自由表面を有する矩形水槽において、加速度応答による変動水圧分布の算定式のうちの一つである、Housnerの近似式について、導出過程を日本語で概要をまとめたWeb記事がなかったので備忘録として残します。
衝撃圧
側壁にある加速度を与えると、上図の微小区間に拘束される流体の垂直方向の速度は、
非圧縮性流体のとき、加速度は同様に下式を満たす。
\dot{v} = (h-y)\frac{d\dot{u}}{dx}
流体の密度を \rho とすると、流体中の圧力は下式で求められる。
\frac{\partial p}{\partial y} = - \rho \dot{v}
側壁に作用する水平方向の力の総和は次のようになる。
これらの式を変形すると下式のように書ける。
\begin{align}
\dot{v} &=
(h-y) \frac{d \dot{u}}{dx}
\\
p &=
- \rho \int_0^y (h-y) \frac{d\dot{u}}{dx} dy
= - \rho h^2 \left(y/h - \frac{1}{2}(y/h^2) \right) \frac{d \dot{u}}{dx}
\\
P &=
-\rho h^2 \int_0^y \left(y/h - \frac{1}{2}(y/h)^2 \right) \frac{d \dot{u}}{dx} dy
= \rho h^3 / 3 \frac{d\dot{u}}{dx}
\end{align}
加速度 \dot{u} は、2枚の膜の間に含まれる流体の水平方向の動きから決定され、微小区間の左右2つの面の圧力が異なれば、x方向に加速されることになる。
運動方程式は、
\frac{dP}{dx} = - \rho h \, dx \, \dot{u}
P について代入して変形すると、
\begin{align}
\frac{d^2 \dot{u}}{dx^2} - \frac{3}{h^2}\dot{u} = 0
\end{align}
\dot{u}の一般解は、
\begin{align}
\dot{u} =
C_1 \, \text{cosh} \sqrt{3} \, \frac{x}{h}
+
C_2 \, \text{sinh} \sqrt{3} \, \frac{x}{h}
\end{align}
矩形水槽に作用する変動水圧
矩形水槽では、境界条件は x = \pm l のとき、\dot{u} = \dot{u_0}となる。
このとき、
\begin{align}
\dot{u_0} &=
C_1 \, \text{cosh} \sqrt{3} \, \frac{l}{h}
+
C_2 \, \text{sinh} \sqrt{3} \, \frac{l}{h}
\\
\dot{u_0} &=
C_1 \, \text{cosh} \sqrt{3} \, \frac{-l}{h}
+
C_2 \, \text{sinh} \sqrt{3} \, \frac{-l}{h}
= C_1 \, \text{cosh} \sqrt{3} \, \frac{l}{h}
-
C_2 \, \text{sinh} \sqrt{3} \, \frac{l}{h}
\end{align}
よって、
\begin{align}
C_1 &= \frac{\dot{u_0}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}}
\\
C_2 &= 0
\end{align}
したがって、矩形水槽の場合の加速度 \dot{u} は、
\dot{u} = \dot{u_0} \frac{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{x}{h}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}}
となる。また、圧力に関する式は次のようになる。
\begin{align}
p &= - \rho \dot{u_0} h \sqrt{3} \left(y/h - \frac{1}{2}(y/h)^2 \right)
\frac{\text{sinh}\sqrt{3}\frac{x}{h}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}}
\\
P &= - \rho \dot{u_0} \frac{h^2}{3}
\frac{\text{sinh}\sqrt{3}\frac{x}{h}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}}
\end{align}
側壁に働く変動水圧は、符号に注意すると x=l のとき、
p_w = \rho \dot{u_0} h \sqrt{3} \left(y/h - \frac{1}{2}(y/h)^2 \right)
\,\text{tanh}\sqrt{3}\frac{l}{h}
底壁に働く変動水圧は、 y=h のとき、
p_w = \rho \dot{u_0} h \frac{\sqrt{3}}{2}
\,\frac{\text{sinh}\sqrt{3}\frac{x}{h}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}}
参考文献
- 『円筒貯槽の地震入力』 河野和間ら
- 『FRP構造の設計基準とその事例』 邉 吾一
- THE DYNAMIC BEHAVIOR OF WATER TANKS, G. W. Housner.
- DYNAMIC PRESSURE ON ACCELERATED FLUID CONTAINERS, G. W. Housner.
Discussion