DXから考え始めると迷走する理由
DXが迷走する会社の共通点:システム部門主導の落とし穴
DXのプロジェクトが迷走する会社には、はっきりした共通点がある。
それは 「システム部門主導でDXを始めてしまうこと」。
「この技術で何ができるか?」
「AIで何かできそうか?」
――こうした問いからスタートすると、おかしな方向に進んでしまう。
1. 逆流しているライン
本来あるべき流れはこう:
ユーザ部門(事業課題) → システム(手段)
しかし迷走する会社では、逆になっている。
システム(技術や仕組み) → ユーザ(使い道探し)
👉 この「逆流」こそが迷走の最大の原因。
課題が先にあるべきなのに、技術や製品ありきで走り出すため、システムは「飾り物」にしかならない。
2. なぜシステム部門主導だと迷走するのか
目的と手段が逆転する
システムはあくまで「手段」にすぎない。
しかしシステム部門主導で進めると、いつの間にか「システムを入れること」そのものが目的化してしまう。
ユーザ部門の課題が不明確
事業や現場の課題が定義されないまま進むため、システムを導入しても誰も使わない。
「便利な機能がありますよ」と言われても、現場にとって不要な仕組みなら形骸化するだけ。
成果につながらない
「このシステムで何かできませんか?」と逆立ちした探し方になるため、結局は成果が出ない。
数字改善や業務効率に直結しないから、経営層も現場も納得しない。
3. 実際によくある失敗例
-
新しいパッケージを入れたが、業務フローを見直さなかった
→ 使う画面が変わっただけで、非効率な承認や手作業はそのまま。システム更新に数千万投資したのに、成果はゼロ。 -
AIチャットボットを導入したが、解決したい課題を定義していなかった
→ 「使えない」と現場に嫌われ、問い合わせ数は減らず。むしろチャットボットを維持する人件費だけが膨らんだ。 -
ワークフローシステムを導入したが、承認ルートの無駄を整理しなかった
→ 紙がデジタルに置き換わっただけで、承認スピードは変わらない。マスタ管理だけが複雑になり、利用拡大できなかった。
👉 これらの失敗はすべて「システムが主語になっている」ことに起因する。
業務フローや課題を棚卸しせずに「システム導入=改革」と勘違いしてしまう。
4. なぜそんなことが起こるのか?
システム部門の構造的な限界
- システム部門は「仕組みを作る専門家」だが、「事業課題を定義する専門家」ではない
- 事業課題を語れるCIOやシステム部門長がいれば別だが、多くの会社には存在しない
ベンダー依存の弊害
- ベンダーは「売れる製品」を提案するので、「そのシステムで何を解決するか」という視点が後回しになる
- 導入が目的化し、使い道は後付けになる
経営層の丸投げ
- 経営層が「DXはITの話だ」と思ってシステム部門に丸投げする
- 結果としてシステム部門が孤軍奮闘し、課題なき投資が乱発される
5. 迷走を避けるには
出発点は常に 事業課題や数字の悪化 であるべき。
- 受注が減っている
- 在庫が膨らんでいる
- 残業が減らない
👉 こうした具体的な痛みから「どう変えるか」をユーザ部門が主体で描く必要がある。
そして、その実現手段として初めてシステムやDXを当てはめる。
この順序を逆にすれば、ほぼ確実に迷走する。
6. まとめ
DXは「目的」ではなく「手段」。
それなのにシステム部門主導で進めると、システムを入れること自体がゴールになり、何も変わらない。
- ユーザ部門の課題が起点
- 戦略と改革が中核
- DXはそのためのサポート
👉 DXから考え始める会社が迷走するのは、システムを主語にしているから。
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