COTEN 初の研究成果発表! Science of Science 2025 参加までの道のり
COTEN の佐原です。会社では k と呼ばれています。
実は先日 COTEN として初めて、社内の研究成果をポスター発表という形で世に出しました。報告の場は Science of Science という研究会です。
今回は発表に至るまでの経緯と研究会当日の様子について、簡単にお伝えしたいと思います。研究内容については最後のおまけをご覧ください。
参加の経緯
「COTEN と Science (of Science) に一体どんな関係が?」と思ったそこあなた!鋭いですね。まずはその背景からお話しましょう。
COTEN とデータサイエンス
COTEN は「人文知と社会の架け橋になる」ことを標榜しています。特に歴史を主なテーマとして扱っているわけですが、一般にその研究手法には史料調査やナラティブ分析など、様々なものがあります。 COTEN はそのなかでも特に社会学的なアプローチを志向していると言えるでしょう。すなわち、歴史の因果関係や構造変動のメカニズムを明らかにするという営みです。
実はこの考え方、データサイエンスとも親和性が高いのではないかと僕自身は考えています。たとえば古典的な機械学習では、大量のデータからパターンを抽出することが行われます。構造化された歴史のデータが十分にあれば、こうした分析をすること自体は理論的に可能です。
また同時に、信頼性のあるデータセットを構築することの重要性も高まってきています。インターネット上に学術的な根拠のない情報が溢れていることはみなさんもご存知のとおりですし、目覚ましい勢いで発展している大規模言語モデル(LLM)もこのようなデータを使って学習していると考えられるからです。ここでは、データ収集における効率性と信頼性のトレードオフが問題となります。
このように「歴史のデータを分析する」「歴史のデータを収集する」、両面においてデータサイエンスは非常に重要な役割を果たすわけです。
COTEN とアカデミア
そういった背景から、 COTEN でも早くから Lab を立ち上げてデータサイエンスに関わる研究を行ってきました。しかし、ここには実に多くの課題があります。そもそも歴史に関する論文や書籍がオンライン上にない。物理や化学の分野を日ごろ扱っている僕にとっては(普段大学で研究もしています)、資料へのアクセス方法ひとつとってもこんなにも大きな違いが出るんだ、というところにまず驚きがありました。
このような課題を 1 つひとつ解決してゆく必要があるのですが、史料のアーカイブを含めたデータセットの構築、あるいはその先の分析においても、 COTEN 1 社がこれらをすべて行う必要はありません。むしろ政府や大学、他の企業と協力して進めることが、公益性の面でも重要です。
アカデミアともなにか一緒におもしろい活動ができないか模索しているなか、ある日 COTEN を支援してくださっている大学の研究者と会話する機会がありました。ここでは色んなお話をしたのですが、そこで気づいたのは「実は僕らの抱えている課題は一般的なものであり、これを解決するための取り組みを提示するだけでも、社会にとって意味があるのかもしれない」ということでした。
その彼が後日、本研究会の紹介をしてくれます。そう、これが参加の直接のきっかけとなったのです。
研究会の様子
発表後の写真です。ポスター前でみんなで撮るのを忘れてしまった!
チュートリアルと懇親会(2025 年 5 月 31 日)
この日は僕ひとりで参加しました。内容はチュートリアルです。特に印象に残ったのはその後の懇親会で、 3 時間以上にわたって議論したあげく、さらにはその後路上で語りあうという、なかなかない体験をしました。十数名参加していたかと思いますが、ほぼ全員と会話した記憶があります。大学の教員 / 学生 / URA(研究活動のマネジメントや支援を行う専門職)、省庁の科学技術政策担当、企業の研究者など、様々な人たちと意見交換ができました。とにかく熱量がすごかった!
ポスター発表(2025 年 6 月 1 日)
この日は発表当日ということで、陽夏とかおちゃんも参加してくれました。ポスターセッション以外にも招待講演とパネルディスカッションがあり、ここでも当然のように熱い議論が繰り広げられていました。詳細はここでは割愛しますが、 Science of Science とは言いつつ人文系の研究者たちの成果をどのように評価すべきか、といった内容にまで踏み込んでいたのが新鮮でした。
肝心のポスター発表は常にひとが集まってくる状況だったので、 3 人総出で研究内容を紹介することとなります。みなさんとの議論を通じて感じたのは、冒頭で紹介した「人文知と社会の架け橋になる」という世界観がより一層身近に感じられたこと。僕らはまだプロダクトを公開していないので、ユーザーとの接点が現段階でほとんどありません。そんななか、「こんなふうに歴史のデータを使ってみたい」「この技術を使えば今の課題は解決できるのではないか」というフィードバックがもらえること自体が、とても有意義でありました。
最後に
結局当日の様子より背景の方が長くなってしまいましたが、 Science of Science 2025 への参加は今後僕らが本格的な研究活動を始めてゆくための第一歩になったのではないかと考えています。僕個人としても、外部のひとと議論することがこんなにもエキサイティングなんだ、というのを改めて感じることができました。関係者のみなさん、本当にありがとうございました!
おまけ
Science of Science での発表と関連した研究成果を、 2025 年 9 月に Japanese Association for Digital Humanities のカンファレンスでも報告する予定です。ご興味のある方はぜひこの場でお会いしましょう!
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