\prod_{k=1}^{n-1}2\sin\frac{k\pi}n=n
はじめに
理系の高校2年生を対象にした実力テストで,複素数平面の問題を出題しました。生徒の解答を見ながら,まとめた内容になります。
問題
複素数平面上の単位円(\text{O} を中心とする半径1の円)に正 n 角形が内接している。
正 n 角形の頂点 \text{A}_k\,(k=0,1,2,\cdots,n-1) を表す複素数は\displaystyle{z_k=\cos\frac{2k\pi}n+i\sin\frac{2k\pi}n} である。
今,1\leqq k\leqq n-1 として,線分 \text{A}_0\text{A}_k の長さを L_k とする。次の問いに答えよ。
-
n=3 (正三角形)のとき,2個の線分の長さの積 L_1\times L_2 を求めよ。
-
n=4(正方形)のとき,3個の線分の長さの積 L_1\times L_2\times L_3 を求めよ。
-
n\geqq3 として,n-1 個の線分の長さの積 L_1\times L_2 \times \cdots \times L_{n-1} を求めよ。
答え
- L_1\times L_2=3
- L_1\times L_2\times L_3=4
- L_1\times L_2 \times \cdots \times L_{n-1}=n
解説
-
L_1=L_2=\sqrt3
\therefore L_1\times L_2=\bm{3}
-
L_1=L_3=\sqrt2,\,L_2=2
\therefore L_1\times L_2\times L_3=\sqrt2\times 2\times \sqrt2=\bm{4}
- L_k=|z_k-z_0|
\begin{aligned}
&L_1\times L_2 \times \cdots \times L_{n-1}\\
&=|z_1-z_0|\times |z_2-z_0|\times \cdots\times |z_{n-1}-z_0|\\
&=|(z_1-1)(z_2-1)\cdots(z_{n-1}-1)|=\bigstar\end{aligned}
ここで,方程式z^n=1の解は
z=z_0,z_1,z_2,\cdots,z_{n-1}
である。
z^n=1は
(z-1)(z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1)=0
と変形でき,
z_0=1 であることから,方程式
z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1=0 の
n-1 個の解は
となるので,
(z-z_1)(z-z_2)\cdots(z-z_{n-1})=z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1
である。
z=1とすると,
(1-z_1)(1-z_2)\cdots(1-z_{n-1})=\underbrace{1+1+\cdots+1}_{n個}=n
\therefore \bigstar=|n|=\bm{n}
3.での生徒の解答
結論から言うと,次の答えも正解としました。
\begin{aligned}
L_k&=|z_k-z_1|\\
&=\bigg|\cos\frac{2k\pi}n+i\sin\frac{2k\pi}n-1\bigg|\\
&=\sqrt{\left(\cos\frac{2k\pi}n-1\right)^2+\sin^2\frac{2k\pi}n}\\
&=\sqrt{\cos^2\frac{2k\pi}n-2\cos\frac{2k\pi}n+1+\sin^2\frac{2k\pi}n}\\
&=\sqrt{2-2\cos\frac{2k\pi}n}\\
&=\sqrt{4\cdot\frac{1-\cos\frac{2k\pi}n}2}\\
&=\sqrt{4\sin^2\frac{k\pi}n}\\
&=2\bigg|\sin\frac{k\pi}n\bigg|\\
&=2\sin\frac{k\pi}n\, \left(\therefore 0<\frac{k\pi}n<\pi\right)
\end{aligned}
よって,
\begin{aligned}
&L_1\times L_2 \times \cdots \times L_{n-1}\\
&=2\sin\frac{\pi}n\times2\sin\frac{2\pi}n\times\cdots\times2\sin\frac{(n-1)\pi}n\\
&=\bm{\prod_{k=1}^{n-1}2\sin\frac{k\pi}n}
\end{aligned}
まとめ
このことから,次の等式が成り立ちます。
\bm{\prod_{k=1}^{n-1}2\sin\frac{k\pi}n=n}
この等式は
n\geqq3 で議論しましたが,
n\geqq2 でも成り立ちます。
n=1 のときも強引に成り立つと考えてもいいのですが,それはやめておきます。
Juliaで数値計算!
やっぱり,Juliaで計算してみたいです!
function ff(n)
a=1
for k=1:n-1
a=a*2*sin(k*π/n)
end
println(a)
end
ff (generic function with 1 method)
2.0
3.0
4.0
5.000000000000001
5.999999999999998
7.0000000000000036
8.000000000000002
9.000000000000004
10.000000000000004
バッチリです!
Discussion
これまた面白いですね。
正弦の古典的な定義によると、「直径が1の時の円周角α(中心角2α)に対する元の長さ」がsinαということもできるので、そうすると
$$
L_k = 2\sin \frac{k\pi}{n}
$$
の立式は計算しなくてもできそうですね。
(関係ないですが、最近は高校でもΠつかうんでしたっけ...すごいですね)
コメントありがとうございます。
L_k はルートを使わなくても図形的にできますね。。。ちょっとやりすぎました。
高校ではΠの記号は出てきません。生徒は「・・・」など使って書いていました。
まあ、高校2年生で数列のΣがわかっているので、「かけていく記号だよ。』というと伝わります。
生徒は手元にiPadなどもあるので、わからないと自分で調べてます。