どこよりも早い人工知能学会2024参加レポート[Day1]

イノベーションは必ず学問の境界領域で起こる。 坂田 昌一 (物理学者)^{[1] [2]}

株式会社D2CのYです。現在開催中の人工知能学会全国大会2024について、現地静岡より(きっと)どこよりも早い速報レポートをお届けします！

はじめに

人工知能学会とは

人工知能学会全国大会^[3]は日本を代表する人工知能関連の研究発表会で、論文・ポスターから各講演・セッションまで豊富な発表から産学の研究の最先端を垣間見ることができます。
第38回目(!)の今回は、事前登録者数3289名、スポンサー109件、発表件数946件(当日案内より)と過去最大の規模だそうで、静岡浜松では熱き発表が行われています!

筆者は広告関連領域の技術調査を主なモチベーションとして参加しました。

関連記事のまとめ

• Day1: 本稿
• Day2: URL
• Day3: URL
• Day4: URL

おことわり

• 本稿はあくまで筆者の個人的・学術的関心と速報共有を主動機として執筆されたものであり、言及した論文の著者様・企業様と当社に特定の関わり合いはございません。また、時間の都合上全てのセッションを回れていないため、一部セッションのみへの言及となることをご了承ください。
• 本稿での論文・講演に対する言及は全て筆者の理解によるものであり、誤りがある場合は全て本稿筆者に帰責されます。万が一誤りがあった場合はご指摘いただけますと幸いです。

Day1 参加レポート

Day1 のタイムテーブルは以下からご確認いただけます。
https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2024/table/20240528

見ての通り全て見て回るのはとてもできないほどのコンテンツがありますので、ここでは中の人が巡ったなかからいくつかピックアップして概要をお届けします！

BSCにおける人的資本投資に対するAI導入が事業投資案の評価に与える影響^[4]

管理会計のツールであるBSC(Balaned ScoreCard)に焦点を当てたオンラインサーベイに関する研究。
人的資本投資の一環としてAIの導入(本研究内ではその主要テーマとしてパルスサーベイへの自然言語処理の適用をさしていた)を指標として取り込めているBSCが、そうでないBSCに比べて事業家からの投資評価を高める点、また会計関連分野の教育を受けた者は人的資本へのAI導入に否定的な傾向にある点などをサーベイと重回帰分析から検証されていて、大変興味深かったです。

論文の趣旨からは離れてしまうかもしれませんが、一会社員として個人的には社内での合意プロセスとしても拝見しました。
社内起業家や経営企画などの目線で「社内で中経や新規事業についてどのように上長の合意を得るか、投資をしてもらうか」という点で、AIへの言及が重要なファクターであるとBSCからも見て取れるのではないだろうかと感じました。

モバイルアプリと実店舗をつなぐトピックの抽出とその時間的変容^[5]

ECアプリと小売店舗での体験が統合されていることが消費者にどのように認知されているかを評価した研究。
アプリストアの関連口コミに対して構造トピックモデルを用いてトピックを抽出し、
統合体験に関連性が高いと思われるトピックに対して時系列的な考察をされていました。
コロナ禍の期間にアプリの評価得点が高いトピックがあるなど、消費者の背後のトレンドが可視化結果に容易に見て取れるのが大変興味深かったです。

広告画像の画像処理に基づく感情喚起状態の推定とCTR予測^[6]

広告のCTR(Click-through Ratio)予測において画像の感情喚起指標が重要であることを示した研究。
ラッセルの感情の円環モデル^[7]をベースにし、valence(快・不快を表す感情価) と arousal(感情的にどの程度覚醒しているかどうか)を評価指標として活用されています。
会場でのQAでも言及されていましたが、ユーザーへの広告掲出の頻度に影響を受けるという点が考察上非常に興味深かったです。

アップリフトモデリングに基づく費用対効果の高いクーポン配布対象者の決定法^[8]

クーポン配布の予算制約下での最適化問題を考えた研究。
クーポン配布による購入とコストそれぞれの条件付き平均処置効果(CATE)を考えることで、
追加的に1単位購入してもらうのに必要なコスト(add-on cost per action: ACPA)を算出することができるという、シンプルかつ非常に強力な手法を提案されていました。

むすびに

Day1はアップリフトモデリングやCTR予測など、当社としても関連性が高い領域の発表が多く大変有意義でした。
また会の雰囲気として質問が活発であり、学会聴講が初めての筆者としては大変素晴らしい環境だなと感動しました。
朝早くから運営してくださったオーガナイザーの皆様への心からの感謝と共に本稿を締めます！
明日以降、Day２〜4も公開更新予定ですのでぜひぜひご覧ください！

EoF

脚注

1. https://home.hiroshima-u.ac.jp/naka/wiki/wiki.cgi?�����˴ؤ���̾��

2. https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/seisaku/haihu09/publiccomment2.pdf

3. https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2024/

4. https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2024/subject/1L3-GS-10-02/tables?cryptoId=

5. https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2024/subject/1L3-GS-10-03/tables?cryptoId=

6. https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2024/subject/1L3-GS-10-04/tables?cryptoId=

7. 参考:ラッセルの感情円環モデル

8. https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2024/subject/1F5-GS-10-02/tables?cryptoId=