業界10年目のエンジニアが生き残るために読んできた本
はじめに、私について
リーマンショック後のそこそこ就職氷河期だった2013年に文系大卒の新卒未経験でこの業界に入社し、今年で10年目になります。
10年の中で会社や業態、取り組む業務内容、技術を変えながらもエンジニアとしてボチボチやってきたつもりです。
ふと、キャリアを振りかえったときに。
その時々で必要にかられたり、課題を感じて読んで影響されてきた書籍というのが思い返せば何冊かあります。
時代の流れ、業界のトレンドととともに情報は陳腐化したり、有用なものは変わっていっているでしょうが、10年業界をサバイブしてきた1人のエンジニアのバイブルを紹介させて頂きます。
1~3年目(駆け出し業務系プログラマ:SES時代)
最初は客先常駐のプログラマをやっていました。
比較的ミッションクリティカルな業界の案件に行くことが多く、学びはたくさんありましたが身に付いた技術的スキルはトレンドめのものはなく、レガシーなものがほとんどでした。
『なれる!SE』シリーズ
最初に紹介するのはこちらのライトノベルです。
文系未経験でIT業界へ入社したネットワークインフラSE見習いの主人公がひたすらブラックな目に合いながらも、技術力、ビジネススキルを身に着け成長していくストーリーです。
作者はIT業界経験があるため、実体験に基づいた描写がとてもリアルで7巻の客先常駐編は読んでて胃が痛くなります。
境遇が似ていたため、自分と主人公を重ね合わせやすく、ITという仕事全般の勉強やモチベーションになりつつも楽しく読むことができました。
ブラック描写などは時代背景が古い部分はありますが、今のエンジニアでも楽しく読める名作だと思います。
『コンピュータはなぜ動くのか』/『プログラムはなぜ動くのか』/『ネットワークはなぜつながるのか』
個人的に一番最初に読んで頂きたい本です。
コンピュータの動く原理、プログラムとはなにか、ネットワークが繋がる仕組みを初学者にもわかりやすく面白く説明している良書です。
特に『コンピュータはなぜ動くのか』を一番最初に読んで頂きたく。
ハード、ネットワーク、データベースの話も出てくるので最初の基礎固めにはもってこいです。
基本情報技術者試験の参考書にもよいと思います。
また、改版がされてるため当時はなかったクラウドコンピューティングなどの話も今はカバーされています。
『SQL ゼロからはじめるデータベース操作』
当時は、何をするにしてもRDB(リレーショナルデータベース)を扱わないことはほぼ皆無でした。
PostgreSQLを使って、SQLの書き方とRDB設計の基礎を学ぶのにとても分かりやすい良書がこちらです。
SQLやデータベースが得意だと重宝されたので当時は必死に勉強した思い出があります。
時代は進み、マネージドデータベースサービス、NoSQLデータベース、O/Rマッパーに加え最近はAIによる自然言語クエリまで出てきました。
DB管理、SQLもそこまで極める必要はなくなってきたのかもしれませんが、まだまだ現役で役立つスキルだと思います。
『男の服装術』
実力がまだまだな分少しでも見た目で有能な印象を持ってもらおうとスーツスタイルの勉強に使った本です。
偏見かもしれませんが、エンジニアは服装に無頓着な人が多く、適当にスーツを着ている人の多い印象があります。
高価なものじゃなくても適切な採寸でスーツのルールを守った着こなしできちんと磨いた靴を履いているだけでちゃんとしたビジネスマンに見えるものです。
今時の会社だとエンジニアはスーツ強制じゃないですし、最近はリモートワークが普及し私自身もスーツを切る機会がめっきり減りました。
ですが、ここぞという時にビシッとスーツスタイルを決められると格好いいし仕事のできる人に思われますよ。
『チーズはどこへ消えた?』
自己啓発本ですが、最初の転職に踏み出す行動力と勇気をもらった思い出深い本です。
4~6年目(業務系SE:業務系SIer時代)
SESでは、実装ばかりで設計や上流工程の経験がなかなか積ませてもらえず、キャリアに不安を感じため1度目の転職をしました。
一次請け(プライム)案件で業務系システムの導入をし、クライアントと直で接したり設計をする機会を得ることができました。
『達人に学ぶDB設計 徹底指南書』
『SQL ゼロからはじめるデータベース操作』と同じ作者の本です。
業務系SEにとってデータベースの設計能力は必須スキル。
多くのベストプラクティスとバッドノウハウが詰め込まれています。
著者サイトも勉強になるコンテンツが多く必見です。
『グラス片手にデータベース設計』シリーズ
これらはさらに業種業務知識に特化したデータベース設計の本です。
業務系のSEというのはエンジニアリングそのものよりも、その業種の事情を理解しながらシステム設計に落とし込んでいくことの方が難しい仕事です。
そのノウハウが詰まった良書です。
『マンガでわかる! 幼稚園児でもできた!! タスク管理超入門』
SESプログラマ時代はシングルタスクしか降ってこなかったのであまり意識することはなかったのですが、このあたりから記憶に頼ったタスク管理が破綻し始めたので方法を模索し始めました。
拙作ですが、こちらの記事に私の実践しているタスク管理について書いてます。
『なぜ、システム開発は必ずモメるのか?』
システム開発プロジェクトを推進する上でのあるあるとその対策が詰まった良書です。
SIerでプロジェクトを進めていると、日々色々なトラブルが降りかかり、どう対処するのか判断に困るシーンの連続です。
正解がない中で少しでも自分の手札を増やすためにこういった本を読んだり、先輩SEから学んでいました。
7年目~10年目(エンジニア/PM/マネージャー:クラウド系SIer)
上流工程を経験し設計も学べたものの、クラウドや最新のプログラミング言語などトレンドの技術からはすっかり置いて行かれてしまいました。
今一度エンジニアとして最新のことを追いかけることができる会社に行こうと2度目の転職をしました。
エンジニアとしてAWSなどのクラウド基盤でプログラマやアーキテクトを覚えながら、ブログなどのアウトプットも精力的に行うようになりました。
そして、前職の経験を買われPMやマネジメントにもチャレンジでき今に至ります。
ただ、このあたりから特定の技術書を深く読み込んだ思い出がありません(なのであまり紹介できる書籍がありません)。
昔に比べネットで手に入る質のよい情報が多くなったのと、自分で試して一次情報を拾える環境が整ったことも大きいように思います(最近ではAIに聞く選択肢も出てきました)。
『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』
過激なタイトルですが、人から実力があると見られるとはどういうことか、組織のなかでチャンスや評価を上手にもらっていくにはどのような振る舞いが求められるのかがわかる本です。
この本に限らず、人間力的な部分を鍛えることにも目が向くようになっていきました。もちろんそれを裏付ける技術力も大事ですが。
特定のプログラミング言語に絞ったようなハードスキルは時代の流れとともに陳腐化していきます。
しかし、仕事の進め方に代表されるようなソフトスキルはなかなか陳腐化していかないので長く戦える武器になります。
『プロジェクトのトラブル解決大全』
PMやPMOの真価が問われるのは炎上しそうな、あるいは炎上したときにどう立て直していくかだと思っています。
いくつもプロジェクトをやってきたなかで思うのは、プロジェクトという変数が多いものを管理するうえでこうしておけば上手くいくという正解はなくともセオリーはあるということです。
この本ではそんな炎上プロジェクトを鎮火、あるいは炎上させないために使えるメソッドがてんこ盛りです。
PM、PMOに限らず炎上に悩むすべてのエンジニアに読んでほしい本です。
おわりに
キャリアを振り返りながらその時々で読んできた本を紹介してみました。
10年働いてきましたが変わらない思いは、この業界は変化が多く、学ぶことも多く、だからこそ面白くこれからも第一線で働いていきたいということです。
これからエンジニアのキャリアを踏み出そうとしている人、今まさにキャリアを進めている人の参考になれば幸いです。
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