アーキテクチャカンファレンス2024の参加記録
先日アーキテクチャConference 2024 に現地参加してきてたので、感想を書いていきたいと思います。
カンファレンスでは、エンジニアリングを取り巻く環境が遷移する中で、各企業がどのような対応で技術負債を解消したかという内容を説明する講座が多く、ソフトウェア開発がメインな僕にとっては、より組織的な観点も含めて全体像の見直しからアプローチするといったものが多くたくさんの学びを得ることができました。
カンファレンスリンク:https://architecture-con.findy-tools.io/2024/top
下記に当日参加したセクションの中で印象的だった講座の一部感想を書いていきます。
『Modern Trade-off Analysis for Distributed Architectures and Future Software Architecture』分散アーキテクチャにおける現代のトレードオフ分析と今後のソフトウェアアーキテクチャの展望
speakerdeck: https://speakerdeck.com/findyinc/modern-trade-off-analysis
概要
プロダクトのアーキテクチャというのは、コロコロ変えることができず、その選定には戦略的決定が必要という内容でした。
内容
- 各アーキテクチャにはトレードオフがあり、一度適用すると方向転換することが難しい特性があり、アジャイル開発のようにサクッとアーキテクチャを変えようというのが難しいこと
- アーキテクチャの選定のためには、プロダクトミッションを軸として、ミッション実現するためのクリティカルな機能に重きを置いた上で、各アーキテクチャが強みとする項目と照らし合わせた選定が必要
感想
流行のアーキテクチャだから選定するというのではなく、各アーキテクチャごとの特性を理解した上でトレードオフを考え、それがミッション実現にどの程度役に立ってくれるのかを考えた上で、アーキテクチャを選定する必要があるんだと思いました。
アーキテクトの誕生とこれから ー スタートアップ7年の成長と痛み
speakerdeck: https://speakerdeck.com/atamaplus/akitekutodan-sheng-tokorekara-sutatoatupu-7nian-nocheng-chang-totong-mi
概要
現地の塾に向けた教材コンテンツアプリを提供する中、コロナを経てオンライン塾へも教材アプリ導入が高まった中で、そのニーズに応えるためにプロダクトアーキテクチャをどう見直したかという内容と、小規模の企業におけるタブレット・WEB版の両方に向けた学習コンテンツを提供するために、どのような技術選定をしたかという内容でした。
内容
- 小規模の企業のため、少ない人数でどのようにタブレット・WEB端末へのコンテンツ配信をすればよいかということで、ハイブリットアプリケーション開発を可能にするサービスを開発で選定したということ
- 現地の塾向けに作成したアプリを、オンライン塾向けにも新たにリリースする際のアーキテクチャ見直しに関して、使いまわせるロジックの切り出しや、両方のアプリで使える学習基盤の切り出しをすることで対応
- 事業の多角化にともなって事業構成と開発組織の構成、ソフトウェアの構成とコミュニケーションの構成をどのように見直したか
感想
ハイブリット開発の手法や需要増加に伴うアプリケーションのロジック切り出しやなどは、開発エンジニアである僕にはイメージがつきやすかったですが、事業の多角化にともなって「事業・開発組織、コミュニケーション、ソフトウェア」の依存構造の全体的な見直しに関してはコンウェイ・逆コンウェイの法則をつかった説明がされていて、それぞれの依存関係から、あるべき構成とは何なのかを考える構成になんていたのが勉強になりました。
宇宙機の監視アーキテクチャの進化と小型月着陸実証機SLIMへの適用
スライド無し
概要
JAXAが月の狙った場所へのピンポイント着陸や、着陸に必要な装置の軽量化などのミッションを掲げて小型機のSLIMを打ち上げるなかで、その小型機の管制システムに関するリアーキテクトの話です。
内容
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管制システムのレガシーな点に着目して、モダンWeb技術を使って小型機の状況確認で必要な数値などの情報を見やすい構成で作成したお話。
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作成した管制システムの反響について、実ミッションで運用した際に管制システムの画面をyoutubeLive上で配信することで、視聴者もJAXA内の管制メンバーと同じ画面を見ながらミッションの行方を見守ったという内容。配信動画はこれかもしれない。
感想
ミッションクリティカルでレガシーな管制システムに、モダンWeb技術を使ったシステムを導入するというので最初は風当たりが強かったということで、その構図が頭をよぎりましたw
複雑な操作が必要なWebアプリケーションに比べると、小型機の諸々を表示するという管制面が強く、複座な操作は必要としないためシステム自体は比較的シンプルな構成になったようです。
当初風当たりが強かった新システムの作成は後に反響があり、社内採用が広がっていったとのことです。ソフトウェアの技術がミッションクリティカルでレガシーなシステムに活用されるというインパクトな事例を見ることができて楽しかったです。
後で見たんですが、SLIMプロジェクトのサイトを見てみたら全体的にポップなデザインだったので、URLなどを思わず2度見してしまいました..w
複雑なCI/CDから脱却したアーキテクチャ:NTTグループの内製プラットフォーム事例を通して
speakerdeck: https://speakerdeck.com/nttcom/cd-insights-from-ntt-groups-in-house-platform-case-study
概要
クラウド主流になってきた今、デプロイ容易性の面で抱えていた課題解決に向けたお話です。
内容
- デプロイフローにおいて、アプリ開発担当とインフラ担当の間には境界があったため複雑なCI/CDになっていたが、お互いが協力することで改善
- 検証環境でCI/CDが通らないと商用環境にデプロイできなくする。デプロイ容易性を実現するためには泥臭い協調が必要だということ
感想
NTTグループという大規模規模なシステムにおいて、組織上アプリ担当とインフラ担当の間に溝があるという構図はありがちだと思うんですが、溝を解消しないままCI/CDを組んでいると独自のスクリプトが増えてデプロイ容易性で響いてくるなと実感しました。解消に向けたお互いの泥臭い協力・クラウドノウハウの展開をすることで改善できたということだったので、アプリ開発者でもデプロイまでを見据えた視野をもって協調意識を持っておく必要があるなと思いました。
マルチプロダクト戦略におけるデータ分析プロダクトのアーキテクチャ
speakerdeck: https://speakerdeck.com/hacobu/deng-tan-zi-liao-san-mu-tuo-shi
概要
物流事業というお互いの拠点間でレガシーなやり取りが発生しがちな事業に向けて、どのような戦略で課題解決したかという大規模なお話でした。
内容
- ビックデータを活用した物流事業のマルチプロダクトでの課題と、データ分析を活用した仕組みづくりのお話。物流事業では各物流構成でのやり取りがアナログなのでどのように全体最適を図っていくかという課題解決
感想
大規模なデータ分析のアーキテクチャを詳細に資料公開されていたので、データ分析ってどのように活用されてるんだろうと関心があったため貴重な経験になりました。
イオンCTOが語る イオングループ全体を支えるクリティカルシステム 解体新書
speakerdeck: https://speakerdeck.com/aeonpeople/findy-architecture-conf-2024
概要
イオングループ全体の基盤システムにおけるアーキテクチャや障害改善に向けたリアーキテクチャのお話
内容
- 複数プロダクトを展開するイオングループ全体を支えるクリティカルシステムのアーキテクチャ
- iAEONという複数イオンのトータルアプリで、過去発生した会員コードのエラーというクリティカルな障害に対してどのような取り組みをしたか
- システムを支える仕組みに関して。NewRelicで構築したダッシュボードでのロギングのお話
- 実行組織の改善
感想
イオンのトータルアプリの会員コードがレジでエラーになるという障害に対する改善に向けた取り組みが説明されていて、統合してる関連サービスにエラーがある場合は非表示にしてバーコード表示を可能にするという説明がされていました。信頼性向上にむけた改善でストアレビューの評価が向上したということも話されていて、ユーザにとってクリティカルな機能を担保することの重要性を学びました。
カンファレンス参加した感想
アーキテクチャカンファレンスに参加したことで、他社のアーキテクチャがどのようなミッションを抱えて遷移していったかの事例を聞くことができて勉強になりました。
アーキテクチャに関する他社事例を把握しておくことで、所属する事業のアーキテクチャを俯瞰的に考える機会も増やせると思いますし、こんな事例は聞いたことがあるよとナレッジ共有することもできると思います。
あと失敗談なんですが、ランチの弁当が会場で提供されるって思ってなかったので、講演の近くのコンビニで買って食べちゃって、あとから提供されることを知りましたw結局弁当も食べたんですがかなり苦しかったので確認した方が良いですね。
会場自体は思ったよりも狭かったので各ブースに立ち寄る人達、各会場に移動する人達とごっちゃになってて密でカオスでした。
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