Snowflake SUMMIT 2025 誇大広告ではないAIによるデータ分析革命が迫ってる
Snowflake主催の最大のカンファレンスであるSUMMITに参加してきました。
去年に続いてサンフランシスコで、2025年6月2日から5日の4日間にかけて開催されました。
当日の様子については、X でたくさん呟いてますので、そちらを御覧ください。
私は、2023年、2024年 と参加して、今回で3回目の参加となりました。
今回のSnowflake SUMMIT 2025は、一言で言うと 「すごかった」 です。
地に足がついたAIソリューションが出てきた
AIブームが始まって以来、「革新的」と銘打たれた機能発表を数多く見てきました。
私の印象では、その大半は誇大広告で実際のビジネス現場で使うのは難しいものばかりです。
そんな中、今回のSnowflake SUMMIT 2025で感じたのは、これまでとは異なる確かな手応えがありました。
Snowflakeが今回示した未来は、理想論ではなく現実的な課題解決に正面から向き合った、真に実用的なAIソリューションでした。
AIにめちゃくちゃ懐疑的な私視点で、どのあたりが革新的だったと感じたかについて重点を置いて紹介したいと思います。
Semantic Viewが実現する欲しかったText-to-SQL
従来のText-to-SQLは、ビジネス用語とカラム名の不一致、同義語の多様性、そして、ラストワンマイルに出てくる非加算型メトリクス(CTR、CVRなど)の表現困難という課題を抱えていました。
SnowflakeのSemantic Viewは、これらを根本的に解決します。
ビジネス用語とカラムのマッピング
技術的なカラム名を意味のある名前にマッピングし、複数の同義語を定義できます。
CREATE SEMANTIC VIEW marketing_performance
TABLES (
campaigns AS raw_marketing_data.campaign_table
PRIMARY KEY (cmp_id)
)
DIMENSIONS (
campaign_name AS cmp_nm
WITH SYNONYMS ('campaign name', 'キャンペーン名'),
platform AS plt
WITH SYNONYMS ('channel', 'プラットフォーム', '媒体'),
campaign_date AS cmp_dt
WITH SYNONYMS ('実施日', '配信日')
)
非加算型メトリクスの定義
CTR、CVR、CPAといった単純に集計できない指標の計算ロジックをSnowflake内に定義可能です。
FACTS (
impressions AS imp_cnt,
clicks AS clk_cnt,
conversions AS conv_cnt,
spend AS spend_amt
)
METRICS (
click_through_rate AS
CASE
WHEN SUM(impressions) > 0
THEN SUM(clicks) / SUM(impressions) * 100
ELSE 0
END
WITH SYNONYMS ('CTR', 'クリック率', 'エンゲージメント率'),
conversion_rate AS
CASE
WHEN SUM(clicks) > 0
THEN SUM(conversions) / SUM(clicks) * 100
ELSE 0
END
WITH SYNONYMS ('CVR', 'コンバージョンレート', 'CV率'),
cost_per_acquisition AS
CASE
WHEN SUM(conversions) > 0
THEN SUM(spend) / SUM(conversions)
ELSE 0
END
WITH SYNONYMS ('CPA', '獲得単価', 'コスト効率')
)
従来アプリケーション層に散在していた計算ロジックがデータレイヤーに統一され、組織全体で一貫した指標計算が実現されます。
そして、定義されたSYNONYMSにより、普段使っている用語を使った質問が可能になります。
- 「先月のGoogle広告のCTRは?」
- 「Facebook広告のクリック率を教えて」
- 「エンゲージメント率が一番高いキャンペーンは?」
- 「CPA効率が良い媒体を教えて」
Semantic Viewは、SQLを知らないマーケターやビジネスアナリストでも、複雑な計算を含むデータ分析を自然言語で実行できるデータアクセスを実現します。
Snowflake Cortex AI SQLで簡単にマルチモーダル分析を実現
これまで画像分析や音声処理は、高度な知識が必要な専門領域でした。
そこに対して、Snowflake Cortex AI SQLは、SQLで高度なマルチモーダル分析を実行できるようにしてくれます。
どういうこと?って感じですが、クエリを見た方が早いので、そちらを御覧ください。
-- 料理画像を、AIが自動的に「デザート」「飲み物」「メイン料理」「サイドディッシュ」の4つに分類
WITH food_pictures AS (
SELECT
TO_FILE(file_url) AS img
FROM DIRECTORY(@file_stage)
)
SELECT
*,
AI_CLASSIFY(img, ['dessert', 'drink', 'main dish', 'side dish']):labels AS classification
FROM food_pictures;
-- 猫の画像だけに絞り込む
WITH pictures AS (
SELECT
TO_FILE(file_url) AS img
FROM DIRECTORY(@file_stage)
)
SELECT
FL_GET_RELATIVE_PATH(img) AS file_path FROM pictures
WHERE AI_FILTER(PROMPT('{0} is a cat picture', img));
「マジか・・・」という印象を持ちますよね。
最初は面食らいましたけど、冷静に考えるとこれ筋が良い解法。例えば、ここで変に厳密に座標指定します!とかだと結局簡単じゃないんですよね。
SQLという既存のスキルセットを活用しながら、AIの力を借りて複雑な非構造化データ処理を実現する設計思想は、Snowflakeらしいなと感じます。
Cortex Agentに道具の使い分けを任せる
SnowflakeのAI&ML機能は、確かに高機能です。
しかし、実際に使おうとすると「構造化データの分析にはCortex Analyst」「非構造化データの検索にはCortex Search」「マルチモーダル処理にはCortex AISQL」といった具合に、利用者が機能を理解し、適切に使い分けることが求められます。
これで「簡単に分析できます」と謳われても、結局のところ、どの機能をいつ使うかを判断するには相当なリテラシーが必要だったのです。
そこに登場したのがCortex Agentです。この機能により、ツールの使い分けを人間ではなくAIに任せることができるようになります。
具体的には、ユーザーが自然言語で質問を投げかけると、Cortex Agentが以下のような判断を自動で行います。
- 「売上データの傾向を教えて」 → 構造化データクエリと判断 → Cortex Analyst経由でSQLを生成・実行
- 「契約書の中から重要なポイントを抜き出して」 → 非構造化データ検索と判断 → Cortex Search経由でドキュメント検索
- 「商品画像を分類して、売上データと組み合わせて分析して」→ マルチモーダル処理と判断 → 複数の機能を組み合わせて実行
これにより、分析者は「やりたいこと」だけに集中できるようになりました。どのツールを使うか、どの順番で処理するか、どう組み合わせるかといった技術的な判断は、すべてAIが代行してくれます。
Snowflake Intelligence すべてを統合する単一のインターフェース
そして、数ある発表の中で、自分が一番ワクワクしたのはSnowflake Intelligenceです。
以下の動画を見るのが話が早いので、是非見て欲しいです。
要はいろいろなインタフェース移動することなく、ここだけで分析に関する仕事全部完結するぞって世界観なんですよね。
分析の種類ごとに毎回UIを構築していた世界から、統一されたインターフェースを一つ用意するだけの世界観への転換です。
これめっちゃ面白くないですか?
最後に
自然言語でのデータアクセスについて、2024年くらいからもてはやされましたが、当初は懐疑的でした。
しかし今回のSUMMITを通じて、これがデータとの関わり方自体を根本から変える革新であることを理解できました。
ここから先は今回の発表内容を踏まえた上での、私なりの未来予想になります。
インタフェースの制約が取り払われる
従来、データにアクセスするためにはSQLやプログラミングスキルが必須でした。そのため、ユーザーとデータの間には必ず専用のインタフェースが必要だったのです。
ところが、自然言語でのアクセスが可能になると、この制約が根本的に取り払われます。つまり、インターフェースの多様化 が実現するのです。
例えば、音声での問い合わせ(VUI)から始まり、チャット、メール、さらには日常会話の中でデータにアクセスできる未来が見えてきます。
これまでのデータアクセス方法の常識そのものが変わろうとしています。
「見る」から「対話する」への転換
私たちが本当にデータに求めているのは、データそのものではありません。「次に何をすべきか」という行動指針なのです。
仮に自然言語インターフェースが一般化され、質問に対してアクションプランの提案まで一気通貫で実現できれば、ユーザーはもはやデータの存在を意識する必要がなくなります。
データが空気のように自然に、必要な時に必要な形で価値を提供してくれる世界です。
今回のSnowflakeエコシステム全体の進化により、これまでのインタフェースに縛られない新しいデータ活用の可能性が明確に見えてきました。もちろん実世界で実装する場合には、課題は絶対出てくるでしょうが、これらの技術的ブレークスルーにより解決されるのは時間の問題と感じています。
SUMMITで示された技術的な基盤が、データを「見る」から「対話する」へと変わる転換点になるんじゃないかな?と勝手に思っています。
とにかく、すごかった。
どう備える?
- ビジネスに詳しくなる。
- モデリングする。
- メタデータ整備する。
ここにどれだけ取り組めたかで、じわりじわりと差がついてくると思う。

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