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あなたは5年後必要な人材ですか?

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はじめに

はじめまして、hibikiです。株式会社ココナラでプロダクト開発のエンジニアとして働いており、今年で3年目になります。

直近では、開発エディタ「Cursor」の全社導入や「Claude Code」の活用推進といった、AIで開発組織全体の生産性を向上させる取り組みを担当しています。
こうしたAI推進の業務に携わる中で、「AIを中心とした世界で、エンジニアとしての自分の価値、人材としてのポジショニングはどうあるべきか」を深く考えるようになりました。

そんな問題意識を抱えていたタイミングで、すてぃおさんのClaude Code時代のソフトウェアエンジニア生存戦略という記事を拝見し、自分が抱いていた危機感が的確に言語化されていることに、強く共感しました。

皆さんは、自分の仕事、5年後はどうなっていると思いますか?
生成AIが登場するまで、私たちはスキルアップという名の、地続きの未来を歩いていけたはずでした。しかし、その"ゲームのルール"自体が根底から変わりつつあると感じています。

少し、デザイナーの世界を思い出してみてください。
一昔前、デザイナーの価値の一つは 「ペンで紙に真っ直ぐな線を引ける」 といった、職人的な"手"のスキルにありました。しかし、Figmaのような優れたツールが登場したことで、その前提は覆されます。

今や彼らの価値は、そうした「手を動かすスキル」から、ユーザーの課題を解決し、事業の成長を牽引する**「課題解決や企画を担うスキル」**へと完全にシフトしました。
この "職業境界の融合" とも言える地殻変動が、今、私たちエンジニアの世界でも、しかも圧倒的なスピードで起きています。

生成AIの登場で、実装は何倍ものスピードで進むようになりました。
しかしその裏側で、これまで価値の源泉だった「コードを書く」という行為そのものの価値が、相対的に低下していく厳しい現実が進行しています。

なお、本記事は私の経験に基づき、主にアプリケーションエンジニアの視点から論じています。

エンジニアという職種が不要になるとは全く考えていません。むしろ、その需要は今後さらに増していくでしょう。ただし、それは自らのポジションを確立したエンジニアの需要が増えていく、と考えています。
この記事が、ご自身のキャリアを深く見つめ直すきっかけになれば幸いです。

対象読者

  • 生成AIの進化に、漠然としたキャリアへの不安を感じている全てのエンジニア
  • 自身のスキルセットが今後も市場で通用するのか、客観的に見つめ直したい方
  • チームメンバーのスキルシフトや育成方針について悩んでいるテックリードやエンジニアリングマネージャー

第1章:AI時代の「5つの生存戦略」を再確認する

すてぃおさんの記事を読んだあなたは、これからのエンジニアのキャリアの方向性として、大きく5つの類型があることをご存知のはずです。本題に入る前に、その「地図」を簡単におさらいしておきましょう。

  1. AIディレクター型: AIを部下のように扱い、的確な指示で開発をディレクションする。
  2. アーキテクト特化型: AIにはまだ難しい、複雑で大規模なシステムの設計に特化する。
  3. ドメインエキスパート型: 特定領域の深い知識と技術を掛け合わせ、AIを特化ツールとして使いこなす。
  4. AI回避型: AIがまだ及ばない低レイヤーなど、深い専門性でAIを必要としない領域を極める。
  5. ビジネス統合型: 技術的な知見を活かし、事業戦略やプロダクトの意思決定に貢献する。

この地図を眺め、多くの人が「自分はこのあたりかな」と、ぼんやりと自身の進むべき方角を定めたのではないでしょうか。

第2章:そのポジション、本当に「あなたが」選んだものですか?

第1章で5つのキャリアの「地図」を眺め、「自分はこのタイプかな」と自己分析したはずです。

では、改めて問います。

あなたは、その方向性について、「これは私が吟味し、主体的に選んだ道だ」と胸を張って言えますか?

多くのエンジニアが、無意識のうちに 「外部環境バイアス」 に陥っています。
「今この事業部にいるから」「今のプロジェクトで使っている技術がこれだから」——そうした外的要因が、いつの間にか自分のキャリアそのものを定義してしまってはいないでしょうか。

この章では、そうした無意識のバイアスをあぶり出すための、いくつかの問いを投げかけたいと思います。

あなたのキャリアは「主体的選択」か、それとも「受動的な受容」か

もし、あなたが「今のプロジェクトでReactを使っているから、自分の専門はフロントエンドだ」と考えているなら、一度立ち止まってみてください。それは、あなたが能動的に選んだ専門性ですか?それとも、偶然与えられた役割を、そのまま自分のキャリアだと受け入れているだけではありませんか?

あるいは、あなたは「AIディレクター型」を目指すべきだと言われながら、心のどこかで「やはり自分の手でコードを書くのが楽しい」と感じていませんか?その楽しさは、5年後のあなたの市場価値に繋がっていますか?それとも、将来代替されると知りながら、目先の楽しさに安住してしまっているだけではないでしょうか。

これらに共通する問いは、たった一つです。

あなたのキャリアは、未来から逆算した「主体的選択」の結果ですか?
それとも、現状を追認しただけの「受動的な受容」の結果ですか?

もし、この問いに少しでも胸が痛んだなら、あなたは「なんとなく」で自分のポジションを選び、キャリアの主体性を環境に明け渡しているのかもしれません。

しかし、それに気づけた今が、本当のスタートラインです。

第3章:キャリアは十人十色。自分だけのポジションを創り出す

第2章の問いを読んで、少し不安になったり、あるいは反発を覚えたりしたかもしれません。

しかし、その感覚こそが、キャリアの主体性を取り戻すための最も重要な第一歩です。なぜなら、それは「渡された地図」の違和感に気づけた、という証拠だからです。

これまでのキャリアが、誰かが作った地図をなぞる旅だったとしたら、ここからはあなた自身が地図を描く旅の始まりです。

地図に道がなければ、自分で創ればいい

チームや会社に、あなたが理想とするポジションがないかもしれません。しかし、それは悲観することではありません。むしろ、それは誰にも奪われないあなただけのポジションを、自ら創り出すチャンスです。

「そうは言っても、自分だけのユニークなポジションなんて簡単に見つからない」と感じるかもしれません。特に、優秀なエンジニアがひしめくこの業界は、まるで競争の激しいレッドオーシャンのように見えますよね。

ここで、少しビジネスの世界の話をしましょう。
皆さんは「こだわりレモンサワー檸檬堂」をご存知でしょうか。

ご存知の通り、缶チューハイ市場は多数の強力なブランドがひしめき合う、まさにレッドオーシャンです。後発だったコカ・コーラ社は、「同じブランドのレモンサワーを、異なるアルコール度数で展開する」という、ありそうでなかったポジショニングの「穴」を見つけ、歴史的な大ヒット商品となりました。

あれほど競争の激しい市場でさえ、視点を変えれば「まだ誰もいない場所(ポジション)」は存在すると思います。

そして、この話は私たちのキャリアにとって、さらに大きな意味を持ちます。
これまでのエンジニアの価値は、技術力の高さという、ある意味で一方向の尺度で測られがちでした。しかし、AIという強力な武器を誰もが手にしたことで、そのゲームのルールは完全に変わりました。

価値の尺度は、技術力という単一の軸から、ビジネススキルやデザインスキルといった要素も掛け合わせた、立体的なスキルマップへと変化しつつあります。
この変化は、エンジニアのポジショニングという領域が、実は広大なブルーオーシャンになっていることを意味していると感じています。

チームに存在する課題、まだ誰も手をつけていない新しい技術領域。そうした無数の「穴」を見つけ、主体的に手を挙げて役割を担っていくことで、既存の地図にはなかった、あなただけの道を切り拓くことができます。

今、そのポジションがなければ、その「穴」を見つけて、自ら獲りに行けばいいと思います。

ポジションを定義するメリット:「やらないこと」が決まること

では、なぜ自分だけのポジションを定義することが、これほど重要なのでしょうか。

それは、人生という有限な時間の中で、自分の努力をどこに集中投下すべきかが明確になるからです。

言うまでもなく、私たちのキャリアに使える時間は限られており、全ての技術領域で完璧なエキスパートになるのは不可能です。そこで重要になるのが、 「チームで勝つ」 という視点です。

会社という組織において、個人の力だけで成し遂げられることは多くありません。自分が苦手な領域、あるいは戦略的に「やらない」と決めた領域は、それが得意な他のメンバーを信頼し、うまく頼ればいいと思います。個人の完璧を目指すのではなく、チームとしてのアウトプットを最大化することが、結果的に最大の成果に繋がります。

このように「やらないこと」を決め、他人に任せる勇気を持つことで、初めて自分の限られた時間を「やること」に集中投下できます。これが「努力に緩急をつける」ということです。

例えば、あるエンジニアが「AI回避型」を目指さないと決めたとします。その場合、OSやコンパイラといったディープな領域には敢えて深入りせず、その分野が得意な同僚を頼る。その代わり、「複雑なものを複雑なまま扱うための道具(=AI)を、誰よりも使いこなせる人材」という自分のポジションにおいて、チームに貢献することにリソースを集中させることができると考えています。

この戦略的な 「やらないこと」を決める勇気 が、あなたを唯一無二の存在へと押し上げ、同時にチーム全体の力を底上げすることにも繋がると考えています。

「あの人には勝てない」という感情の終わり

そして、この「努力の緩急」が身につくと、キャリアに対する見え方が劇的に変わります。

かつては、すごい先輩や同僚を見て「あの人には勝てないな」と落ち込んでいたかもしれません。しかし、ポジショニング思考が根付くと、その感情は消え去ります。

「確かに、あの人はこの領域ではすごい。そこでは勝てない。でも、自分にはあの人が持っていないこの武器がある。」

このように、健全な意味で他人と比較しなくなり、自分の土俵で戦えるようになります。
この考え方は、「憧れは、超えられない壁ではなく、目指すべき道標の一つである」という捉え方に近いのかもしれません。

第4章:自分だけの「ポジション」を見つけるために

第3章で、ポジションを自ら創り出すためのマインドセットについてお話しました。

では、具体的にどうやってその「穴」や「自分だけの道」を見つけるのか。

フレームワークは人それぞれですし、決まった正解はありません。ここでは、そのヒントとなるであろう、2つのアプローチを紹介します。

1. 外の世界との接点を増やし、インプットを最大化する

まず意識すべきは、経験値を積むという文脈で、とにかく外の世界との接点を作り、インプットを増やすことです。

特に生成AIやビジネス的観点については、世の中のスタートアップがどのような挑戦をしているのか、その中で働く人々がどんな世界を見ているのかを積極的に情報収集する。そして、得た情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分なりに噛み砕き、自分のいる環境にどう応用できるかを常に考えることが重要です。

2. 多様な人との対話で、思考の「点」を繋げる

そして、インプットと同じくらい重要なのが、とにかく色々な人と話すということです。

インプットだけでは、知識は自分の中に溜まる一方です。ここでの対話で特に有効なのは、完成された意見を話すのではなく、あえて 「浅いインプットから生まれた、浅い仮説」をぶつけてみることです。

なぜなら、そこには2つの大きなリターンがあるからです。

一つは、その未熟な視点が、自分にしか見えていないユニークな観点である可能性。

そしてもう一つは、もしその考えが的外れだった場合、なぜダメなのかを、相手の貴重な経験や市場のリアルな視点から、具体的にフィードバックしてもらえることです。これは、一人で何冊も本を読むより、遥かに効率的な学習方法だったと感じています。

まさにこの 「対話」こそが、スティーブ・ジョブズが語った「Connecting the dots(点と点を繋げる)」のプロセスそのものだと感じています。

あなたのこれまでの経験を思い出してください。技術的なスキルだけではありません。過去に熱中した趣味、感銘を受けた本、様々な人との出会い...。それら全てが、あなただけの「点」です。自分の頭の中だけでは、これらの点はバラバラのままです。

しかし、多様な人との対話の中で、自分の考えを言葉にし、相手からの予期せぬ質問に答えることで、それら無関係に見えた「点」が強制的に結びつけられ、星座のように意味のある形を成していくと感じました。 私自身、そうした壁打ちの中で「将来的にはこういうことがやりたいのかもしれない」という輪郭が、少しずつ固まっていきました。

そして何より、AI時代のキャリアポジショニングというテーマは、まだ火蓋が切られたばかり。
人間はプロダクト以上に変数が多く、その組み合わせ(=点の繋がり方)は無限大です。
言い換えれば、あなた自身のユニークなポジショニングを見つける道は、競争の激しいレッドオーシャンではなく、可能性に満ちたブルーオーシャンなのだと思います。

最後に...

ポジショニング探しに万人に共通する明確な答えはありません。
なぜなら、これからの時代、私たち一人ひとりが自分だけの答えを創り出していかなければならないからです。

生成AIの登場で、未来への不安を感じるのは当然です。しかし、そんな時こそ思い出したいのが、フランスの哲学者アランの言葉です。

「悲観は気分に属し、楽観は意志に属する」

不安というどうしようもない「気分」に流されるのではなく、自らの「意志」で未来を楽観し、行動を選ぶ。

この変化の激しい時代において、最も大事なのは、まさにその 「やる」という意志を持って、最初の一歩を踏み出すこと だと感じています。

AIの登場によって個人でもチームでも見える景色は無限大になったと感じています。このワクワクする未来を共に楽しんでいけるといいですね!


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