一切の感情を排したロジカルモンスターがコミュニティロゴを制作するとこうなる
世界の皆様、ご無沙汰しております!
サイバーセキュリティ特化コミュニティ:Cyber-sec+(サイバーセキュリティ プラス)
でコミュニティマネージャーを務めております Nissy と申します。
こちらは Cyber-sec+ Advent Calendar 2024 の初日(1日目)の記事です。
前回は「頑是ない歌:Cyber-sec+ 1周年記念」という熱苦しい記事を公開しましたが、次回作(本作)として 「一切の感情を排したロジカルモンスターがコミュニティロゴを制作するとこうなる」 をタイトルに記事を執筆することを明言しておりましたので、その通りに書き進めてまいりたいと思います。
ロゴとは?
まず「ロゴ」とは組織やブランドなどのイメージを図案化したもので「シンボルマーク(ロゴマーク)」と「ロゴタイプ」とが組み合わさったものです。
Cyber-sec+ Logo
Cyber-sec+ のロゴタイプ
初めはシンボルマークのみを制作するつもりでしたが、何故か勢い余ってロゴタイプまで制作してしまいました。「モノ余りの時代」と言われて久しい現代において「勢いは余らない」なんてことはないので、仕方がありません。
ロゴタイプ制作については、凄くざっくりとお伝えすると、
「流行りのフォント(当時:2023年11月〜12月頃)」が何かを調査し
デザイナーさんが既にお持ちになっているフォントで近しいものを選択する
という流れで制作しました。
「流行りのフォント」も複数が存在する中で何故にそのフォント(に近しいもの)を選択したのか、また「 + の位置」はどの様に決めたのかなど、ロゴタイプについても語るべきことは多くございますが、本記事ではシンボルマークに焦点を当てて筆を進めてまいりたいと思います。
Cyber-sec+ のシンボルマーク
「 Coco Mark 」から考えるシンボルマーク制作
紳士淑女の皆様におかれましては CHANEL というブランドは充分にご存知かと思います。
そのシンボルマークは「 Coco Mark 」と呼ばれる「 C 」と「反転した C 」とが重ねられたもので、創業者のニックネームである Coco Chanel の頭文字を取ったものであるとか、Chateau de Cremat(シャドー・ド・クレマ)というワイナリーの壁面に描かれていたものをシンボルマークとして利用しているとか、その誕生には諸説が存在しています。
CHANEL Logo
CHANEL のロゴには「女性のファッションを自由にしたい」という創業者の想いや「女性は強く美しい」「シンプルで洗練されたデザインの美しさ」など、多くの「メッセージ」「イメージ」が込められています。
それ故、それらを表現することができるようなものとして、ロゴは緻密な計算の末にデザインされており、その意味では例えば「相互の C 」の重なりが今より少しでも近づいていたり、逆に遠ざかっていたりすると、それは全く意図しない、異なる「表象[1]」となってしまいます。
「説明可能」なシンボルマークを
通常、多くのシンボルマークにはそういった「想い」などが込められ、その「想い」を我々は「感性」でもって理解・共感することが多いように思います。
一方で「感じ取る」という方法は自由度が高く、且つ難易度が高いと思っており、受け手によって「受け取り方」が異なれば、理解・共感できるかどうかは受け手側の「感性」によってしまう所が大きいと感じています。
「ヒトが主体的に行動・感情を決めているのではなく『構造』がヒトの行動・感情を引き起こしている」 と考えている私は、シンボルマークそのものが特定のイメージ・感情などを引き起こしているのだとは理解しつつも、例えば先に述べた「相互の C の距離感の違いによって生まれるイメージの差異」を理解することに関して言えば、正直、少なくとも私には難易度の高いことのように感じています。
そういった感覚から、私が制作するロゴに関しては 「感性」で理解・共感されるものではなく「説明可能」で「誰もが等しく充分に理解可能」なものにしたい と考えました。
形から語るシンボルマーク
シンボルマークの文字要素
Cyber-sec+ Symbol Mark
まず「説明可能」なシンボルマークを標榜するために、その「表象」は誰もが知る、且つ理解できる「記号」と結びついていることが重要だ と考えました。
その前提で Cyber-sec+ のシンボルマークに着目いただくと、まず始めに視界に飛び込んでくるのは「 S 」という文字に見える図案かと思います。
言わずもがな「 S 」という文字そのものは「記号」であり、それ単体では何の意味も持たないものですが、Cyber-sec+ のシンボルマークは その文字要素を含む「単語」或いは「文」でもって、込められた「想い」「イメージ」などが「説明可能」である状態を担保 しています。
また実は Cyber-sec+ のシンボルマークには「 S 」という文字以外にも複数の文字要素を含んでおり、以降はまず「文字要素」という観点からどの様な「想い」「イメージ」が込められているのかを説明してまいりたいと思います。
図案化された「 S 」が意味するもの
文字要素としての「 S 」は以下の「単語」「文」を表現する要素となっています。
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Safety and Security
- Cyber-sec+ は「サイバーセキュリティ」をテーマとして扱うコミュニティであり、ご多分に漏れず「安心・安全」を意味する「 S 」が文字要素として入っています。
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Specialized / Specific
- Cyber-sec+ はサイバーセキュリティに「特化」したコミュニティであり、サイバーセキュリティに関する「机上論」「理想論」に留まらない 「具体的」なテーマを取り扱うこと を示しています。
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Satisfied
- 「役立つ」ということはもちろん、それ以上に 「充足感」「喜び」を得られる ようなコミュニティとして機能することを意味しています。
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Search and Scroll
- オンラインコミュニケーションスペースである Cyber-sec+ Slack を中心として、Cyber-sec+ は サイバーセキュリティに関する「ありとあらゆる情報・知見が集積される場」となる ことを目指しており、例えば参加者は手元のスマートフォンなどから気軽にそれらの情報にアクセスできることを表現しています。
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Spirit of Mutual Assistance
- コミュニティに参加する全員が 「共助の精神」 を基に、参加者同士はもちろん、まだ見ぬ「未来の仲間たち」を含めて、相互に助け合うことのできる「場」として機能することを意味しています。
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Shorten the Mental Distance
- Cyber-sec+ Slack などを活用しながら、地理的な制約や時間的な制約などを超越した活発なコミュニケーションを通じて、参加者同士の 「精神的な距離感を縮める[2]」ことのできる コミュニティであることを表現しています。
「 S 」を構成する要素としての「 2 つの C 」
引き続き文字要素としての「 S 」に注目すると「青色」部分と「赤色」部分とが存在するなど、色の違いにお気づきになるかと思いますが、それぞれが実は「 C 」という文字要素となっています。
実はこの「 2 つの C 」という点にも意図があり、これらは「 Cyber-sec+ 」の「両端の C 」を示していますが「 S 」と同じく「 C 」という文字にも「想い」を込めていますので、ご説明したいと思います。
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Connect
- 「ヒトとサイバーセキュリティ」はもちろん「ヒトとヒト」や「ヒトと情報」などを 「繋ぐ」場でありたい という想いが込められています。
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Co-operate / Collaborate
- 単純に「何かを一緒に取り組む」ということ自体に価値を置きつつ、サイバーセキュリティに関する「共通の目的・目標」などの実現に向けて 「協力してコトに当たる」ことができる ようなコミュニティであることを示しています。
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Colleagues
- Cyber-sec+ に参加する皆さんは等しく「仲間」であり、楽しいこと・面白いことはもちろん、悩んでいること・困っていることなども共有し、参加者全員で解決することができるような場 であることを意味しています。
中心に配置された「 + 」
中心に配置された「 + 」は言わずもがな「 Cyber-sec+ 」の「 + 」を意味しており、先に示した「 C 」に近しい想いを表現しつつも、その他にも意味合いを持たせておりますので、簡単にご紹介させてください。
「 + 」には「 Connect する」という意味合いを持たせつつ「 Add on する」という意味合いも強く持たせています。
例えば、サイバーセキュリティに関するニュースも「ただシェアする」だけでなく、読み手に伝わりやすいようにポイントを纏めたり自分自身の意見を添えたりして 「情報」に「価値を付加」し、参加者が相互に知見を高め合えるようなイメージ を含めています。
その他、参加することで 「ポジティブになれる」 であったり、参加者同士で高め合うことによって 「労働資本としての市場価値が上がっていく」 などであったりのイメージも込められています。
シンボルマークの幾何要素
これまで「記号」としての文字要素「 S 」「 C 」に、紛うことなき記号である「 + 」に込められた「想い」「イメージ」のご説明をしてまいりましたが、それらを構成する幾何的な側面にも「想い」「イメージ」を込めておりますので、以降はそれらのご紹介ができればと思います。
正六面体で形成された「 S 」
お気づきになった方もいらっしゃるかも知れませんが、文字要素の「 S 」は「 2 つの C 」によって「平面」としての「 S 」を表現しながら「正六面体」を要素に含んで構成されています。
文字要素としての「 S 」が正六面体であることをご理解いただくために、まずは中心に位置する「 + 」の要素である「緑色の横棒」を取り除き「青色」の部分が「前面」に来るようにしたものをお見せします。
正六面体としての「 S 」
まだまだ「正六面体」であることが分かりにくい方のために、その他の要素を排除し「青色」と「赤色」との要素の重なりを意図的に解消して、少なくとも「立方体」に見えることを示すべく以下に展開します。
立方体
如何でしょうか?
「青色」の部分は上面、及び手前の辺を構成しているように、また「赤色」の部分は下面、及び奥の辺を構成しているように段々と見えてきませんか?
実は「正六面体」は正多面体の中で唯一、空間充填[3]が可能なものであり「余す所なく敷き詰められているイメージ」から、Cyber-sec+ がサイバーセキュリティに関する「ありとあらゆる情報」を漏れなくダブりなく保持しているイメージ を「正六面体」の要素を持つことでもって表現しています。
また「正六面体」そのもの及び「空間充填が可能である事実」から「美しさ」「均衡」「平和」の象徴としても機能させており、ともすると匿名の如何にかかわらず「正しさ」や「正義」などの名の下に攻撃的な表現でもってフィードバックがなされがちな昨今において、節度を守りながら「闊達な議論ができる美しい場[4]」 としてのイメージを付与しています。
不可能図形としての「交わり」
先の「正六面体」での説明で「 + 」を構成する「緑色の横棒」を取り除いた図案をお見せしましたが、あちらは実は「正六面体」であることを分かりやすくお伝えするために「青色」の要素を「前面」に持ってきておりました。
単純に「緑色の横棒」を取り除いた場合の図案は以下となり「赤色」の要素が「前面」に来る形になっています。
不可能図形
「正六面体」であるという前提の上でこちらをご覧になると、何か違和感を覚えませんでしょうか?
実は「決して交わることのない」筈の「青色」「赤色」の各辺が、中心で交わっています。
これは Cyber-sec+ という「場」があることによって、決して出会う筈のなかったヒトとの繋がりや「知見」「情報」などとの出会い を表現しています。
また「青色」「赤色」は「点対称」の位置、つまり「反対側」に位置した存在と中心で交わる形となっており、立場の異なる、或いは「視点」「観点」の異なる「意見」「考え方」との出会いを通じて、参加する皆さんの「知見」「情報」の拡がり、及び「思考の柔軟化」などに繋がる「場」となる ことを示しています。
ともすると「同質化」しがちなコミュニティにおいて、共通項を見つけて「安心」することの重要性は認識しつつも、サイバーセキュリティ特化コミュニティとして、知的好奇心を刺激したり、皆さんの「スキル」を進化させることにも寄与したい という想いが込められています。
余談ながらデザインの観点では「不可能図形」として交わっている部分に「緑色の横棒」を横たえることで「 + 」という記号を構成しており、且つその様に「交点」を隠すことによって「平面」としての「 S 」と「正六面体」との併存を成り立たせています。
「重なり」を表現する平行線
正六面体を構成する「青色」「赤色」各色には「形」としてもう一つの意味合いを持たせてあります。
形として歪で、且つ辺の一つが欠けている状態ではありますが、それぞれが実は「吹き出し」を象形しています。
吹き出し
いわずもがな「吹き出し」は「発言」「コミュニケーション」を指し示しており、その外側にある「平行線」は 「吹き出しの重なり」 を表現しています。
吹き出しの重なりを表現したデザイン
「吹き出し」が多く存在している状態はつまり「闊達なコミュニケーション」が行われている証左であり、自分自身に「近しい発言」も自分自身と「真反対の発言」も等しく存在し、中心で止揚[5]されることで「 + 」となるイメージ を持たせています。
色から語るシンボルマーク
「出自」を示す同一カラー「青」「赤」「緑」
Cyber-sec+ のシンボルカラーは「青」「赤」「緑」で構成されています。
これは Cyber-sec+ の創立に関わった一般社団法人サイバーセキュリティ連盟のシンボルマークのカラーを踏襲しております。
一般社団法人サイバーセキュリティ連盟 Symbol Mark
一般社団法人サイバーセキュリティ連盟と Cyber-sec+ とは別有機体であり、一般社団法人サイバーセキュリティ連盟の意思が及ぶものではないものの、活動の支援を求めることのできる存在ではあるため、その 関係性の強さを示す要素として同一のカラー を用いています。
実際の所は後述の理由から「青」「赤」、及び「緑」の使用が決まった訳ですが、一口に「青」と言っても「複数の青」が存在する中、カラーコードレベルで踏襲し最もらしい意味合いを持たせることでもって、その選択の正当性を示した形になります。
情報の循環を示す「青」「赤」
Cyber-sec+ のシンボルマークは「青色」と「赤色」との斜辺で形作られた文字要素「 S 」で構成されていますが、これに近しいもの、或いは想起されるものを皆さんは見覚えないでしょうか?
サインポール
どれだけの方が「サインポール」に辿り着いたか、或いはサインポールのことをどの程度でご存知かは知る由もございませんが、Cyber-sec+ の「青色」「赤色」にも同様の意味合いを込めております。
つまり 「青色」は「静脈」を「赤色」は「動脈」を示しており、言わずもがな「静脈」は「心臓へと向かう血流」を意味し「動脈」は「心臓から押し出されていく血流」を意味 しています。
「血液」を「知見」「情報」などに置き換えた際、その心臓たる Cyber-sec+ に サイバーセキュリティに関する「ありとあらゆる知見・情報」が集まること を期待し、且つそれらを基にした「アウトプット」を通じて、この世界に サイバーセキュリティを広く浸透させていく イメージを示しています。
そこで展開された「アウトプット」はやがて「新たな知見・情報」として Cyber-sec+ に「インプット」され、この絶え間ない循環でもって、この世界全体を「支えていく」ということを実現できれば という想いが込められています。
また「青色」が「上部」に来ているのは「情報」に限らず、まずは「ヒトが集まること」など、有機体としての「インプット」が先であると考え「上部」に配置しています。
先に来るものが「上部」となる背景は、少なくとも現代日本人の視線は上から下、左から右に流れることが多くあることから、そのように配置しています。
「安全」を意味する「緑」
緑十字:安全第一
「緑」は 「安全」 を意味する「緑十字」を意味しています。
事実、Cyber-sec+ のシンボルマークにおいても「 + 」=「十字に見える」要素のカラーとして選択しています。
この「安全」が意味する所は、サイバーセキュリティの文脈としての「安心・安全」はもちろんのこと「参加すること」「発言すること」「意見すること」「反論すること」など、その全てにおいて 「心理的安全性」が担保されている コミュニティであることを指し示しています。
終わりに
如何でしょうか?
「表象」の要素に一つとして無駄なものはなく、且つ単一の表象に複数の意味合いが込められていること、及びそれらは「説明可能」であること をご理解・ご認識いただけたのではないでしょうか?
あまりにも多くの「想い」「イメージ」が込められていることから「現時点における後付けなのではないか」というお声も聞こえてきそうですが、重要なことは「タイミング」ではなく「説明可能」であることだと思っており、たとえ「後付け」であったとしても、その様に 再現性が高く解釈可能な表象を創造できたこと を誇らしく思います。
Cyber-sec+ は当該シンボルマークが示す通り、サイバーセキュリティに特化したコミュニティとして「同質」「異質」な意見を含めた、この世界の ありとあらゆるサイバーセキュリティに関する情報が集まる「場」 として機能し、それらの情報の活用を通じて、参加者全員のスキルアップへの寄与や充足感の提供などはもちろん、世界全体の躍進を支え、守っていくことのできる「場」 となっていくことを目指してまいります。
皆さんもご一緒に Cyber-sec+ で 世界の躍進を支え、守っていきませんか?
続く Cyber-sec+ Advent Calendar 2024: 2 日目の記事は @laysakura(Sho Nakatani)さん の 『ソフトウェア研究における脅威モデリング』 です!是非ともご覧ください!
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知覚的・具象的に心に思い浮かべられる外的対象像のこと。例えば、我々は「林檎そのもの」を理解しており、形や色・艶、味などの異なる複数の「個別の林檎」を見ても、それらが全て「林檎」であることを認識することができる。これは「個別の林檎」が「林檎そのものの表象」であることを意味しており、翻って我々が「表象」から「事物の本質」「観念」を認識することができることを示している。 ↩︎
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「単純接触効果(ロバート・ザイアンス)」や「接触理論(ドナ・デスフォーゲス)」などで明らかにされている通り「接触」と「愛着」とには相関関係があり、Cyber-sec+ ではオンラインコミュニケーションスペース:Cyber-sec+ Slack での「活発なやり取り」を通じて「精神的な距離感」が縮まることを期待している。 ↩︎
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ある空間内を図形で隙間なく埋め尽くすこと。 ↩︎
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これは「反論」「訂正」されることを否定しているのではない。第三者による「反論」が許されないなら、それは「信仰」である。 ↩︎
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読み方は「シヨウ」。原語であるドイツ語では「Aufheben:アウフヘーベン」となる。互いの考えの要素を保持したままより高い次元へと引き上げ、新たな一つの概念へと昇華すること。 ↩︎
Discussion