バックオフィス業務とAIおよび機械学習の活用
こんにちは。connectome.design株式会社管理部マネージャの根岸です。会社では人事・労務、経理、総務とバックオフィス業務を幅広く担当しております。
日本ディープラーニング協会認定のG検定は取得しているものの、私自身はプログラマーでもエンジニアでもありません。しかし、バックオフィス業務にもAIや機械学習による変化の波は確実に押し寄せてきています。私の記事では非エンジニアの立場からAIの活用をテーマにお話をできればと考えております
データ入力業務
人工知能と機械学習は、従来のバックオフィス・プロセスを変革するためにますます活用されるようになっています。うまく活用することができれば、業務を合理化し、コストを削減し、効率を向上させることにつながります。
ここでデータ入力の例を考えてみましょう。多くのビジネスにおいて必要かつ時間のかかるプロセスです。同時に、ヒューマンエラーの影響を受けやすく、コストのかかるミスにつながります。請求を二重に処理してしまったり、支払先や金額が違ってしまったケースを考えると容易にご理解いただけることかと存じます。
ここで活用できるのが機械学習です。ソフトウェアに過去の入力されたデータを学習させることで、将来の入力の精度を向上させることにより、データ入力を自動化するために使用することができます。
文書をスキャンしてデジタルテキストに変換するために使用される光学式文字認識(OCR)技術と組み合わせることで、入力の手間を大幅に削減することも可能となります。
例えば、弊社も導入しているMoney Forward経理では、領収書をスマホで読み取るだけで支払先名、金額、日付等を経費処理に必要な情報はほぼほぼ自動で読み取らせることも可能です。さすがに現段階では手書きの領収書を正確に読み取ることはできなかったり、電話番号を金額と誤認識したりといったことも起こるので、完全に自動読み取りに頼り切ることはできないですが、1枚1枚手入力するよりははるかに時間も手間も少なく済んでいます(下記リンク参照)。
請求書処理プロセス
請求書の処理は、多くの企業にとって時間のかかる作業であると同時に、支払いの重複やデータの不備などのエラーが発生しやすい分野でもあります。しかし、機械学習を活用すれば、請求書からデータを抽出し、発注書や契約書と照合することで、請求書の処理を自動化することも可能となります。これにより、請求書処理に必要な時間を大幅に短縮し、スタッフをより価値の高い業務に集中させることが可能となります。
全ての企業の全取引を自動化するというところまで到達するのは難しい点もあるかと思いますが、支払承認の要件に取締役会の承認が必要な場合等を除けばルーティンワークのかなりの部分は自動化することが可能となっていくでしょう。
不正検知
機械学習によって普段の業務のパターンを認識させることで、特に有効活用が図られる分野が不正検知です。不正行為は、多くの企業、特に金融分野の企業にとって大きな懸念事項ですが、機械学習により、企業はより正確かつ迅速に不正行為を検知することが可能となります。
AIやMLアルゴリズムは、不正検知チームが人間には検知できないパターンを特定することを可能にし、不正行為を阻止するための貴重なツールとなりえます。機械学習アルゴリズムは大量のデータを分析し、異常な取引、口座の乗っ取り、不審な行動など、不正行為を示すパターンを特定することができます。
通常の企業は全ての取引をリアルタイムに監視するために、不正を検知する専門の人員を常時配置してはいないと思います。監査の際に1年に1回まとめてサンプリングした中をチェックするだけになってしまっている企業も珍しくはないでしょう。しかし、機械学習を活用すれば、全ての取引をリアルタイムに監視し、疑わしいパターンをただちに発見することも可能となるのです。
活用への課題
AIおよび機械学習の活用はますます広がっていくと考えられますが、活用への課題がないわけではありません。例えば、法務チェックにAIを活用するというサービスも実際にいくつかリリースされていますが、AIによる法務チェックを導入している企業はまだ極少数にとどまっているのが現状かと思います。
AIによるチェックだけで本当にリーガルリスクに対処が可能なのかといった精度に関するものはもちろん、ビジネスマターに関わる部分を取引先との力関係まで考慮してリーガルチェックに生かすのはAIには難しいのが現状です。例えば、訴訟が実際に起こってしまった場合の管轄裁判所につき取引先が自社からは遠方の場所を指定してきた場合、東京地方裁判所を合意管轄にするという希望を通すのは難しいでしょう。また秘密保持契約書の有効期間を契約後に何年間有効にするかといったものは全ての取引先に一律に自社の基準を通せない場合もあるかと思います。
ですので完全にAIに丸投げするのではなく、必要な場面はまだまだ人間の目によるチェックの併用が必要という業務が多いのが実情でしょう。あくまでAIは人間の補完と考え、有能なアシスタントと捉えて導入コストに見合ったシステム・サービスを徐々に取り入れて、活用するサイドの人間も徐々に慣れていく必要があるかと思います。
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