コードレビューはなぜ必要なのか?今さら聞けない基本と背景
こんなレビュー、やってませんか?
コードレビューは、開発プロセスにおいて重要なプロセスです。ソースコードが一定の品質に保たれていることで、最終成果物の品質向上はもちろん、チームのナレッジ共有、メンテナンス性の向上など、様々なメリットがあります。しかし、実際の現場では「Approveだけ押す」「時間がかかる割に、成果が見えない」「レビューとその反応が過熱してチームの状態が悪化した」などの声も聞かれます。
こうした課題は、コードレビューの目的や役割を理解していないことに起因します。レビューは単なる品質チェックではなく、チーム全体の開発力を向上させるための重要な仕組みです。チームメンバー全員がそれを理解し、活用することで、より良い開発環境を構築できるでしょう。
コードレビューの3つの役割
では、コードレビューの役割とは何でしょうか?開発チームによって多少の違いはありますが、一般的には以下の3つの役割が挙げられます。
- バグ検出(技術的品質の担保)
- 教育/ナレッジ共有
- チームの信頼構築(心理的安全性・文化)
- 開発の継続性担保
バグ検出(技術的品質の担保)
コードレビューの最も基本的な役割は、バグの検出です。開発者は自分の書いたコードに対して全幅の信頼を置きます。自分で生み出したものなので、それは当然と言えるでしょう。しかし、だからこそ問題があるのです。自分のコードに対して盲目的になってしまうと、ほんの些細なミスや見落としを見逃してしまうのです。よくあるのはタイポです。
よくある経験として、コードがどうしても動かない状態で、隣にいた同僚に助けを求めたらすぐに解決したということがあります。これは、開発者が自分のコードに対して過信し、細部を見落としてしまうためです。コードレビューは、このようなミスを早期に発見し、品質を担保するための重要なプロセスです。
教育/ナレッジ共有
コードレビューの多くは、ジュニアのプログラマーに対してシニアレベルの開発者が行います。これはレビューが単なる品質チェックではなく、教育の場でもあることを意味します。レビューを通じて、ジュニア開発者はコードの書き方や設計思想、ベストプラクティスを学べるのです。
また、レビューはチーム内のナレッジ共有の場でもあります。特定の技術やライブラリに関する知識を持つメンバーが、その知識を他のメンバーと共有することで、チーム全体のスキル向上につなげます。こうしたスキルトランスファーを通じて、チーム全体の技術力を向上させ、プロジェクトの成功へとつなげるのです。
チームの信頼構築(心理的安全性・文化)
コードレビューは、単なる技術的なプロセスではなく、チームの文化や信頼関係を築くための重要な要素でもあります。レビューを通じて、メンバー同士が互いのコードに対してフィードバックをし、オープンなコミュニケーションを行います。こうしたコミュニケーションは、チーム内の心理的安全性を高め、メンバーが自分の意見を自由に表現できる環境を作ります。
開発継続性の担保
ここまでで述べているコードレビューの役割をまとめると、それは「開発継続性の担保」に要約されます。チームで開発している以上、複数のメンバーが同じシステムに手を加えます。自分だけが知見を持っていれば良いわけではありません。チーム全体でコードの品質を保ち、メンバー全員が同じレベルの知識とスキルを持つことが、プロジェクトの継続的な機能開発を可能にし、最終的な成果物の品質向上につながるのです。
バグ検出だけではない「組織の武器」としてのレビュー
では、実際コードレビューがバグ検出にどれだけ役立っているかと言うと、実はそうでもありません。なぜなら、基本的なバグはテストで検出できるからです。もちろん、タイポのような簡易的な不具合は見つけられますし、潜在的な不具合(ロジック上の問題)は見つかります。とはいえコードレビューを通したことをもって、そのコードが不具合を含んでいないとはいえません。むしろレビューに期待するのは、バグ検出ではない部分にあります。
それが、組織の武器としてのコードレビューです。
- 教育の内製化:「口に出す設計思想」
- 新人や中途へのオンボーディング
- ドキュメント代わりとしての履歴と議論
教育の内製化:「口に出す設計思想」
コードレビューの場では、開発したプログラマー自身が「なぜこのように実装したのか」「この設計の意図は何か」といったことを説明しなければなりません。言われたからやっただけ、などといった日には、シニアエンジニアから叱責を受けてしまうでしょう。プログラマーは自分の書いたコードに対して説明責任を持たなければいけません。
誰かに説明できると言うことは、自分の中で情報を整理し、再構築できている状態です。プログラマーはそうした経験を通じて、設計思想や開発スタイルを自然と身につけていきます。これが「教育の内製化」です。外部の研修やセミナーに頼るのではなく、チーム内でのレビューを通じて、メンバー全員が同じレベルの知識とスキルを持つことを目指します。
新人や中途へのオンボーディング
新人や中途入社のメンバーにとって、コードレビューはオンボーディングの重要な一環です。新しいメンバーは、既存のコードベースやチームの開発スタイルに慣れる必要があります。レビューの場で先輩メンバーから直接フィードバックを受け、コードの書き方や設計思想を学べるでしょう。
また、レビューを通じてチームの文化や価値観の理解も進みます。どのようなコードが好まれるのか(逆に好まれないのか)、どのような設計が推奨されるのかを学べれば、早期にチームに慣れることができます。本来であればコーディング規約があれば良いのですが、そうしたドキュメントだけですべてを理解するのは難しかったり、すべてを読み込むのは難しいでしょう。レビューを通じて、実際のコードを通して学ぶ方が効果的です。
ドキュメントの補足としての履歴と議論
コードレビューは、ドキュメントの補足資料としても機能します。レビューの履歴は、コードの変更理由や設計の意図を明確に記録するため、将来のメンテナンスや改修に役立ちます。特に、長期間メンテナンスされるプロジェクトでは、過去の議論や決定事項が重要な情報源となります。
そのためにも、コードレビューの内容は記録されるべきです。GitHubやGitLabなどのプラットフォームでは、レビューの履歴が自動的に保存され、いつでも参照できます。アーカイブされていれば、過去の議論や決定を振り返れて、将来の開発に活かせます。対面で行うコードレビューであっても、内容を記録しておくのは大事です。
やらないとどうなるか:属人化と技術負債の温床
コードレビューの大事さを理解してもらうためにも、逆にコードレビューを行わなかった場合どうなるかを考えてみましょう。ぱっと考えただけでも幾つかリスクが思いつきますが、あえて考えることでコードレビューの重要性が浮き彫りになるでしょう。
- 属人化の進行
- 技術負債の蓄積
- ブラックボックス化
属人化の進行
コードレビューを行わない最も大きなリスクがコードの属人化です。誰かが書いたコードが他の人に理解できない、そんな状態はよくあります。担当者が辞めてしまった後、放置されたコードだけを見て的確な修正ができる人はいるでしょうか。コードには書いた人の意図や設計思想が反映されています。それが理解できていないと、誤った修正を行ってしまう可能性があります。
技術負債の蓄積
コードレビューを行わないと、技術負債が蓄積されていきます。もちろん、コードレビューを行っても蓄積されますが…それでもコードレビューされていないと、その進行速度が速くなるのは間違いありません。コードの品質が低下し、将来のメンテナンスや機能追加が困難になります。チームのコーディング規約に沿っていないコーディングスタイルやクラス分け、ファイル分けになっていると、どう手を付ければ良いかも分かりません。
ブラックボックス化
ブラックボックスになったコードはもはや手が付けられません。1つの修正が別な場所の不具合につながる可能性があり、触るのも恐い状態になるでしょう。チーム開発ながら、特定の人しか触れないコードがある状態は生産性の低下を招きます。メンテナンス性の低いコードは、将来の開発において大きな障害となります。バグの発見を困難にし、将来の機能開発を困難にするでしょう。
まとめ:レビューは「品質のため」ではなく「開発を続けるため」の仕組み
コードレビューが必要か不要かで言えば、ほとんどの開発者が必要であると答えるはずです。個人開発で、数ヶ月で不要になるコードであるならまだしも、継続的にメンテナンスされるものであったり、チーム開発であればコードレビューは必須だと考えるのではないでしょうか。
問題は、コードレビューを何のために行うかという目的です。たとえばコードレビューを行えば不具合がなくせると考えるのは誤りです。可読性のロジックやコードを指摘することで、将来的に不具合が発生するのを未然に防げる可能性はありますが、不具合自体の発見はテストに任せるべきです。
では、コードレビューに求められる役割は何でしょうか。端的にいえば「開発を続けるための役割」です。チーム内で知見を共有し、メンテナンス性を向上させ、心理的安全性を高めることで、チーム全体の開発力を向上させることがコードレビューの目的だと言えるでしょう。
おまけ:CodeRabbitの活用
CodeRabbitはAIコードレビューサービスで、GitHubやGitLabと連携してPRに対して自動的にレビューを実行します。開発者はCodeRabbitからの指摘を確認し、修正を行うことで、コードの品質を向上できます。最近リリースされたCodeRabbit for VSCodeを利用することで、ローカルでのレビューも「無料で」可能になりました。
ぜひ、CodeRabbitを活用して、コードレビューの効率化と品質向上を図ってください。
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