# 1.2 Django の特徴:業務システムに向いている理由
1. フルスタック Web フレームワーク
Django は フルスタックフレームワーク。業務システム開発に必要な要素が最初から揃っているのが最大の特徴。
- 認証・権限管理
- 管理画面(Admin)
- ORM(モデルと DB の橋渡し)
- URL ルーティング
- テンプレートエンジン
- フォームバリデーション
これらをゼロから実装する必要がなく、必要最小限の設定だけで基盤が整う。
特に 管理画面(Django Admin)が標準で付いてくる のは、業務システムでは非常にありがたい。マスタ管理や承認フローの補助を即座に用意でき、PoC や試験導入の速度を大幅に高められる。
2. 認証・権限まわりが堅牢
業務システムで必須となる「誰が」「どの範囲まで」操作できるかの制御も、Django では標準サポートが充実している。
- ユーザー認証(ログイン / ログアウト / パスワード管理)
- 権限ベースのアクセス制御(view / add / change / delete 単位)
- グループ(ロール)ごとの権限付与
さらに、自社では Okta を認証基盤 として採用しているが、Django との連携は比較的容易で、SAML/OIDC を使ってスムーズに統合できた。
パーミッションの扱いはやや細かく煩雑に感じる部分もあるが、独自のロールモデルを設計すれば十分に柔軟な制御が可能だと判断している。
3. モデルベースの開発と柔軟性
Django の ORM は直感的で強力。
class Order(models.Model):
customer = models.ForeignKey(Customer, on_delete=models.CASCADE)
product = models.CharField(max_length=100)
quantity = models.IntegerField()
order_date = models.DateField()
これだけでテーブル定義・マイグレーション、管理画面からの CRUD、バリデーションまで自動生成される。
DB 設計とコードの乖離が少なく、保守性が高い のが特長。
もっとも、基幹システム刷新にあたり既存のデータベースは引き続き利用するため、何でもかんでも ORM に任せるわけではない。
一部は直接 SQL を書き、既存の複雑なクエリをそのまま活かす場面もある。
しかし検証した結果、Django は ORM と生 SQL を柔軟に使い分けられ、両立に問題はなかった。
この「必要に応じて選択できる柔軟性」も採用の決め手になった。
4. 豊富なライブラリとコミュニティ
Python ベースのため周辺ライブラリが豊富。
- Django REST Framework(DRF):API 開発の定番
- Celery:非同期処理・バッチ処理
- django-allauth:認証・OAuth 連携の拡張
さらに AI 活用との親和性 も見逃せない。
Python には機械学習・自然言語処理などのライブラリ資産が豊富に揃っており、
Django の中で AI サービスとの接続や補助機能を組み込むのは自然な流れだった。
今後の拡張を考えても、この親和性は大きなアドバンテージになる。
加えて、Django は歴史が長く、コミュニティ規模も大きい。英語圏・日本語圏ともに情報量が多く、実装に迷ったときに解決策を探しやすい。
5. 学習コストの低さ
Django は 規約ベースの思想が強い。
フレームワークが用意しているガイドラインに従えば自然と正しい設計に近づくため、余計な迷いが少ない。
Python 自体の学習コストも低いため、新しいメンバーが加わっても習得が容易。
特に 社内内製化 を進める上では、引き継ぎや教育の負荷が少ないことは大きなメリット。
まとめ
Django の特徴を整理すると:
- 認証・権限・管理画面を含むフルスタック構成
- Okta 認証や独自ロールモデルにも対応可能な柔軟性
- ORM と生 SQL を組み合わせ、既存データベースを活かせる
- Python ベースで AI ライブラリとの親和性が高い
- コミュニティが大きく情報が豊富
- 学習コストが低く、小規模体制の内製開発に適している
つまり Django は、「安心して速く作れる」だけでなく、「AI 活用や既存資産活用までを見据えた柔軟性を持つ」フレームワーク といえる。
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