Googleが推奨する新しいリターゲティング手法について
はじめに
D2Cでエンジニアをしている、髙橋と申します。
近年インターネットユーザーの個人情報を保護する動向があり、EUではGDPR、アメリカではCCPA、日本では改正個人情報保護法が施行されました。
そういった動向の中でも特にインターネット業界を驚かせたのがChromeやSafari、Firefoxなどの主要ブラウザにおける3rd Party Cookieの制限であり、それは既にブラウザへ実装済み or 実装予定という状況です。
そんな中、Googleが開発を進めているChromeやAndroidといったプラットフォームにおいては、プライバシーを保護するための規制(Cookie以外も含む)やCookieを利用しない代替技術などの提案が「Privacy Sandbox」という取り組みの中で行われています。
プライバシー サンドボックスは、ウェブとAndroid アプリの両方でユーザーのプライバシー保護を強化する業界全体の取り組みです。提案しているソリューションでは個人の追跡を制限し、オープンで誰もがアクセスできる環境を維持しながら、ウェブとAndroid アプリで既存の技術に代わるより安全な手段を提供します。
The Privacy Sandboxから引用
今回は取り組みの中でCookieを利用しない新しいリターゲティング手法として提案されている「Protected Audience API(旧称FLEDGE)」の概要や仕組みについて、簡単にご紹介していきたいと思います。
これまでのCookieを利用した手法
これまでのリターゲティング配信では、ユーザー毎に異なるCookieを発行することで、Cookieの値によってユーザーを識別し、ユーザーが過去に閲覧した製品の広告を配信することができました。
以下はリターゲティング配信の流れの例になります。
しかし、Cookieの規制によりこれまで主流だった手法では、3rd Party Cookieの発行や読み取りが規制されてしまうため、ユーザーに適した広告表示が難しくなってしまいます。
Protected Audience APIを使った手法
Protected Audience APIはブラウザ内での広告掲載に関する意思決定をローカルで実行することが大きな特徴で、ユーザーの個人情報を外部のサーバーへ送信することがありません。
そのため、ユーザーのプライバシーを保護しながら、適切な広告を提供することができます。
調べていて感じたメリット・デメリット
メリット
- ユーザー情報がブラウザ外に提供されることはないため、ユーザーの識別やトラッキングが防げる
- Cookie情報が集められていない広告配信業者も、リターゲティングを行いやすくなる
デメリット
- 現状iOS上のブラウザや、Safari、Firefoxでは使えない
- Googleを主導とする団体の考え方で機能が大幅に変わったり、廃止される可能性がある
- 以前FLoCというAPIが注目を集めたが、各所からのフィードバックをもとに廃止された
まとめ
ユーザーを保護しながらターゲティングができる機能として素晴らしい点がありつつも、
大手の企業ほど規制を受けづらい1st Party Cookieやユーザー同意が取れたメールアドレスや電話番号をもとにしたIDを利用していたり、コンテキスチュアルターゲティングなどの個人を識別しない手法に移行している印象があるため、制約が多く不安定なProtected Audience APIが主流になっていくのはまだ少し先の話かもしれません。
(公開されてからまだ数ヶ月しか経過していないため、普及していないのは当たり前ではありますが)
また3rd Party Cookieの規制が入ることで広告効果の計測が難しくなりますが、Privacy Sandboxの代替技術ではノイズが入ったり、大まかな精度でしか計測ができないため、何かしらのIDが必要とされていることも、普及のハードルが高いと感じる要因だと思います。
ただ今後の議論や提案によっては機能が使いやすくなったり、使った方がメリットが大きくなる可能性はあるため、注目して最新情報を追っていく必要がありそうです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考
株式会社D2C d2c.co.jp のテックブログです。 D2Cは、NTTドコモと電通などの共同出資により設立されたデジタルマーケティング企業です。 ドコモの膨大なデータを活用した最適化を行える広告配信システムの開発をしています。
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