ChatGPTにBANされた私が、UnityとVTuberの知見でAI英会話アプリを作った話
はじめに:絶望からのスタート
こんにちは。個人でiOSアプリを開発している者です。
ある日突然、私の人生は絶望の淵に立たされました。以前、私が開発・運営していたAIトークアプリ「お喋りずんだもん」の心臓部であるChatGPTのAPIアカウントが、何の前触れもなくBANされてしまったのです。
ユーザーに愛されていたアプリは完全に機能を停止し、私の手元にはなすすべもなく、ただただ無力感だけが残りました。
しかし、この挫折が、新しい挑戦への扉を開くことになります。 この記事は、そんな絶望的な状況から這い上がり、全く新しいAI英会話アプリ「Relay AI」をリリースするまでの、一個人の開発ストーリーです。
個人開発に興味がある方、英語学習に奮闘している方、そして何より、何かに挫折した経験のある誰かの背中を少しでも押せたら嬉しいです。
なぜAI英会話だったのか? きっかけは任天堂の名作
アカウントがBANされ、落ち込んでいた日々。私はふと、自身の英語学習の原体験を思い出していました。それは、かつて夢中になったNintendo DSの名作ソフト**「えいご漬け」**です。
「えいご漬け」の魅力は、何と言ってもディクテーション(聞き取った英語を書き取るトレーニング)を次から次へと、まるでゲームのようにサクサク解いていけるスピード感と気持ちよさでした。この体験が、私の脳には最高にフィットしていたのです。
ここで、一つのアイデアが閃きました。 「お喋りずんだもん」で培ったAIとの自然な対話技術と、「えいご漬け」の持つ中毒性の高いディクテーション学習。この2つを組み合わせれば、誰もが楽しく続けられる、全く新しい英語学習アプリが作れるのではないか?
こうして、AI英会話アプリ「Relay AI」の企画は産声を上げました。
なぜ僕は"ゲームエンジン"Unityを選んだのか
企画は固まりましたが、次に立ちはだかったのが技術選定の壁です。 通常、このような学習アプリを開発する場合、SwiftUIやKotlin、あるいはFlutterのようなクロスプラットフォームを選ぶのが一般的かもしれません。
しかし、私はあえてゲームエンジンであるUnityを選択しました。
理由は、それが私の強みを最大限に活かせる選択だったからです。私はこれまで、VTuberの配信システムやゲーム開発に携わってきました。その経験から、UnityであればAIと対話するキャラクターを、非常に軽量かつ表現力豊かに実装できる確信がありました。
もちろん、学習アプリの開発にUnityを使うのは最適解ではないかもしれません。しかし、これは誰にも縛られない個人開発。自分の持つノウハウを信じて、チャレンジすることに価値があると考えました。結果的に、アバターの細やかなコントロールなどをスムーズに実装でき、この選択は個人的に大正解でした。
こだわりは「おしゃべりなAI」- 初心者の心を折らない設計
従来のAI英会話アプリの多くは、AIが受け身で、ユーザーが常に話題を提供し続けなければなりませんでした。これは、特に英会話初心者にとっては非常に大きな負担です。
「何を話せばいいか分からない…」
この気まずい沈黙こそが、英語学習者の心を折る最大の敵だと私は考えました。 そこで「Relay AI」では、「お喋りずんだもん」で培ったノウハウを全て注ぎ込み、AI側から積極的に話題を振り、会話をリードしてくれる「おしゃべりなAI」 を目指しました。
舞台裏:低コストで高品質なAIを実現するプロンプト術
「おしゃべりなAI」を実現する上で避けて通れないのが、APIコストの問題です。ユーザーがAI英会話を気兼ねなく楽しめるようにするには、API費用を可能な限り抑える必要がありました。
私が意識したのは、**「短く、かつ効果的なプロンプト」の作成です。 これはトライアンドエラーの連続でしたが、面白いことに、「AIに対して、AIが理解しやすいプロンプトをどう書けばいいか聞く」**という手法が非常に有効でした。AI自身にメタ的な質問を投げかけることで、最適なプロンプトのヒントを得ていったのです。
この地道なチューニングにより、API費用を抑えつつ、ユーザーが満足できる会話品質を担保することに成功しました。
「えいご漬け」へのリスペクトを込めたディクテーション機能
AI英会話と並ぶもう一つの柱が、ディクテーション機能です。 ここは、私の原体験である「えいご漬け」へのリスペクトを惜しみなく注ぎ込みました。
問題をどんどん解いていくスピード感
わからない時に、次の一文字を教えてくれるヒント機能
正直に言うと、気持ちいいと感じる部分はかなり参考にさせて(パクらせて)いただいています。この「サクサク感」こそが、学習継続の鍵だと信じているからです。
シンプルでテンポの良いUIを意識しました。
完成したアプリ「Relay AI」
こうして、数々のこだわりと試行錯誤の末に完成したのが「Relay AI」です。
自立型のAI講師と気軽に英会話
広告なし・完全無料で1万以上のフレーズでディクテーション
ゲーム感覚で続けられる学習進捗管理
iOSの読み上げ機能を活用した、多様なネイティブ音声
挫折から始まったプロジェクトでしたが、今ではApp Storeでリリース出来るところまで来ました。
まとめ:挫折は、新しい物語の始まりだった
ChatGPTアカウントのBANという絶望的な出来事は、間違いなく私の開発者人生における大きな挫折でした。しかし、その経験があったからこそ、自分の原点を見つめ直し、持てる技術を別の形で昇華させるという新しい道筋を見つけることができました。
もしあなたが今、何か壁にぶつかっていたり、失敗して落ち込んでいたりするなら、伝えたいです。 その挫折は、終わりではありません。視点を変えれば、それは新しい物語の始まりになるかもしれません。
この記事が、そんな誰かの小さな一歩に繋がれば、これ以上嬉しいことはありません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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