密度行列冪(Density Matrix Exponential)

嶋田義皓著の「量子コンピューティング 基本アルゴリズムから量子機械学習まで」の「3.7 データ行列を扱う」の式計算が分かりづらいので,丁寧に追ってみる.
密度行列冪とは
量子機械学習を実行するためには,アルゴリズム以外にデータの取り扱いも大事.
機械学習で扱う行列(データ)は,その多くはスパース(行列の要素のほとんどが0のこと)ではない.行列
手法
①行列
②
③
④
⑤SWAPした結果として,時間発展
このことを数式化したのが,
ただし,
SWAPゲートは,
で定義される.
ここからの教科書の流れは(*)式が成り立つことの証明(もっと言うと,後述する式(1)と(2)が等しいことの証明)をやっている.では実際に追ってみる.
計算過程
分かりやすいようにレジスタ
このとき,
式(2)が式(1)と等しいことを示す.
同様に
これらを
ここで,第2項について,左右からSWAPゲートを作用させているので,
が成り立つ.なぜならば,
したがって式(3)は,
となる.レジスタPに関する量子ビットの部分トレースをとる.
第1項は,
第2項も同様に
第3項は式(4)の計算結果を使うと,
第4項も同様に
以上より,tを1次の項まで微少量近似を行うと,
上式より式(1)と式(2)が等しいことは示せた.
まとめ
ある行列の時間発展をSWAPゲートを用いて近似するのが密度行列冪と呼ばれる手法.