世界史データベースの機能とそれを決めるまでの道のり
こんにちは、世界史データベースの開発チームのソフトウェアエンジニアのYusakuです。
株式会社COTENでは「人文知と社会の架け橋になる」という存在意義のもと、世界史のデータベースを開発しています。
データベースというとRDBやNoSQLなどストレージ機能を思い浮かべる方も多いと思いますが、
COTENでは世界史のデータを活用したアプリケーションも含めて世界史データベースと呼んでいます。
世界史データベースと言われても、世界にはまだそのようなアプリケーションは普及しておらず、
「世界史データベースとは一体何なのか?」と疑問を持たれる方も多いと思います。
この記事では世界史データベースの開発中の8つの機能をご紹介させていただきます。
世界史データベースの8つの機能
- タイムライン
- 人物や出来事をガントチャートのような見た目で表示
- 地図
- 出来事・経路・領土などの地物を点と線と面で地図上に表示
- 統計
- 集計データや統計データをチャート形式で表示
- 概要
- 人物や出来事の概要や年譜を表示
- 年譜比較
- 人物の年譜を比較
- ダイアグラム
- 家系図などの図表
- エピソード
- 人物の逸話
- 評価
- 人物の評価
機能とデータの話が混ざっているので、厳密には「機能」と呼ぶのは正しくないかもしれませんが、
この記事ではこれらを機能として話を進めさせていただきます。
なお、歴史を調べる際に8つの機能がすべてが必要なわけではありません。
ではなぜ8つも機能を作る必要があるのでしょうか?
なぜ8つも機能を作るのか?
私たちは世界史データベースを使って、より多くの人に歴史(ひいては人文知)に触れてもらうことを目的としています。
しかし、歴史を調べるという活動はテーマや目的によって必要となる機能が異なります。
また、調べた歴史を文章以外の見方を提示することで歴史に触れるハードルを下げられるのではないかと考えています。
調査テーマによって機能は異なる
調べたいテーマや目的によっては不要な機能も存在します。
人物を調べる際はタイムライン、概要、ダイアグラム、エピソード、評価を使い、
国の通史を調べる際はタイムライン、概要、地図、統計を使うなどの使い分けは発生するでしょう。
目的によって機能は異なる
歴史を調べる目的に応じてもほしい機能は変わってきます。
史学概論では歴史を調べる目的を3つに区分しています。
- 尚古的歴史学: 歴史的個体への知的興味を満たすことを目的とする(ジャンヌ・ダルクを調査するなど)
- 反省的歴史学: 過去に照らして現在の社会や文化を対比するを目的とする(古代アテネの民主政を知ることで現在の民主主義をより理解する)
- 発展的歴史学: 歴史の発展の筋道を考えることを目的とする(フランス革命が発生した原因や因果関係を考える)
これらの目的を満たすためには、調査のテーマ同様、いくつかの機能を組み合わせて調査を行う必要があります。
ユーザーの特性によって機能は異なる
ユーザーの性質や持っている知識によって欲しい機能は異なります。
文章を読むことが得意な人もいれば、絵で理解するのが得意な人もいます。
もともと歴史が好きな人もいれば、そうでない人もいます。
より多くの人に歴史に触れてもらうためには、文章や絵などが相互補完的に見れることが大事だと考えています。
どのように機能を洗い出したのか?
COTENではCOTEN RADIOというPodcastを制作しています。
このPodcastでは様々な歴史をテーマごとに深く掘り下げ、皆さんの日常やビジネスに新たな発見をしていただけるような内容になっています。
COTENではこのPodcastを作るための歴史調査チームを内製しており、
このチームはこのPodcastをひとつの歴史テーマを調査する際に、数十冊もの本を調査し内容をまとめています。
歴史調査チームへの度重なるヒアリングや歴史調査の参加を経てこれらの機能を洗い出しました。
実際に歴史調査を行っているチームの隣で機能を開発できることはCOTENの強みであると感じています。
社内でのヒアリングにとどめていた理由
COTENは株式会社という組織でありながら、広く使われる世界史データベースを作ることを目指しています。
特定の組織やユーザーの課題解決を目的としてしまうことで、「広く使われる世界史データベース」というスタンスが崩れてしまうことを恐れていたため、社内のヒアリングにとどめていました。
よって、社内の歴史調査チームにヒアリングを行いつつも、彼らの課題に特化したツールになりすぎないよう考えながら機能を固めていきました。
(社内向けの課題に特化したアプリケーションも作っていますが、それはまた別の機会にて)
これから
世界史データベースはこれまでは「プロダクトアウト」的な作り方を行い機能要件などを固めてきました。
機能は決まったもののユーザーにとって「歴史に触れやすく、使いやすい」形はまだまだ模索している段階です。
今後は社外に向けての情報発信やユーザーテストの機会を増やし、リリースに向けて準備していきたいと思います。
折に触れてご協力いただけると幸いです。
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