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Housnerの近似式

2022/12/10に公開

自由表面を有する矩形水槽において、加速度応答による変動水圧分布の算定式のうちの一つである、Housnerの近似式について、導出過程を日本語で概要をまとめたWeb記事がなかったので備忘録として残します。

衝撃圧

側壁にある加速度を与えると、上図の微小区間に拘束される流体の垂直方向の速度は、

v = (h-y)\frac{du}{dx}

非圧縮性流体のとき、加速度は同様に下式を満たす。

\dot{v} = (h-y)\frac{d\dot{u}}{dx}

流体の密度を \rho とすると、流体中の圧力は下式で求められる。

\frac{\partial p}{\partial y} = - \rho \dot{v}

側壁に作用する水平方向の力の総和は次のようになる。

P = \int_0^h p \, dy

これらの式を変形すると下式のように書ける。

\begin{align} \dot{v} &= (h-y) \frac{d \dot{u}}{dx} \\ p &= - \rho \int_0^y (h-y) \frac{d\dot{u}}{dx} dy = - \rho h^2 \left(y/h - \frac{1}{2}(y/h^2) \right) \frac{d \dot{u}}{dx} \\ P &= -\rho h^2 \int_0^y \left(y/h - \frac{1}{2}(y/h)^2 \right) \frac{d \dot{u}}{dx} dy = \rho h^3 / 3 \frac{d\dot{u}}{dx} \end{align}

加速度 \dot{u} は、2枚の膜の間に含まれる流体の水平方向の動きから決定され、微小区間の左右2つの面の圧力が異なれば、x方向に加速されることになる。
運動方程式は、

\frac{dP}{dx} = - \rho h \, dx \, \dot{u}

P について代入して変形すると、

\begin{align} \frac{d^2 \dot{u}}{dx^2} - \frac{3}{h^2}\dot{u} = 0 \end{align}

\dot{u}の一般解は、

\begin{align} \dot{u} = C_1 \, \text{cosh} \sqrt{3} \, \frac{x}{h} + C_2 \, \text{sinh} \sqrt{3} \, \frac{x}{h} \end{align}

矩形水槽に作用する変動水圧

矩形水槽では、境界条件は x = \pm l のとき、\dot{u} = \dot{u_0}となる。
このとき、

\begin{align} \dot{u_0} &= C_1 \, \text{cosh} \sqrt{3} \, \frac{l}{h} + C_2 \, \text{sinh} \sqrt{3} \, \frac{l}{h} \\ \dot{u_0} &= C_1 \, \text{cosh} \sqrt{3} \, \frac{-l}{h} + C_2 \, \text{sinh} \sqrt{3} \, \frac{-l}{h} = C_1 \, \text{cosh} \sqrt{3} \, \frac{l}{h} - C_2 \, \text{sinh} \sqrt{3} \, \frac{l}{h} \end{align}

よって、

\begin{align} C_1 &= \frac{\dot{u_0}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}} \\ C_2 &= 0 \end{align}

したがって、矩形水槽の場合の加速度 \dot{u} は、

\dot{u} = \dot{u_0} \frac{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{x}{h}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}}

となる。また、圧力に関する式は次のようになる。

\begin{align} p &= - \rho \dot{u_0} h \sqrt{3} \left(y/h - \frac{1}{2}(y/h)^2 \right) \frac{\text{sinh}\sqrt{3}\frac{x}{h}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}} \\ P &= - \rho \dot{u_0} \frac{h^2}{3} \frac{\text{sinh}\sqrt{3}\frac{x}{h}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}} \end{align}

側壁に働く変動水圧は、符号に注意すると x=l のとき、

p_w = \rho \dot{u_0} h \sqrt{3} \left(y/h - \frac{1}{2}(y/h)^2 \right) \,\text{tanh}\sqrt{3}\frac{l}{h}

底壁に働く変動水圧は、 y=h のとき、

p_w = \rho \dot{u_0} h \frac{\sqrt{3}}{2} \,\frac{\text{sinh}\sqrt{3}\frac{x}{h}}{\text{cosh}\sqrt{3}\frac{l}{h}}

参考文献

  • 『円筒貯槽の地震入力』 河野和間ら
  • 『FRP構造の設計基準とその事例』 邉 吾一
  • THE DYNAMIC BEHAVIOR OF WATER TANKS, G. W. Housner.
  • DYNAMIC PRESSURE ON ACCELERATED FLUID CONTAINERS, G. W. Housner.

Discussion