Salesforce Data Cloud を使った閲覧放棄セグメントの作成
はじめに
ECサイトのデータを活用したマーケティング施策では、「閲覧放棄」や「カート放棄」という言葉をよく耳にすると思います。
Marketing Cloud Personalizationのトリガーキャンペーンを使うと、それらがGUI操作だけで実現できます。仕組みとしては、Marketing Cloud Personalization側で放棄したユーザーと商品データを抽出し、Marketing Cloud Engagementに連携するというものです。しかし、Marketing Cloud Personalizationを導入していない環境では、同様の機能をそのまま使うことはできません。そこで本記事では、Data Cloudを活用して閲覧放棄データをセグメント化し、Marketing Cloud Engagementへ連携する方法を紹介します。
必要なデータ
閲覧放棄を判定するために必要なデータモデルオブジェクト(DMO)は以下の通りです。これらのデータがData Cloudに取り込まれ、DMOへのマッピングが完了している必要があります。また、あらかじめID解決をしておき、Unified Individualが生成されていることを想定しています。
- Product Browse Engagement (商品閲覧)
- Sales Order Product Engagement (商品購買)
- Unified Individual (過程で生成される Unified Link Individual)
閲覧放棄データの抽出の考え方
閲覧放棄された商品とはどのように抽出するべきでしょうか?考え方としては、以下です。
- 商品IDをキーに閲覧データと購買データをLEFT JOINで結合します。
- 購買データの商品IDがNULLのデータに絞り込む。
この流れをテーブル形式で表示します。
🧺 閲覧データ
| ユーザー | 商品 |
|---|---|
| 太郎 | りんご |
| 太郎 | みかん |
| 花子 | バナナ |
💳 購買データ
| ユーザー | 商品 |
|---|---|
| 太郎 | りんご |
| 花子 | バナナ |
LEFT JOIN の結果
| ユーザー | 商品 | 商品(購買商品) |
|---|---|---|
| 太郎 | りんご | りんご |
| 太郎 | みかん | NULL ← 購買に該当なし |
| 花子 | バナナ | バナナ |
購買データがNULLのものを抽出(閲覧放棄)
| ユーザー | 商品 |
|---|---|
| 太郎 | みかん |
データ変換を用いた閲覧放棄データの抽出
データ変換機能を使えば、Data Cloud内のデータを加工することが可能です。
1. 完成図

これにより、ユーザーデータと放棄データを結合させたDMOを作成します。
2. 商品IDをキーに閲覧データと購買データをLEFT JOINで結合

対象期間を「過去◯日間」に限定することで、不要なデータ処理を避け、クレジット消費を抑えることも可能です。ここでは、Product(商品ID)をキーに結合しています。
[修正]商品IDに加えて、IndividualIDも結合キーとして利用します。
3. 購買データがNULLのもの(カート放棄された商品)を抽出

ここでは、Sales Product Order Engagementの Product が Nullで絞り込みます。
4. ユーザーデータと結合
Unified Link Individual

Individual Id を用いて、Unified Link Individual と結合します。
Unified Individual

Unified Link Individual を介して、Unified Individual と結合します。
確認

これによって放棄データの作成が完成しました。
セグメントの作成
高速公開セグメント

高速公開セグメントでは、利用可能な行動データが過去7日間に限定されます。ただし、閲覧放棄のような短期的な行動を対象とする施策であれば、この範囲でも十分対応可能です。
セグメント条件

放棄アイテムが存在するユーザーに限定
セグメント有効化
放棄アイテムを属性データとして付与

属性を追加 から有効化先に放棄アイテムを渡す設定をします。

商品ID等を属性として選択します。
最大で10個まで放棄アイテムを有効化先に渡すことが可能です。
確認

放棄アイテムが無事書き込まれました。この例では、商品IDを連携しているので、Automation Studioを活用して商品マスターから商品画像や価格などを取得し、メールコンテンツに動的に埋め込むことで、パーソナライズされた施策メールを自動生成できます。メールに表示する項目値がData Cloudから渡すことができれば、Marketing Cloud EngagementのAMPScriptを利用してメールのコンテンツに差し込むことも可能です。
※本記事の内容については、2025年10月時点でのものとなり、また私が所属する会社とは一切関係のない事柄です。
参照
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