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AIの本質は「価値あるデータ」にあり。Salesforce Data Cloud のZero Copy戦略の本質

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はじめに:AI活用の本質はツールの先にある

最近のAIのトレンドは「いかに手軽にRAGを構築するか」といったツール論に偏りがちです。しかし、その喧騒の中で最も重要な本質が見失われてはいないでしょうか。

多くの企業が持つCRMの履歴データだけを眺めるのは、いわば自動車のバックミラーだけを見て運転するようなものです。どこを走ってきたかは分かりますが、これからどこへ向かうべきかは教えてくれません。真に必要なのは、顧客の行動の背景にある「なぜ」を理解し、次の一手を導き出すインサイト(洞察)なのです。

本記事では、このデータ活用の本質的な課題に対し、Salesforce Data Cloud が提唱する「Zero Copy」戦略と、その中核機能File Federationが、いかにしてAIに新鮮で強力なインサイトを発見させるのかを解説します。

課題:価値あるデータほど「データグラビティ」に縛られている

インサイトの源泉となるWEB行動ログやPOSデータといった「価値あるデータ」は、その量の大きさから「データグラビティ(データの重力)」を持っています。データレイクやDWHに深く根を張り、従来のETL/ELTで動かそうとすればするほど、以下の問題を引き起こします。

  • 高コスト: データ移動のための開発・運用に多大なコストがかかる。
  • 鮮度の劣化: バッチ処理を待つ間に、顧客の「今」の意図は失われてしまう。
  • ガバナンスの複雑化: データの複製が乱立し、統制が取れなくなる。

このデータグラビティこそが、多くの企業がAIに新鮮な食事を与えられず、価値あるインサイトを得られない根本原因なのです。

解決策:Salesforce Data Cloudの戦略「Zero Copy」

データグラビティという課題に対し、Salesforceは「データを動かす」という発想そのものを捨てる「Zero Copy」という哲学を提唱します。AIやアプリケーションを、重いデータが「ある場所」へ持っていくのです。

このZero Copy思想を具現化する強力な機能ファミリーの一つがFile Federationです。SnowflakeやAmazon S3といった外部データソースを、文字通りゼロコピーでData Cloudから直接参照します。これにより、SalesforceのAIは、いつでも外部にある最新・最良のデータに直接アクセスできるようになります。

参考:さよならETL👋 SnowflakeのデータをSalesforce Data CloudへFile Federationで爆速連携してみた

ユースケース:Zero Copy AIが実現する、高級ブランドの究極のおもてなし

このZero Copyアーキテクチャが、いかにしてビジネス成果に繋がるのか。高級ブランド「Maison de Voyage」のシナリオで見ていきましょう。Maison de Voyageは一流の販売スタッフが、お客様のニーズにあった商品を的確に提供します。ハイブランドにふさわしい真心のこもった接客スタイルが多くのお客様に支持されています。

【インサイトの源泉となるデータ】

AIは、データグラビティに縛られた複数のデータソースを横断的に分析します。

  • WEB行動ログ: SnowflakeやDataBricks S3などに蓄積された、顧客の直近のまWEB閲覧履歴。特に「デザインシミュレーター」での滞在時間の長さや、「職人の哲学」ページの閲覧といった行動が含まれます。
  • 過去の購入履歴: CRMに存在する高額商品の購入記録。

【Service Cloudに表示されるお客様の行動データ】

ショップスタッフは、来店予約の直前にService Cloud上でブリーフィングを確認します。
File Federationにより、お客様のリアルタイムのWEB行動履歴が表示されています。
しかしながら、ログデータを眺めるだけではお客様がどのような心境なのかはっきりわかりかねていました。

【Service Cloudに表示されるAIインサイト】

そこでAIの出番です。Einsteinがお客様のすべてのデータからお客様の今のインサイトを生成します。
Data Cloudの力によりFile FederationでEinsteinはお客様のリアルタイムのデータを取得できるのでリアルなインサイト情報を生成します。

【ビジネス成果】

このインサイトに基づき、ショップスタッフは万全の準備で接客に臨み、顧客の心を掴む提案で見事成約に至りました。過去の履歴に反応するのではなく、未来の行動を示唆するインサイトに基づいたからこそ、最高の顧客体験とビジネス成果が両立したのです。
このように、履歴データをCRM上に表示しても活用は難しく、インサイト化して初めて業務に活かせるということがお分かりいただけたと思います。
このユースケースではWEBログと購入履歴のみを扱っていますが、データソースが増えれば増えるほど人間がインサイトを導くのが難しくなるというのがわかるかと思います。

【Einsteinが顧客のリアルタイムデータからインサイトを作る様子】

まとめ:AIの成果はモデルの複雑さではなく、データの近さで決まる

RAGなどの構築が手軽になった今だからこそ、我々はAI活用の本質、すなわち「価値あるデータを、いかにAIのそばに置くか」という点に立ち返るべきです。

Salesforce Data Cloudが推進するZero-Copy戦略とFile Federationは、この課題に対する明確な回答です。重たいデータを動かすことなく、その価値を最大限に引き出すアーキテクチャこそが、これからのAI活用の成否を分けます。

今、SalesforceはZeroCopyの技術を使ってあらゆるデータを活用してAIの力を最大限引き出そうとしています。
"価値があるのはわかっていたけど使えなかったデータ" や "認知されてもいない、実は大きな価値を持っているデータ” あなたの会社にもこんなデータが眠っているかもしれません。
AIを使ってデータの価値を120%引き出しでみませんか?

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