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iPadを用いた数学の入学試験(1)

2023/09/12に公開

今回の記事は2017年と2018年の記事をまとめたものです。ちょっと古いのですが,記録として残しておくため,2回に分けて報告します。

はじめに

城北高校(東京都板橋区)の推薦入試の数学の試験では,『iPadをを用いて解く問題』を出題しています。平成29年1月に行った入試で初めて導入し,平成30年1月の入試でも継続しました。どのような入試が行われているのか報告いたします。

本校のICT環境について

城北中学校・高等学校では近年ICTの環境を整備してきました。

(大型モニタとiPadを利用した授業の様子)

大型モニタとiPadを利用した授業の様子

  • 校内100ヶ所にWi-Fiのアクセスポイントを設置
  • 50のHR教室に大型モニタとappleTVなどを設置
  • 教職員や生徒が利用できるiPadを整備
  • iRoom(アクティブラーニングに特化した教室)を整備

iPadは現在(2018年),講師を含む全教員が利用でき,生徒用のiPadは360台あります。このiPadはセルラー型で,学内のWi-Fi環境だけでなく,4G回線でも利用できます。

平成29年1月の推薦入試

平成29年1月22日に城北高校の推薦入試の数学の試験で次の問題を出題しました。

iPadを導入するきっかけとなったのは,入試の作問チームでこの問題を解いたときに,GeoGebraでこの立体を眺めたことから始まります。

(GeoGebraで作成した3Dの図形)

GeoGebraはGPLに沿って無償で提供される数学アプリです。iPadだけでなく,Mac,Windows,そしてブラウザベースでも利用できます。

『紙と鉛筆でも解けるけど,眺めると一目瞭然だね。』

と作問チーム内で共有しました。そして,

『受験生にいろいろな方向からこの立体図形を眺めてもらうにどうしたらよいか?』

ということに検討は移って行きました。
当初,受験生に見せるに当たって,いくつかの案がありました。

(a) いくつかの方向からの図を印刷して渡す。
(b) 教室内にある大型モニタを利用して,図形を回転させた動画を見せる。
(c) iPadで受験生自身が動かしながら,図形を眺める。

作問チームではやはり,(c)が支持されました。その理由は,眺めるときに自由度が高く,受験生が見たいところから眺めることができることが最大の理由です。

iPadの準備

まず,考えなくてはならないのが,

『試験でどのようにiPadを使い,GeoGebraで作成した3Dのコンテンツをみせるか?』

ということでした。

iPad アプリ『GeoGebra』の検討

当初,iPadのアプリ『GeoGebra』を利用することを考えたのですが,いくつかの問題がありました。それは

  • 複数のファイルを開くことができない。(その場でパッとできない)
  • 様々なツールがあり,受験生が想定外の操作をした時に,図形が崩れてしまう懸念がある。
  • アプリが安定しない。(フリーズしてしまう)

などです。特に,1番最初の問題『複数のファイルを開くことができない。』が大きな課題でした。今回の入試問題では(1)(2)(3)の問いに合わせて,コンテンツを3つ作成しました。

(GeoGebraで作成した3つのコンテンツ)

https://ggbm.at/gZjXHCp8(Web上で公開しています)

この3つを切り替えて利用する必要があったのですが,iPadのアプリ『GeoGebra』ではスムーズに(簡単に)切り替えることができませんでした。(現在のiPadのiOS11からはiPad内のファイルに直接アクセスできるようになりました。)受験生には複雑な操作を要求することはできないため,GeoGebraのアプリは利用しませんでした。

iBooksへの埋め込みの検討

次に,GeoGebraのコンテンツをappleのiBooksの中に埋め込んで使用することを検討しました。iBooksはappleが進める電子書籍の規格です。iBooks内にウィジェットという形でGeogebraのコンテンツを埋め込むことができます。さっそく,今回のコンテンツを埋め込もうとすると...できません。Webでいろいろ調べていくと,GeoGebraの2Dのコンテンツは埋め込むことができるのですが,3Dのコンテンツはウィジェットとして埋め込むことはできないことがわかりました。別の形式の3Dグラフィックのファイルは読み込むことができたのですが,GeoGebraで作成したファイルは結局できませんでした。この方法も見送ることにしました。

GeoGebraBookの検討

最終的に採用した方法は,インターネットのGeoGebraのサイトにアクセスして,そこで,GeoGebraBookという,3つのコンテンツを本のようにまとめたファイルを作成し,そのファイルを利用する方法です。

(GeoGebraのサイト)

この方法によって,iPadのアプリ『GeoGebra』を用いた時の問題はすべて解決しました。
ただし,この方法は試験の時にインターネットにアクセスするという別の問題を抱えることになります。

インターネット環境の検討

当初,試験ではインターネットに接続しなくても利用できる形(ローカルの環境といいます)が望ましいと考えました。試験という性質上もあります。しかし,この制約の影響は大きく,何かを進める時には大きな足かせとなります。また,本質的に,インターネットを利用した試験を今後,真剣に取り組むためにも,ローカルの環境にこだわることはやめました。そして,試験を行うにあたって,どのような対応をすべきかを検討しました。

まず,GeoGebraのサイトからGeoGebraBookのコンテンツにアクセスした時の挙動ですが,safariで一度アクセスし,リソースを読み込んでおくと安定して動くことが確認できました。そして,インターネット環境は4G回線を利用することにしました。Wi-Fiも検討しましたが,一斉にアクセスした時の状況は,4G回線の方が安定してたので,こちらを採用しました。

MDMサービス,その他の設定について

コンテンツの作成の次に,『これらのコンテンツをどのようにiPadに設定するか?』という問題があります。本校では『Jamf Pro』という多くのiPadを管理するサービス(MDM : Mobile Device Management)を導入しています。このMDMのサービスにより,今回のコンテツのURLや全画面表示の設定などを,使用するiPadを対象にセキュアに一括して実行することができました。

(Jamf Proのサイト)

また,その他のiPadの機能を次のように調整しました。

  • 音が出ないようにする。
  • 縦横が変わらないように固定する。
  • アクセスガイドの機能を利用して,意図しないページに移動したり,他のアプリやホーム画面にならないようする。

実施までのプロセス

そして,推薦入試の実施に先立って,当時の高校1年生の授業の中(約40名2クラス)でiPadを用いた数学のテストを行いました。

(iPadを用いたテストの様子)

分野は数学IIの図形と式の範囲で,入学試験でiPadを使う際の方法や課題をチェックしました。そして,iPadの動作チェック・設定を経て,推薦入試の実施となりました。受験生に対しては,平成28年12月に本校のHPからiPadを用いた入試を行うことを告知しました。その際に,iPadやアプリの操作に関する特別な準備は必要ないことも伝えました。

推薦入試の様子

推薦入試当日は,何か不具合が合った時にすぐにiPadを交換できる体制を取りました。通常は試験監督は2名体制で行いますが,このiPadを利用した試験は5名体制で行いました。推薦入試の数学の試験前にiPadを配布し,操作の説明をしました。そして50分間の数学試験が始まり,20分を過ぎた頃から,iPadで問題を解く生徒が出始めました。今回の問題にかけられる時間は10分程度と思われましたが,全員がきちんと操作をして,取り組むことも確認できました。今回,受験生が実際に利用した3Dのコンテンツを以下のサイトでご覧になり,実際に見る方向を動かして体験することができます。iPadを用いた入試についてまとめた動画をYouTubeで公開しております。『城北高校 推薦入試』で検索してください。

(推薦入試の様子)

今後の取り組みついて

iPadを利用した数学の入試について紹介をしましたが,初めから,『iPadありきの入試』を考えていたわけではありません。しかし,入試を終えての感想はiPadやGeoGebraなど,このようなツールがなかったら,この問題は使われなかったと思います。私たちは,学校の取り組みとしてICT化を進めていますが,以前だったら,取り組まなかった,取り組むことができなかった問題というのは多くあるのではないでしょうか?『複雑すぎる』,『計算量が多すぎる』,『イメージが難しい』などの理由で避けて来たことはないでしょうか。新しいツールによって,中学生・高校生,そして教員自身が今まで取り組んでかなかったような問題へチャレンジしていくことができるのではないかと考えています。(平成30年1月の推薦入試へ続く)

【推薦入試の答え】

(1) \bm{5} (2) \bm{\dfrac52} (3) \bm{4}

【参考URL】

https://www.geogebra.org/

https://www.apple.com/jp/ibooks-author/

https://www.apple.com/jp/ibooks/

https://www.jamf.com/ja/

iPadを用いた数学の入学試験(2)へ続く。

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