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これで合格!バイオインフォマティクス技術者認定試験

2024/10/20に公開

最近すっかりゲノム好きになった何でも屋の大谷です。
AI業界に身を置いていると、自然と脳科学に興味が湧いてきて、脳科学について色々な本を読んでいると、細胞やホルモンの働きなど知識がないと、どうしても理解が浅くなってしまいます。そこで、2年前に一念発起で、バイオインフォマティクス技術者認定試験を受け、何とか合格することができました。私自身、大学受験も物理と化学を選択し、生物の知識はほぼゼロ、セントラルドグマさえも知らない状態から始めて、合格までの勉強方法を整理しました。

バイオインフォマティクス技術者認定試験とは

ここ数年ゲノムやタンパク質に関するデータを活用できるようになってきており、それを情報科学で解析していくことの重要性が高まっています。ゲノムも4つの塩基ATGCの連続ですし、タンパク質も20種類のアミノ酸の連続です。そう考えると情報科学と親和性が高いように感じます。生命科学と情報科学を融合したのがバイオインフォマティクスです。

少し前の新型コロナでのmRNAワクチン、これもゲノム研究から得られたものですし、今Hotな話題としては、Google Deepmind社のデミス・ハサビス氏たちがタンパク質の構造を予測するAlphaFoldで今年のノーベル化学賞を受賞しました。情報科学、AIを利活用することで、急激にこの業界も進化が加速していくことが予想されます。

バイオインフォマティクス技術者認定試験とは

日本バイオインフォマティクス学会(JSBi)による生命科学と情報科学の両方の知識を身につけた技術者・研究者を育成するための技術者認定試験です(公式サイトはこちら)。情報科学が新しい分野であるため、これまでの生命科学に精通した人には情報科学の知識が欠けていますし、その逆もしかり。両方持った人を育てていこうというのが目的で、そのための認定試験になります。
試験自体は、私が受験したときは年末の1回だけでしたが、2023年度以降は年2回受験ができるようになっています。試験の概要は以下のような感じです。
・CBT方式(全問選択問題)
・試験時間120分
・出題数60問
試験分野:生命科学、情報科学、配列、構造、遺伝進化、オーミクスの6分野
・合格基準:毎年異なるが、だいたい60%(私が受験する前の年の合格基準点は60.8点)

勉強方法

情報科学の方は仕事柄、ある程度の知識はあるものの、生命科学の方はほぼゼロなので、以下のステップで勉強をしました。12月に試験でしたが、1-4までを9月に終わらせ、10,11月で2-4をもう一回やるという感じです。元々基礎知識がある人はここまで時間は必要ないかと思いますが、私はゼロスタートだったので、じっくり時間をかけました。
 1. 基礎知識となる読みやすい一般書をひたすら読む
 2. 学会公認の「バイオインフォマティクス入門」を読む
 3. 専門知識について、Webや詳しい本で理解を深める
 4. 過去問をひたすら解く
 5. 2~4をもう一度やる

1. 基礎知識となる一般書を読む

知識がある人はいきなり2から進めればいいですが、私のような生命科学の知識がゼロで2を読むと間違いなく挫折します。「バイオインフォマティクス入門」は2ページずつで一つのテーマを取り上げて説明してますが、そのテーマに関するダイジェストのようなものなので、基礎知識がないと初学者には理解が難しいです。私の場合は生命科学の知識がゼロだったのですが、逆に情報科学の知識がない人が2から情報科学を理解しようとすると理解は難しいのでないかと思います。私は知識ゼロを補うために、読みやすい一般書で基礎の基礎を理解していきました。読んだ本は以下のようなものです。

  • 学んでみると生命科学は面白い
    • 生命科学の基礎知識が集約されていて、しかもわかりやすく説明されているので、お勧めです。概要として一通り理解するのに最適です。
  • ヤミツキ細胞生物学
    • この本は細胞を中心に基本的なところからわかりやすく説明してくれてますが、DNAなどのことも説明もあり、上の本と合わせて読むと生命科学が理解しやすくなります。
  • トコトンやさしいタンパク質
    • タンパク質の構造や働きだけでなく、調べ方など、タンパク質について幅広く網羅してくれてます。
  • 新しいゲノムの教科書 DNAから探る最新・生命科学入門
    • この本は試験に合格した後に出版したので、私の試験対策としては使用してませんが、この本を最初に読んでいればもっと理解が早まったと思います。バイオインフォマティクスで扱う分野の詳しいところを読みやすく説明してくれてます。お勧めです!

2. 学会公認の「バイオインフォマティクス入門」を読む

基礎知識をつけた後で、ようやく公認の入門本です。正直なところ、入門と言いながら、結構読みづらいです。最初は挫けそうになりますが、わからなくても、牛歩でも構いませんし、難しいところは飛ばして、まずは最後まで読んでみることをお勧めします。なぜ最後まで読むかというと、何が必要で必要でないかを把握しておくためです。Webで調べたりすると、色々な情報源がありますが、試験以上の内容もあったりするので、どこまで理解する必要があるかを理解しておくためです。テーマごとに関連する過去問が1問説明付きであるので、問題を通じて本文の内容をもう一度読み、少しずつ理解していきます。(焦らなくていいです)

3. 専門知識について、Webや詳しい本で理解を深める

入門書のダイジェスト的な説明だと理解はできないので、YoutubeやWebサイトなどで知識を深め、理解したことを入門書に書いていきます。私が活用したのは以下のサイトです。

  • バイオインフォマティクス推進センサーのゲノムリテラシー講座

    • 技術者認定試験の試験分野に沿った説明だけでなく、過去問を使っての説明もあるので、入門書のサポート用としては最適です。
  • 計算生命科学研究センターの遠隔講義

    • これは私は合格してから講義を受けたのですが、試験勉強では使用してませんが、過去動画が公開されているので、自分の理解の浅い分野とかをこの動画で学ぶことができます。試験以外の知識も講義の中にはあるので、必要なとこだけピックアップして学ぶといいと思います。

あと、私自身NGSやサザンブロッティングなどの測定方法などは文章で理解したつもりでいても実際に動いているのをみないとイメージがつかないところがあったので、販売しているメーカのサイトや動画を見たりしてイメージを持てるようにしました。

4. 過去問をひたすら解く

1-3までで理解を深めたら、過去問をひたすら解いて理解を深めます。2007年からの過去問と解説が公開されてます。1回目は時間は気にせずに問題を解いて、解説を読み、理解を深めることに集中しました。理解が足りないところは、入門書に書いていきます。私は1回目は大体6割ぐらいの点でした。
ここで注意する点は2つあります。1つ目は、一番最後の本番直前模擬試験用のために一つは手をつけずに最後まで取っておくことです。私の場合は2019年度のものは最後まで手をつけませんでした。もう1つは問題の傾向がCBTに移行してから変わっているので、過去問はあくまで理解を深めるのに使うという点です。以前は120分で80問だったのですが、今は60問になっていて、1つ1つの問題が長文になり、難しくなってます。しかも、試験内容が変更になった後の過去問はダイジェストでしか公開されてません。昔の過去問ほどシンプルな問題はなくなってきているので、ここはあくまで入門書をしっかり理解するために使うと割り切っていいと思います。

5. 2~4を繰り返す

入門書をもう一度読み込み、さらに理解を深めます。私の場合は自分でルーズリーフに各テーマごとに要約して書き出していきました。1回目と過去問でまだ理解できてないところは残っているので、そこはもう一度調べて入門書に書き込むことをしてます。
 過去問の2回目は今度は試験と同じ時間内で解き、決められた時間で解けるかを確認します。2回目は7~8割ぐらいは点が取れるようになりました。そして最後の最後に取り置きした2019年のもので、本番数日前に模擬試験として解くようにしました。

試験前日と試験本番

試験前日はひたすら暗記物に注力します。20種類のアミノ酸の記号と特徴(親水性や疎水性など)、データベースの名称、タンパク質の2次元構造の種類、実験方法の用語の確認、情報科学だと各ソート方法の名称など、なかなか覚えられずにすぐ忘れてしまうところを前日夜から暗記に集中です。(前もってコツコツ覚えた方がいいのかと思いますが、私の場合はどうしてもすぐ忘れてしまうので、とにかく直前に詰め込むようにしました)

試験はCBT試験ですが、マイナーな試験なので、同じ試験を受けている人は会場ではいない感じでした。120分で60問なので、1問2分ですが、試験の難易度は過去問よりも上がってます。問題も長くなっているので、単に暗記した内容をそのまま答えられる問題は減っていて、問題文を理解して、知識を応用するような問題が増えています。ちょっとでもわからないところはチェックマークをつけて、先に進めていきます。60問を解き終わった時の残り時間が5分ほどで、見直しが5分しかなく、意外と時間が足りない印象でした。

試験が終わると、その場で採点結果が発表され、結果レポートを受け取ります。各分野ごとの点数も出るので、どこが点が取れたか取れなかったかがわかります。私の結果は70%でした。後で結果通知が来ましたが、合格Bということで合格者の10-30%という結果でした。

試験を終えて

合格すると賞状とステッカーが送られてきます。また、JSBi学会会員に登録できて、メーリングリストで各イベントの案内が届くようになります。Slackなどのコミュニティーがあるわけではないので、そこからの広がりは今のところないのですが、個人的には関心の深い分野なので、仕事に結びつけられるように、実際に手を動かしながら知識をもっと深めていきたいと思ってます。
これから試験を受ける方に参考になったかわかりませんが、試験頑張ってください!

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