DXって結局は何するの?
DXとは特別なことではない:「普通のことを普通にやる」だけ
DXという言葉が広まり、あちこちで「うちもDXをやらなきゃ」と声が上がっている。
だがいざ始めようとすると——
- 「何をすればいいのか分からない」
- 「結局、システム導入の話?」
と迷走する会社が後を絶たない。
では、DXで実際に何をすべきなのか?
1. DXの正体は「普通のことを普通にやる」こと
DXと聞くと何やら特別な取り組みに見える。だが本質はシンプル。
- 事業課題を出発点にする
- ゴールを明確にする
- 担当を決める
- 期限を切る
- 成果を数字で出す
これを地道に繰り返すだけである。
要するに「普通のことを普通にやる」だけ。
👉 それができない会社が多いからこそ、「DX」という旗を立ててようやく動かそうとしているのが現実。
2. DXの出発点は「経営戦略」
DXを「システム刷新」や「AI導入」の話だと考えると、必ず迷走する。
出発点はいつでも 経営戦略と事業課題 にある。
- 既存事業を維持するのか
- 強化してシェアを伸ばすのか
- ビジネスモデルを変えるのか
- 撤退して別の領域に進むのか
👉 この経営判断があって初めて「DX」という手段の出番になる。
もし経営戦略自体がぼんやりしているなら、DXどころではない。
3. 戦略を業務に落とし込む
経営が方向性を示したら、それを業務レベルに翻訳するのがDXの役割。
- 「納期厳守を競争力にする」
→ 在庫・進捗をリアルタイムで可視化し、現場に即時フィードバック - 「コスト競争力を高める」
→ 生産計画と実績を突き合わせ、ムダを徹底排除 - 「新規市場開拓」
→ 顧客ポータルやオンライン窓口を立ち上げ、顧客接点を強化
👉 経営の言葉を業務改善の言葉に変換する。
この「翻訳作業」こそがDXの真の価値だ。
4. プロジェクトとして小さく区切る
DXという言葉の響きに引っ張られて「大規模改革」を思い浮かべがちだが、やることは小さい単位の積み重ねとなる。
- ゴールを1つに絞る(例:納期回答を1日早める)
- 担当者を決める(旗振り役+数人で十分)
- 期限を決める(1〜3か月)
- 成果を数字で出す(例:棚卸差異を半減)
👉 これで立派なDXプロジェクトになる。
「大きく構えて動けない」よりも、「小さく始めて繰り返し広げる」方がはるかに前進する。
5. DX人材は「いない」のではなく「育っていない」
「うちにはDX人材がいない」と嘆く声は多い。
だが冷静に見れば、本当に人がいないのではなく、育てる仕組みが存在しないだけ というケースが大半。
なぜ育たないのか?
-
既存業務に縛り付けられている
現場の改善に時間を割けず、日々のルーチンに埋もれてしまう。 -
挑戦の場がない
失敗を恐れる文化が強く、試す機会が与えられない。 -
経営の後ろ盾がない
プロジェクトに取り組んでも、抵抗勢力から守られずに潰されてしまう。
育てるために必要な仕組み
-
小さなプロジェクトをOJTの場にする
例:棚卸差異の削減、納期回答のスピード改善など。短期間で成果が見えるテーマが最適。 -
経営がその人を守る
「このプロジェクトは会社としてやる」とトップが旗を振り、挑戦の失敗を許容する。 -
レビューやフィードバックの仕組みを整える
振り返りを形式化し、学びを個人の経験で終わらせず、組織知として蓄積する。
DX人材の本質
DX人材とは、特別な資格やスキルを持った人を外から連れてくることではない。
現場を理解し、課題を自分ごととして改善に取り組める人 のこと。
👉 DX人材は外部研修や資格試験では育たない。
実際の課題解決プロジェクトを通じて、失敗と改善を繰り返す中でしか成長しない。
「DX人材はいない」と嘆く前に、社内にいる芽を育てる仕組みを作れているか をまず疑うべき。
まとめ
DXでやるべきことは、
- 経営戦略を起点にする
- 戦略を業務に翻訳する
- 小さくプロジェクト化して成果を出す
- その過程で人材を育てる
つまりやることは、どの会社でも昔から言われてきた 「当たり前のこと」 。
👉 普通のことを普通にやる。
それができていないからこそ「DX」という言葉を旗印にしないと動かせない。
多くの企業は、DXを「システムを導入すること」「AIを取り入れること」と短絡して考えがち。
しかしシステム化やAI活用は、あくまで 事業を変えるための手段 にすぎない。
DXとは、特別な仕掛けではなく、事業を変えるための仕組みを普通に回すこと に他ならない。
それを忘れて「システムから考える」「AIから考える」と迷走すれば、結局は何も変わらないまま終わってしまう。
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