【備忘録】なぜ日本のITは「技術トレンド」に遅れるのか?経営者と話してわかった構造の闇
はじめに
こんにちは、駆け出しエンジニアの croco です。
先日、あるIT企業の経営者の方と「日本のIT産業の課題」について深くお話しする機会がありました。そこで突きつけられたのは、「なぜ日本企業は新しい技術(AIやクラウドなど)のキャッチアップが遅いのか?」という問いに対する、あまりに根深い構造的な理由でした。
技術力不足でも、やる気不足でもない。「業界の構造そのもの」が技術の進化を阻んでいるという話が非常に衝撃的だったので、備忘録としてまとめます。
日本と世界の決定的な違い:「エンジニアはどこにいる?」
まず指摘されたのが、日本と海外におけるエンジニアの所属の違いです。
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世界(米国など): エンジニアは「事業会社(ユーザー企業)」の中にいる
- 銀行、小売、メーカーなどが自社でエンジニアを雇用し、自社のビジネスのためにシステムを作る(内製化)
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日本: エンジニアは「SIer(システムインテグレーター)」にいる
- 事業会社はシステム開発を外注し、SIerがそれを受託する
この「外注構造」が、すべての問題の起点になっています。
なぜ「外注」だと技術トレンドに遅れるのか?
「餅は餅屋で、プロ(SIer)に任せた方が技術レベルは高いのでは?」私は最初そう思っていました。しかし、現実は逆になりがちです。ここには「多重下請け」と「分業の弊害」が絡んでいます。
1. 「作る人」と「考える人」の分断
日本のSIer構造(特に大手)では、以下のような役割分担が固定化されています。
- 大手SIer(上流): 顧客折衝、要件定義、進捗管理(Excel/パワポ)。コードは書かない
- 下請け企業(下流): 設計書通りに実装する。ビジネスの目的は知らされない
この結果、「ビジネスの意思決定をする人が、技術(コード)に触っていない」という状態が生まれます。
モダンな技術(AI、クラウドネイティブ、アジャイル)は、実際に手を動かして試行錯誤することで、「何ができて、何ができないか」という勘所が掴めるものです。しかし、上流の人は管理しかしないため、技術のリアリティが持てません。結果として、リスクを恐れて**「枯れた(古い)技術」や「昔ながらのやり方」**を選択せざるをえなくなります。
2. 学びが社内に蓄積されない
海外のように内製化していれば、失敗も成功もすべて「自社の知見(アセット)」として蓄積されます。しかし日本では、開発を丸投げしてしまうため、実装を通じて得られた「次はこうすればもっと良くなる」という学びが社内に残りません。
結果、いつまで経っても自社で技術判断ができず、ベンダー依存から抜け出せない悪循環に陥ります。
ウォーターフォールが「必然」になる契約の罠
さらに、技術選定を古くさせているのが「契約形態」です。
- 日本: 請負契約(完成責任)。「最初に決めた機能を、決めた納期で納品する」
- 世界: 準委任契約や内製。「時間や成果に対して対価を払い、柔軟に変更しながら作る」
AI開発やWebサービス開発は、やってみないと正解がわからないため、作りながら変えていく(アジャイル)のが世界の常識です。しかし、日本の「最初に仕様をガチガチに固める」契約構造では、途中で仕様変更するとペナルティ(追加費用)が発生します。
結局、「最初から正解がわかっている古いシステム」を作るようなプロジェクトしか承認されず、イノベーションが起きにくくなっているのです。
これからのエンジニアはどう生きるべきか?
この話を聞いて、私は「ただコードが書けるだけのエンジニア」では、この構造の中で埋もれてしまうと危機感を持ちました。
これからの時代に必要なのは、以下の要素を兼ね備えることが大切。
- フルスタックな実装力: 上流だけで口を動かすのではなく、自分でプロトタイプを作って「動くモノ」で議論をリードできる力
- ドメイン知識(ビジネス理解): 言われた機能を作るだけでなく、その業界(金融、医療など)の課題を理解し、技術で解決策を提案できる力
おわりに
「なぜ日本のシステム開発はイケてないのか?」と嘆くのは簡単ですが、その背景にはこうした歴史的な産業構造がありました。これからエンジニアを目指す方は、「その会社はエンジニアをどう位置付けているか?(コストか、投資か)」を見極めることが、キャリアを左右する重要な視点になりそうです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
Discussion
え、1と2が高レベルでできる人がいるなら今すぐクリニックで雇用したいんだけど