NVIDIA AI Summit Japan 2024レポート
東京へ行くのは月一回程度ですが、最近の東京はやたら人が多くなったような気がする伊藤です。
1. 概要
2024年11月12〜13日、東京芝公園の「ザ・プリンス パークタワー東京」にて、NVIDIA主催の"NVIDIA AI Summit"が開催されました。
NVIDIAの大きなリアルイベントが日本で開催されるのは久しぶり。招待制だったのですが、今回はJDLA(日本ディープラーニング協会)のE資格合格者向けにNVIDIAからの抽選招待枠があり、当選できたので参加してきました。
2025年は、サンノゼでのGTCが復活するそうです。行きたい!
2. カンファレンスの内容
セッションリストはこちらに記載されていますが、
以下のセッションを聴いてきました。
- Jensen Huang によるファイヤーサイド チャット
- 特別講演: 日本の生成 AI 現在地と未来
- NVIDIA NIM ですぐに実現する本番環境での高速な LLM 推論
- Robotics and Physical AI in the Era of Generative AI
- 量子グランドチャレンジのための AI スーパーコンピューティング
- ソフトバンクが考える AI - RAN の基盤技術と AI ユースケース
また、展示ホールも見て回ってきたので、いくつか紹介したいと思います。
3. セッション
まずはジェンセンCEOのプレゼン待機列を……。すごい人の数でした。注目度の高さが伺えます。この状態で30分ほど並んでましたが、開場は開演の1時間半ほど前だったはずなので、先頭の方はたぶん1時間以上並んでおられたのではないかと思います。
※Wikipediaには「ジェンスン」と記載されていますが、当日、孫さんも松尾先生も「ジェンセン」と呼ばれていたので、それに倣いました。
1. Jensen Huang によるファイヤーサイド チャット
いつものごとく、活発にステージを歩き回りながらのパワフルなステージ。新しいGPUボードを抱えての紹介もありました。
なお、同時通訳はAIによる自動翻訳がスクリーンに表示されていましたが、お世辞にも精度が高いと言えるものではなく、文節を追いかけながら訳が変わっていくので何度も読まなければならないのと、多分汎用辞書なため専門用語やカタカナ語が正しく表記されていないことも多々あり、わかりづらかったです。
ここは今後の進化に期待。
後半は、孫正義氏との「ファイヤーサイドチャット」。
「暖炉脇でのおしゃべり」ということでしょうか。終始和やかな雰囲気で、けれど現在の課題や未来を見据えた興味深い話が聴けました。
孫さんがNVIDIAを買いそびれた笑い話なども交えつつ、お二人同意見の主題はデジタルと物理、2種類のAI、つまりAIエージェントと、ロボティクスの話でした。
その中でもやはり印象深かったのは、「日本は昔からロボットの国。ロボット+AIで世界をリードできるはず。」という話。やはり日本はロボットを作らなきゃ!
2. 特別講演: 日本の生成 AI 現在地と未来
ランチタイムの後、メイン会場にて、JDLA理事長でもある東大松尾教授のセッション。
松尾先生の講演は2017年以来何度も聴いていますが、必ず初めて聴く新しい情報が盛り込まれていて、毎回とても興味深く拝聴しています。「最近の生成AIブームにおける日本の動きはなかなか良く、世界をリードできている面もある」といううれしい話がある一方、「でも正しい手を差し続けないとこの30年間負け続けてきたのと同様あっさり負けるので安心しててはダメ」という警鐘もありました。
一方で、ファイヤーサイドチャットでの話にも触れながら「日本の勝ち筋はやはりロボット+AIだろう」とまとめられました。
3. セッション
数多くのセッションがありますが、以下の4つを聴きました。
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NVIDIA NIM ですぐに実現する本番環境での高速な LLM 推論
NVIDIA NIMは以前このブログでも触れましたが、より専門的な話が聞けるかと参加。簡単に使えるようパッケージ化したというだけではなく、使うGPUの構成に合わせて、また、速度と精度どちらを重視するかなどについて、NVIDIAの専門チームがハイパーパラメータをチューニングしているとのことで、ただモデルを持ってきて動かしたときよりかなりパフォーマンスが良くなっているとのこと。NIMを使うメリットは想像以上に大きいことがわかりました。 -
Robotics and Physical AI in the Era of Generative AI
ロボット開発プラットフォームで高度な物理シミュレーション環境も備えたIssacの話。
いつか自分で3D環境を作ってロボットシミュレーションを動かしてみたい。
プレゼンターはインドの方でしたが「子供の頃ジャイアントロボをテレビで見て感動し、のちに"これが1960年代に作られていた"ことを知って驚愕した。大人になってASIMOと遊んでさらに感動した。日本はロボットの国だ。」とここでもロボット・ジャパンが出てきました。
危険な仕事、労働力不足、介護のため今後ロボットは絶対に必要だ、と力説されていました。 -
量子グランドチャレンジのための AI スーパーコンピューティング
量子コンピュータの話は、NVIDIAではあまり聴かなかったので興味を持ちました。
「このタイトルでは必ず聴かれることなのですが、NVIDIAでは、Cubitは作っていません。」というところから始まりました。
Cubitは作っていないけど、GPUマシンを使った量子コンピューティングのために必要な環境構築は以前から研究されているとのこと。これも今後の発展に期待です。 -
ソフトバンクが考える AI - RAN の基盤技術と AI ユースケース
RANとは、Radio Access Networkの略で、5Gに関する勉強をしていると最初に出てきます。
5G通信最適化のような話なのかと思いましたが、5Gの基地局に計算資源を搭載してAI化するという話でした。「AITRAS」という名前ですでにサービス化されているとのこと。
4. 展示会場
展示会場も終日大盛況でした。
NVIDIAの展示会はどうしても個人的にハードウェア寄りに興味を惹かれるのでそちらメインになります。
まずは今回の目玉。「Blackwell」です。
NVIDIAの佐々木さんに挨拶がてら直々に説明してもらいました。H100とは設計が異なり、真ん中にNV Switchがあって両脇にGPUが配置されています。
これがGPU一枚分。一番下の塊の部分がGPU本体。その上はすべてヒートシンクです。いったいどれだけ放熱するのか……。
これは、3Dスキャンしてマップを作ってくれるロボットのようです。
いままでのAGVのようなのんびりした動きではなく、想像よりずっと機敏で静かに走ります。
デザインもすっきりしてていいですね。
その他、データセンター、デジタルツイン、800万円クラスのタワー型PC、Jetson AGX Orinなどの展示を見て回りました。
セッションに参加していると隙間が10分ずつほどしかないので、なかなか全部のブースを聴いて回るのは難しいのですが、その気になればなんとか回れるくらいの規模なのでちょうどよい感じです。もう少し人が少ないといいのですが、それだけ注目度が高いということなので致し方ないですね。
5. まとめ
のんびり気軽に参加できるオンラインもいいですが、やはりリアルイベントは刺激があり、久しぶりにお会いできる方々ともお話できて楽しいですね。
"ロボット+AI"について、
日本ではASIMOやテムザックなど2000年代には多くのロボットが発表され盛り上がっていましたが、最近では「懐かしのロボット」のように紹介されるだけになっていて寂しい限りです。
ボストン・ダイナミクスのSPOTはすでに工事現場などにも投入されていますし、テスラのOptimusもあと数年したら一般家庭でも買えるようになるのではと思わせるような出来になってきています。
子供の頃からロボットに慣れ親しんだ経験や、今までのロボット開発の知見を集約し、ものづくりの匠の技とAI開発能力を投入した「ザ・日本のロボット」作りを再び!
もう一点、開催規模の違いはあるもののGTCでは企業展示とは別に、「ポスター展示」というコーナーがかなり大きく取られています。学生やこれから起業する人たちが、ビジネスや技術のアイデアをポスター一枚で展示しその場でプレゼンテーションを行います。これがとても面白いので、今後日本でもそのようなコーナーができるとより興味深い体験ができそうです。
近い将来には、ロボットとも会話したり触れ合えるような展示も見られるようになるといいな。
それでは、3月にサンノゼでお会い……できたらいいですね。(笑)
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