【ヘルスケア】医療DXと医療DX令和ビジョン2030とは
はじめに
現在の日本は、医療情報の連携・医療情報の有効活用といった点では後進国である。今回学ぶ「医療DX令和ビジョン2030」は、医療情報を有効活用できていない日本を変えるための戦略の1つである。ITスキルを学ぶ身として必要な知識であると考えたため、以下にまとめている。
医療DXとは
医療DXとは、保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること。[1]
医療DXを行い、下記5つを実現を目指す。
①国民の更なる健康増進
②切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
③医療機関等の業務効率化
④システム人材等の有効活用
⑤医療情報の二次利用の環境整備
医療DXを進めている行政機関とは
第1回医療DX推進本部幹事会議事次第より抜粋[2]
第1回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料についてより抜粋[3]
厚生省サイトマップ
ホーム > 政策について > 審議会・研究会等 > 医政局が実施する検討会等 > 「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム
医療DX令和ビジョン2030とは
「医療DX令和ビジョン2030」は、これらの医療DX化、効率化、医療資源の適正な利用といった問題の解決を目的とし、以下の3つの取り組みを行っていくこととなっている。
1.「全国医療情報プラットフォーム」の創設
2.電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)
3.「診療報酬改定DX」
1.全国医療情報プラットフォーム
第4回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料についてより抜粋[4]
第1回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料についてより抜粋[3:1]
マイナポータルとは
マイナポータルとは、政府が運営するオンラインサービス。子育てや介護を
はじめとする行政サービスの検索やオンライン申請ができたり、行政からのお知らせを受取ることができる自分専用サイト。
全国医療情報プラットフォームを構築に向けた今後の展望
・2024年度の秋ごろに健康保険証が廃止される
・2023年度より全国医療情報プラットフォームの基盤構築を行い2025年度から運用開始予定。
・2024年度から順次事業所や医療機関、介護事業間の連携が進むようにシステムの導入およびクラウド化を目指していく。
2.電子カルテ情報の標準化
Webサービスの技術を用いて医療情報を交換する際の国際標準規格であるHL7 FHIRを活用し、厚生労働省が標準コードや交換手順を定めることで電子カルテの情報交換の効率化を図るもの。
【HL7 FHIR(ファイアー)とは】
【HL7 FHIR(ファイアー)[5]とは】
・米国のHL7協会(保健医療情報交換のための標準規格の名称および団体名)が開発したコンピュータ間での医療⽂書情報のデータ連携を標準化するための国際規格のこと。
・Web通信の一般的技術であるRESTを使用して、可読性が高く取り扱いがし易いJSON/XML形式の
データの集合(=リソース)をやり取りする短期間で実装可能な医療情報交換標準規格のこと。
・標準化している医療文書情報の形式は、V2(HL7 Version 2)(テキスト:1987年~)、V3(HL7 Version 3)(XML:1996年~)、CDA(Clinical Document Architecture)(V3の進化版:2005年~)、FHIR(Web通信:2012年~)の4種類あり、現在はFHIRを用いてWeb通信での連携を前提としている。
・英語では、Health Level Seven(7) Fast Healthcare Interoperability Resourcesとなる。
・この標準仕様(規格)があることで、医療機関ごとの取り扱うデータ(氏名や血液データの項目など)の統一化を図っている。
・RESTという世界共通の一般的な通信手順によって、ブラウザ経由で簡単に情報共有が可能となる。
CDA:
【FHIRの4つの原則とは】
-
メッセージング(Messaging):
従来のHL7 V2およびV3メッセージングに相当する、イベント駆動型のデータ交換。 -
ドキュメント(Documents):
CDAに相当する、静的な臨床文書の交換。 -
サービス(Services):
SOA(Service Oriented Architecture)に相当する、リクエストとレスポンスベースのデータ交換。 -
RESTful API:
リソース指向のAPIを使用した、最新のWebベースのデータ交換。通信は(主に)RESTを使う(SNS等にも使われているWebの通信技術)。データの表現はJSONかXMLを使う。
【FHIR Resourcesとは】
・様々な医療情報を「Resource」で表現している。
・リソースは 157 個ある。以下のサイトからリソースの閲覧が可能。
【FHIR Resourcesの成熟度(Maturity Levels)】
0 ドラフト
1 リソース承認、実装済
2 動作試験済
3 品質検証済、試⾏実装検証中
4 トライアルユースレベル
5 5以上の製品で実装検証中
N 標準リソースとして公開中
【Resourcesの分類(仕様カテゴリー)】
- レベル 1︓Foundation(基礎)
仕様作成時の基本フレームワーク - レベル 2︓Implementer support(実装者支援)
実装者が利⽤できるための支援 - レベル 3︓Administration(管理)
患者、医療従事者、組織、機器、物質などを管理、
トレースするための基本規定 - レベル 4︓Clinical(臨床情報)
プロブレム、アレルギー、治療過程(治療計画、紹
介)等の主な臨床情報 - レベル 5︓Clinical Reasoning(臨床支援)
意思決定支援、品質管理支援
【SMART on FHIRとは】
アプリケーションが電子ヘルスレコード(EHR)システムの情報にアクセスできるようにするデータ標準規格のこと。
日本の電子カルテについて
HEMILLIONS(へミリオンズ)とは
・東京大学とソフトバンクの産業協創事業であるBeyond AIが共同して2023年4月7日に設立された会社。
・健康、医療データを利活用しやすいようデータ基盤を社会に提供している。
・今後、FHIRサーバー向けの国産ソフトウエア「FRUCtoS」を医療機関向けに提供し、FHIRに準拠した健康・医療データを提供予定。
FRUCtoSとは
・HL7FHIR APIに準拠したFHIRサーバを開発しリリースするプロジェクト
・誰でも医療情報が容易に活用できる世界の実現を目指している。
3.診療報酬改定DX
医療機関等の各システム間の共通言語となるマスタ及びそれを活用した電子点数表を改善・提供して共通コストを削減を目指し、2026年度に共通算定モジュールを本格的に提供予定となっている。[8]
まとめ
今回学んだ「医療DX令和ビジョン2030」では、1.「全国医療情報プラットフォーム」の創設、2.電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)、3.「診療報酬改定DX」の3本柱で医療DXを推し進めようとしていることがわかった。日本の医療DXに貢献していけるよう研鑽を続ける。
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