DUNS Numberを利用した法人顧客統合(ID解決)を試してみた
はじめに(TL;DR)
法人顧客のデータ管理は、ビジネスの成功において非常に重要です。特に、複数のデータソースに散在している法人情報を統合する際には、重複や不一致を避けるための効果的な方法が求められます。DUNS Number(Data Universal Numbering System)は、アメリカの ダンアンドブラッドストリート(D&B)が管理している、企業コードの付与管理システム、並びに同システムによって各企業に付与された企業コードの名称です。DUNSは日本では一般的に「ダンズ」と呼ばれ、法人顧客の一意識別子として企業で広く利用されており、法人情報のデータ統合プロセスを大幅に簡素化します。
Data CloudにもDUNS Numberを利用したID解決の設定に関する記載がこちらのヘルプページにあります。
以下がその抜粋です。

Salesforceヘルプページからの抜粋
ただ、この前段にいくつか必要な準備作業があるのですが、その記載が無く、不安に思われるユーザーの方もいらっしゃるかと思いましたので、本記事では、その部分も含め、DUNS Numberを使った法人顧客統合(ID解決)の設定方法を説明します。
なお、SansanのSansan Organization Code(SOC)やuSonarのLinkage Business Code(LBC)など、DUNS Number以外にも法人IDがありますが、同様の方法で法人顧客のデータ統合に利用することが可能です。
ちなみに、ID解決やParty Identificationって何?という方は、先に下記のTrailheadで学んでおくと理解が進みやすいと思いますので、ぜひご活用ください。
前提事項
DUNS NumberはCRM上の取引先(Account)のカスタムフィールドとして追加されている前提でこの後の話を進めます。

CRM上の取引先(Account)にDUNS Numberを保持するためのカスタムフィールドを追加した例
また、Accountオブジェクトからのデータの取り込みは、データバンドルを利用してデータストリームが設定されている前提でこの後の話を進めます。
設定
取引先(Account)のデータストリームの更新
DUNS Numberなどの外部ID情報はData Cloudでは通常Party Identification DMOのIdentification Numberに格納します。ただ、上記ヘルプページを参照すると、それに加えて、Party Identification Type項目が"Account Identifier"、Party Identification Name項目が”D-U-N-S Number”となっている必要があると書かれています。
CRM上ではDUNS Numberを保持するためのカスタム項目は作成されますが、Party Identification TypeとParty Identification Nameの項目はわざわざ作成されないため、データストリームで追加してあげる必要があります。
そのために、下図の通り、数式項目でParty Identification Type、Party Identification Nameの項目を追加し、値に”Account Identifier”、”D-U-N-S Number”をそれぞれ設定します。


ここで1点注意なのは、数式項目を追加した後、リフレッシュ処理を実行してもデータが反映されません。数式項目はソースシステム(今回の場合はCRM)からレコードが連携されない限り、動かないためです。そのため、数式項目を動かすために、ソースシステム上で該当レコードを更新するか、2週間に1回実施されるフルリフレッシュを待つか、いずれかの対応が必要になります。
DLO-DMO間のデータマッピングの設定
データバンドルによってデータマッピングが行われていますが、それだけでは足りない部分があるため、追加で下記のデータマッピングを設定します。
「Data Lake Objects」タブ上でAccount_Home DLO(データストリームの設定時にDLOの名称を変更した場合はその名前)を開き、画面右側にある「Review」ボタンをクリックすると、データマッピング画面が表示されます。

デフォルトではAccount DLOのデータマッピングにParty Identification DMOは表示されていないため追加します。データマッピング画面の右上に鉛筆マークがあるので、それをクリックします。

Party Identificationにチェックを入れ、「Done」ボタンをクリックします。

ここから、各DMOに対してデータマッピングを設定します。
Contact Point Address DMO へのマッピング
Account.Account ID → Contact Point Address.Party
Contact Point Phone DMO へのマッピング
Account.Account ID → Contact Point Phone.Party
※Party IdentificationのみでのID解決のため、Formatted E164 Phone Numberはマップする必要なし
Party Identification DMO へのマッピング
Account.Account ID → Party Identification.Party
Account.DUNS Number → Party Identification.Party Identification ID
※Party Identification IDはParty Identification DMOの主キーであるため、一意である必要があります。ここでは便宜的にDUNS Numberをマッピングしていますが、他に一意となる項目があればそちらをお使いください。
Account.DUNS Number → Party Identification.Party Identification Number
Account.Party Identification Type → Party Identification.Party Identification Type
Account.Party Identification Name → Party Identification.Party Identification Name
すべてマッピングすると、下図のような結果になります。

すべてのDMOへのデータマッピングが完了した状態
取引先(Account)とパーティ識別(Party Identification)の間のリレーションの追加
次に、取引先(Account)とパーティ識別(Party Identification)の間で1対Nのリレーションを設定します。
「Data Model」タブ上でParty Identification DMOをクリックし、「Relationships」タブにある「Edit」ボタンをクリックします。

Party Identification DMOのParty項目とAccount DMOのAccount Id項目のリレーションをN:1で設定します。

取引先(Account)のID解決の設定と実行
Party Identificationを利用したID解決を設定します。ID解決では、どのレコードが同一と判断するかを決める解決ルールと、同一と判断された複数レコードから項目単位で取得するルールを決める調整ルールの2つがあります。
今回は法人企業のID解決なので、Primary Data Model Object, Match to Data Model ObjectともにAccountを指定します。

ID解決ルールセットの設定は、下図の「Configure」ボタンをクリックすると表示されるダイアログ画面で行います。

ID解決ルールセットのマッチルールにはよく使われるルールがいくつか提供されていますが、今回それらは使わず、「Custom Rule」を選択します。

マッチルール自体は、先に掲載したヘルプの画像の通りに設定するのですが、Match CriteriaのData Model ObjectのところにParty Identificationが出てこない場合は、取引先(Account)とパーティ識別(Party Identification)の間のリレーションの追加が正しく設定されていない可能性があるので、確認してみてください。


「Save」ボタンでマッチルールを保存すると、下の図のようになります。「Last Job Status」がいつまで経っても「In Progress」にならない場合は、画面右上の「Run Ruleset」ボタンで処理を実行してください。

Query Editorでデータを確認すると、2つの別のAccount IDが同じUnified Record IDに紐づいていることがわかります。

まとめ
今回は、DUNS Numberを利用した法人顧客統合(ID解決)の設定手順を説明しましたが、いかがでしたでしょうか。正しい法人顧客情報を活用することで、正確な状況把握や分析が可能になります。
ちなみに、ID解決のような処理はプログラムやSQLでゴリゴリ開発されているケースが多いのですが、その場合、IT部門や契約しているSIベンダの方が設計・開発・運用することになり、少しの改修でも時間とコストがかかってしまいます。
Data CloudではID解決がノーコード・ローコードで設定できるので、業務部門が主体となって迅速かつ柔軟にID解決を行うことができます。これにより、IT部門やSIベンダへの依存を減らし、コスト削減と業務効率の向上を実現することができるでしょう。ぜひ、Data Cloudの導入・活用を検討してみてください。
※本記事は、私が所属する会社とは一切関係のない事柄です。
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