ストーリーポイントとは何なのか
ストーリーポイントとは何なのか
ソフトウェア開発において、タスクの規模や複雑さを見積もることは非常に重要です。その見積もり方法として、多くのチームで使われているのが「ストーリーポイント」です。本記事では、ストーリーポイントの基礎から、その活用方法までを解説します。
そもそもユーザーストーリーとは
ユーザーストーリーは、ソフトウェアが提供する価値そのものを表します。これは、タスクやエピックのゴールとして設定されるものであり、エンジニアだけでなく、他のチームメンバーも達成状況を確認できるものです。
具体例としては、「ユーザーは商品一覧を見ることができる」というものが挙げられます。ユーザーストーリーは、ソフトウェアがユーザーにどのような価値を提供するかを示し、ストーリーポイントはその価値を提供するための難易度を表す相対指標です。
ストーリーポイントは、RPGで倒せる敵キャラのLv
ストーリーポイントをRPGの「敵キャラのレベル」として捉えると、以下のように考えることができます。
RPG | スクラム開発 | 補足 |
---|---|---|
敵キャラのレベル | ストーリーポイント | チーム全体で同じ基準で評価する |
何匹倒せるか | タスク完了までの時間 | 1スプリントで完了できるタスク数(ベロシティ) |
自分のレベル | 能力・知識量 | チームメンバーのスキルにより完了時間が変わる |
ストーリーポイントは、タスクに対する難易度を示します。これは敵キャラのレベルのように、プレイヤー(開発者)が誰であっても変わるものではありません。ただし、誰が担当するかによって、実際の所要時間は異なる可能性があります。
※「レベル」という表現よりも「難易度」の方が適切かもしれませんが、ここではわかりやすさのために敢えてレベルと表現しています。
ストーリーポイントは、作業量 × 複雑さ × 不確実性
ストーリーポイントを見積もる際には、以下の3つの要素を考慮します。
- 作業量:タスクを完了するために必要な作業の量。
- 複雑さ:タスクがどれだけ複雑で、多くのステークホルダーに影響を与えるか。
- 不確実性:予測できない問題がどれだけ発生する可能性があるか。
作業量
- タスクのスコープ(作業範囲の広さ)
- 作業の対象(再現や検証の難易度)
複雑さ
- 影響範囲の広さ
- 普段触らないプロダクトや複数リポジトリに跨るタスク
- データの一時的な状態の管理や、UIの複雑さ
不確実性
- 未知の要素(ライブラリのバージョン制約や他の技術的制約)
- 見落としを減らすためのリファインメントとタスクの細分化
ストーリーポイントは、会話のためのツール
ストーリーポイントの本質的な役割は、チーム内での会話を促進するためのツールであることです。「正確な時間見積もりはそもそも不可能」という前提に立って、チーム全体で最適な価値提供を実現するためには、適切なコミュニケーションが不可欠です。
そのため、ストーリーポイントを過度に精緻化することに重きを置くのではなく、ストーリーポイントを通じてビジネス目標に焦点を当てた会話を促進することが重要です。これにより、チーム全体で共通の理解を持ち、柔軟かつ効率的な開発プロセスを築くことができます。
ストーリーポイントが無いとどうなる?
ストーリーポイントが無い場合、開発チームは工数(時間)でタスクを見積もることになります。しかし、これは多くの問題を引き起こします。
- タスクの所要時間は、担当者によって異なるため、見積もりが属人化しやすい。
- 正確な時間見積もりを行うためには、見積もりを行った本人がその課題を担当する必要がある。
→ 時間見積もりは属人化を招く原因となり、正確な時間見積もりはそもそも不可能です。
「扱いやすさ」と「ある程度の正確さ」のバランスを取るために、チーム主義を重視したスクラムでは、全体の速度(ベロシティ)に注目することが重要です。
まとめ
ストーリーポイントは、スクラムチームがタスクの難易度や規模を相対的に評価し、プロジェクト全体を効率的に管理するための重要なツールです。これを効果的に活用することで、チーム全体の透明性が向上し、タスク管理が円滑に進みます。
また、ストーリーポイントはチーム内でのコミュニケーションを深め、より良い意思決定を行うための会話のきっかけとなります。これにより、チームはビジネス価値を最大化するために一致団結して取り組むことができるようになります。
スクラムを初めて取り入れるチームや、ストーリーポイントの導入に悩んでいる場合は、まずは小さなタスクから始めて、チーム内で基準を整えることが成功の鍵となります。
Discussion