込むこと、と定義される。
- 同一化: バーゾンスキーの定義
-ヒトが社会的な人となる学習過程を射程においた概念。- 同じ社会の中でもある特定の社会的・文化的な様式を内在化させた人として発達するための過程。
- 他者と出会いそれと退治するときに主体は自己を一旦交代させるのか、あるいは他者を取り込み受け入れるのか(同化するのか)、その自己と他者との線引きを扱う機能概念が同一化である。
- 様々な役割、態度、同期、自伝的な経験、基準、価値、目標、自己感、規制的な戦略などから生じるアイデンティティの構成要素が同一化に関係する。自己が他者と一体化して社会的な役割、態度をみにつけたある「私」になること、そしてそうして形成される「私」群を指すものとして用いられる。
ポジショニング
- 他者の視点に立って世界をみること。
- 例1 親と子供の物体Aに対する共同注意の構造: 親の指さした先のAを、子どもは親経由でAをみる。
- 例2 会社での彼のポジション: 同僚からみた彼の役割
自己像、自己形成
- 同一化とポジショニングを経て自己像が出来てくる。
- この自己像はtime varyingであり、時間軸方向での一貫性とコミュニティ毎での一貫性を持つと強固になる。
- 横軸
- 身体的自己
- 行動的自己
- 社会的自己
- 心理的自己
- 縦軸
- 幼児期と児童期前期
- 児童期中〜後期
- 青年期前期
- 青年期中〜後期
- 横軸

アイデンティティ形成
- 同一化群の総和 = アイデンティティではなく、青年期における「私」を軸にした同一化群の整理・見直しによる価値基準の制定もアイデンティティ形成の重要な要素。
役割実験、
- ↑の再構築で形成されたアイデンティティ基準(自己定義と価値)を社会で試してみて、それが社会で受け入れられるか?受け入れられなかった場合、基準の調整をする。この往復的プロセスを繰り返して基準の変更を行う。
- これの到達点といえるのが「心理社会的アイデンティティ」。この状態だと自己と社会が見る自己が一致する(エリクソンのいう「斉一性(Sameness)の修復」)。
ハーマンスの対話的自己
- 「私」は状況と時間の変化に応じて、様々なポジションをいったり来たりする。賛同するポジションや反駁するポジションなど自在に。こうすることで対話的関係が生まれる。各ポジションからの物語が形成される。複雑な語りによって構造化された自己の世界が出来上がる。
- 対話的自己世界では様々な「私」や「モノ」を「ポジション」に変換する。
- 自己ポジション: 親としての私、労働者としての私...
- 外的ポジション: ◯◯の他者、私の車…
- 変換された「ポジション」間の関係は声でつなぐ。

ポストモダンのアイデンティティ
- ポストモダンのアイデンティの特徴は以下を含む事が多い(すべてを満たすわけではない)
- 脱中心的
- ダイナミック
- 複数の
- 文脈固有の
- 相対的
- 流動的
- 断片的
- そしてそれらはエリクソン的な自我一極集中的なアイデンティティ論では説明できないものである。
- マーシャのアイデンティティ・ステイタス
- 青年期課題に対して「探求」はするが「コミットメント」しないという「文化的に適応した拡散型アイデンティティ」の広がりを1989年の論文で指摘している。
- 半構造化面接を通じて「アイデンティティ達成」、「モラトリアム」、「早期完了」、「アイデンティティ拡散」の4類型に分類される。
- 谷冬彦の「多次元自我同一性尺度(MEIS)」
杉村のアイデンティティ形成プロセスにおける自他の関係性6つのレベル
- レベル1: 重要な意思決定において関係性を持たない
- 自己・他者の視点の抽象セット
- レベル2: 重要な意思決定において関係性が乏しい
- レベル3: 重要な意思決定が他者の影響によって行われている、他者の視点のコピー
- 自己・他者の視点の抽象マッピング
- レベル4: 重要な意思決定において関係性を充分に持つ
- 自己・他者の視点の抽象システム
- レベル5: 重要な意思決定において自己と他者の視点の食い違いを体験しており、食い違いが解消されていない。
- 複数の自己・他者の視点の抽象システム
- レベル6: ↑の食い違いを両者の相互調整を通してそれを解決している。
- 自己・他者の視点の抽象システムのシステム

エリクソンのアイデンティティを薄くわかりやすく説明した本。
自己の二重星
- 知る主体としての自己(I)と知られる客体としての自己(Me)
現実自己と理想自己
- 児童期は現実自己をひたすら生きるので自己満足感が高い、青年期になるとこうありたい自分という理想自己を意識するようになるので自己満足感が落ちる。

- アイデンティティ付随条件: 社会的アイデンティティの存在があるがため、ある環境である行動がどのように評価されるかが、その環境にいる人の行動を規定するようになる条件のこと。
- 白人や黒人であるというアイデンティティは環境によってその持つ意味が変わる。
- 簡単な課題に挑む場合は、ステレオタイプ脅威下にある人の方が脅威下に無い人よりも良い成績を修める。
- クリティカルマス: 特定の環境下で、少数派が一定の数に達した結果、その人達がもはや少数はであるがゆえの居心地の悪さ(ステレオタイプ脅威)を感じなること。
- ステレオタイプ脅威がある場合のFB方法
- ステレオタイプ脅威を感じている人にフィードバックすると、能力に対してのFBなのかそれとも自分のアイデンティティに対してのFBなのか解釈に迷い、素直にFBを受け入れられない傾向がある。
- これを回避するためには、FBを伝える前に、「なぜFBをしたいか(e.g. すごく良い論文になる可能性があると思っている)」、「このFBを受け入れることで目標達成のために有益であること」を伝える。
- 多様なバックグラウンドの人同士を雑談させるだけでマイノリティの居心地の悪さと成績を改善できる。
- 人(特にマイノリティ)その人の大事にしている価値観を肯定すると長期的にわたり成績が向上する。
- フラストレーションの原因を説明すると同時に、ポジティブな関与と成功を期待させるナラティブをその人に抱かせるサポートをすると、帰属意識を大幅に高めることができる。